マネージャーは大変
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8部分:第八章
第八章
「私の家でね。どうかしら」
「房江さんのお家で、ですか」
「それか何処かのお店で」
飲み屋で、というのだ。
「どうかしら」
「そうですね。いいですね」
有子もそれに乗るのだった。まんざらではないのは明らかだ。
「それじゃあそれで」
「時間がないのが困りものだけれど」
房江はここで少し困った笑顔にもなった。
「けれどそれでもね」
「まあ時間を見て」
「しましょう。それじゃあそれでね」
「はい、それで」
こうして五人で集まってパーティーをすることになった。そしてその場所は。
酒場だった。駅前によくあるチェーン店の酒場だ。そこの一席に五人で座ってそれぞれ見合ってジョッキを打ち合わせていた。
「それじゃあ今日は」
「はい」
「乾杯っと」
房江の声に合わせて五人がジョッキを打ち合わせる。そうしてそのうえで飲むのであった。
一杯飲んでから。まずは麗子が言った。
「こうして四人揃うのもね」
「そうそう」
「久し振りよね」
映見と有子が彼女の言葉に応えて言う。
「同じ事務所で同じマネージャーさんなのにね」
「四人揃うのって結構」
「ないのよね」
「本当にそうよね」
祐美も三人の言葉に頷いて応える。
「これが案外」
「二人はあるけれどね」
「そうそう」
今度は映見と有子が言う。
「共演とかね」
「事務所でも会ったり」
「けれど四人揃っては」
「ないわよね」
「滅多にね」
「同じマネージャーさんなのにね」
こう話すのだった。ビールだけでなく肴も楽しんでいる。
まさに典型的な居酒屋であり木のテーブルに白い壁がその雰囲気を醸し出している。そして焼き鳥や冷奴が他の客達のテーブルに見える。彼女達の席にも焼き鳥がふんだんにある。
「だからこうして揃うのってね」
「新鮮よね」
「そうそう」
「それはね」
ここで房江がその四人に対して言ってきた。
「皆忙しいからよ」
「まあ確かに」
「今日も仕事あったし」
「それはね」
四人もその忙しさは認める。他ならぬ自分自身のことであるからよくわかるものである。
「暇ないからね」
「次から次にどんどん入って来るし」
「表のお仕事だけじゃなくて」
ここで四人はお互い笑い合った。当然ながら彼女達自身も自覚しているのである。
「裏のお仕事もね」
「そっちの方ってひっきりなしだからね」
「人間だからね」
こう言い合って笑うのだった。
「私あっちの方の名前幾つも持ってるわよ」
「私もよ」
「私なんか幾つあるか」
「もうわからないわよね」
笑いながら話をしていく。実際彼女達はそちらの名前は幾つも持っているのである。それぞれもう自分自身でもわからない位にである。
「麗子ちゃんのこの前のゲームの名前って」
「ええと、何だったかな」
映見に突っ込まれて首を傾げて苦笑いになる麗子だった。
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