過ぎ去ったもの
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第三章
ラムセスは眉を顰めさせてだ、こう言った。
「馬に乗ったままか」
「駆けてです」
「しかもそこからです」
「弓矢を放っています」
「あの様なことが出来るとは」
「信じられぬ」
呆気に取られてさえいた、今のラムセスは。
「これは」
「はい、とてもです」
「馬に乗っても落ちずにです」
「しかもそのまま駆けて弓矢を放つ」
「そうしたことが出来るなぞ」
「あの様なことが出来るのか」
まだ信じられないといった顔だった。
「何という者達だ」
「戦車達がです」
「次々に倒されています」
「これではです」
「最早」
「うむ、戦車達は期待出来ない」
アッシリアの馬に乗った兵達に為す術もなくやられていた。敵に近付く前にそうなっていた。それでだった。
ラムセスはあらためてだ、こう言ったのだった。
「歩兵の陣でだ」
「数で、ですね」
「押し潰しますか」
「敵の歩兵達を倒してだ」
そしてというのだ。
「近付いた馬に乗っている者達を弓矢で射るぞ」
「わかりました」
「数では圧倒的ですし」
「例えあの者達が戦車を倒しても」
「それでも」
「勝てる」
まだだった、、ラムセスは勝利を確信していた。それでだった。
今度は方陣を動かしてだった、敵の歩兵達を狙った。数は確かに圧倒的であり方陣の圧力で潰すつもりだった。
しかしだ、その方陣にもだった。
アッシリアの騎兵達は来てだった、そのうえで。
やはり弓矢を馬上から放って来てだ、その弓矢で。
歩兵達も倒していった、エジプト軍が反撃をしようとすると。
すぐに馬で駆けて離れる、そしてだった。
方陣の後ろからも攻撃してきた、数は少ないが方陣を囲んでだ。
遠間から攻撃してくる、反撃にはすぐに退く。
そうした攻撃をしていってだ、方陣の数が減り攻撃により乱れたところで。
今度は剣を手に斬り込んできた、この突進を受けて。
エジプト軍は散々に打ち破られてだ、ここに至ってだった。ラムセスは撤退を指示したが。
退くその時にも散々に攻撃を受けた、馬に乗った兵達は速く歩兵や戦車をここでも弓矢や剣で倒した。そうして。
ラムセスは何とか後方基地にしていた都市まで軍を退けさせてだ、残っている軍勢を見て苦々しい顔で言った。
「三割はな」
「はい、やられています」
「かなりやられました」
「数では圧倒していたというのに」
「これでは」
「惨敗だ」
彼は苦い顔で言った。
「明らかにな」
「三割もやられてです」
「軍はここまで撤退しました」
「これではです」
「惨敗と言う他ありません」
「ファラオに申し訳が立たぬ」
忠誠心の篤いラムセスは余計に苦々しい顔になった。
「折角軍を預けて頂いたというのに」
「あの馬に乗った兵達ですね」
士官の一人が言って来た。
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