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百物語の結果

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3部分:第三章


第三章

「じゃあ火を点けて蛙追っ払ってまえ」
「蛙をか」
「そや」
 今度言い出したのは蛙に対してだ。蛙が怖がる火を使うというのだ。
「それで逃げさせい。道が空くで」
「それもあかん」
「全然や」
 これも駄目であった。今度は染吉と権助が止める。
「あかんのかいな」
「蛙おらんとなめくじが暴れるわ」 
 それであった。次はなめくじであった。
「なめくじに喰われるぞ」
「わし等三人皆殺しやぞ」
「これもあかんのかいな」
「あかんな」
「つまりや」
 ここであることがわかった。
「わし等はこのままずっと三匹に囲まれて」
「ここにおるんか!?」
 こういう結論になるのだ。結論に達しても全く嬉しくはなかった。それどころか、である。
「どうしたらええんや」
「出られるんぞ」
 三匹が睨み合う間だ。どうしようもなかった。
「下手に動いたらまずいな」
「というか隙があらへん」
 まされにそれであった。
「出るどころやないで」
「じゃあこのままかいな」
「そうかもな」
「そうかもなって御前」
 幾ら言い合ったところでどうにもならなかった。そんな状況だった。
「このままやったら」
「じゃあどないすんねん」
 権助は真顔で染吉に問う。
「どうしようもないやろ」
「これが百物語かいな」
 三人はここでそれがわかったのだった。
「何ちゅうこっちゃ」
「どないせえっちゅうねん」
「しかし。このままやったらわし等」
「ああ」
 どうなるかはもう言うまでもないことだった。
「飢え死にかいな」
「けど出るに出られんしなあ」
「難儀なことになったわ」
 しかしどうしようもなく結局三すくみの中から出られないのだった。三人がようやく出られたのは三匹が消えた一週間後だった。その時にはまさに飢え死に寸前で長屋の部屋から這って出て来たのであった。まさに惨状だった。
 だがこの話は大阪では自業自得として瞬く間に広まり。おかげで三人は笑いものであった。
「おい、あいつ等や」
「ああ、あれが噂の」
「あほ三人かいな」
 こう言われる始末だ。誰も同情しない。そのかわりに笑いものになる。三人にとっては最悪な状況であった。
 おかげで三人は暫くの間大阪で肩身の狭い思いをすることになった。うどんを食べてもそれは同じで。店屋でも客はおろか店の者にまで言われる始末だった。
「ほんまあんた等あほなことしたもんやで」
「命が助かっただけでもめっけもんやぞ」
 擦れ違う人にそれぞれ言われる。おかげでうどんがまずい。そのまずいうどんを食べながら話すのであった。
「えらいことになったわ」
「ほんまや」
 小さくなってひそひそと話をしている。
「周りが皆言うなあ」
「これ、当分続くで」
「当分かいな」
「多分あれや」
 ふと朝太が言う。
「百日は続くわ」
「百日かいな」
「そや、百物語をやったんやで」
 二人に対して答えて述べる。
「それやったらやっぱり」
「七十十五日やなくて百日かいな」
「その間我慢するしかないやろな」
「そか。それにしても」
 権助のぼやきが出る。
「ほんま、難儀なことになったで」
「百物語の呪いやな。三すくみには巻き込まれるし散々やで」
「その通りや」
 二人は染吉の言葉に困った顔で頷き。最後に三人で言い合う。
「これこそがまさに」
「そやな。百物語の」
「顛末、呪いや」
 こう言い合うのだった。大阪であった話だ。三人は本当に百日の間言われ続けこれもまた百物語の名前の由来になったとも言われているとされているが実際のところはどうかはわからない。


百物語の結果   完


                  2008・5・19
 
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