マネージャーは大変
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1部分:第一章
第一章
マネージャーは大変
声優の世界ではマネージャーは複数の声優の業務を掛け持ちする。そうなっている。
それで今高梨房江は忙しかった。それも半端なものではない。
朝早くから真夜中までだ。事務所に声優の仕事先にあちこち動き回っている。身体を休める暇もない。少しふっくらとした顔立ちで目鼻立ちはしっかりした美人だ。黒いロングヘアで胸がかなり目立っている。
「次は麗子ちゃんのところよね」
「はい、そこです」
事務所の女の子がそれに応える。
「そこに来てくれとのことです」
「イベントだったわよね」
房江はそのことを確認した。
「玲子ちゃんが出演しているアニメの」
「はい、佐久間さんのそこです」
まさにそこだというのである。
「そこにすぐに来て欲しいとのことです」
「言われなくても行くわ」
それは言うまでもないというのだった。
「マネージャーが一緒にいないとお話にならないわ」
「ですよね。だから」
「行くわ」
彼女は言い切った。
「今すぐに」
「わかりました。後は」
「後は?」
「篠原映見さんですけれど」
ここでまた別の声優の名前が出て来た。同じ事務所の声優で彼女も房江が担当している声優である。
「あの人のイベントも」
「ああ、そうだったわね」
房江は言われてそのことも思い出したのだった。
「映見ちゃんもイベント今日だったわね」
「そうです。ですから」
「それも行くわ」
房江はそれにも答えた。
「すぐにね」
「ええと、ですけれど麗子さんのイベントは」
「掛け持ちするわ」
そうするというのである。
「だから心配しないで」
「掛け持ちですか」
「そうよ。身体は一つだけれど動くことができるわ」
それでやっていくというのである。
「それじゃあ今すぐにね」
「わかりました」
こうしてであった。彼女はすぐに自分の車を出してまずは麗子のイベントに出た。そこでまずは演じているキャラクターの服装をコスプレで着ている彼女に会った。
「あっ、マネージャー」
普通位の背ですらりとした妙齢の女性である。髪は黒く長い。目が大きく口も大きい。かなりはっきりとした整った顔立ちである。
「来てくれたの」
「マネージャーが来ない筈がないわ」
にこりと笑って彼女に話すのだった。
「そうでしょ?だからね」
「はい、それじゃあ」
「これよね」
言いながら彼女にあるものを差し出してきた。それは。
ケーキである。チョコレートのショートケーキを出してきたのである。
「差し入れよね」
「有り難う、私イベントの前はこれを食べないと」
「駄目だからね、麗子ちゃんは」
「そう思って持って来たのよ。今緊張が止まらないでしょ」
「ええ、とても」
その紅のチャイナドレスに身を包んでの言葉だ。それが彼女が今演じている役の服装なのだ。アニメのキャラとしては普通の服装である。
「何か意識しなくてもね」
「わかってるわ、それはね」
また麗子に述べた。
「麗子ちゃんが緊張しているって聞いたから急いで来たのよ」
「有り難う、いつも」
「御礼はいいわ。じゃあこれ食べてね」
「ええ」
「それでね」
ここまで話してであった。房江は彼女にそのケーキを手渡して。
その場所を後にするのであった。
「じゃあ私はこれでね」
「映見ちゃんのところ?」
麗子の方から尋ねてきた。
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