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ハーメニア

作者:秋月 俊
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衝撃!東北ずん子の正体!

                 AM7:00

 枕元で携帯のアラームが鳴り響く。

「しまった……アラーム解除し忘れてた」

今日は土曜日ということで学校がない。何か用事があるわけでもないので、午後に起きてゆったりと過ごすつもりだったんだが。起きてしまったものは仕方ないと割り切り、ベットを降りる。テレビをつけて、キッチンへ向かう。

「ええっと、パンあったよな」

棚の中を漁る。丁度クロワッサンが二つあったので、それをトースターに入れて焼く。その間にコーヒーを入れて、リビングに戻る。テレビからはニュースが流れていた。なんとなしに見るものもないので、椅子に座り、そのニュースを見始めた。

『子どもたちの怪我がなかっただけでも救いですね』
『未だに何故このようなことが起きたか、原因は究明されておりません』

司会とコメンテーターのような人が何か話していた。テロップを見ると、『小学校で謎の地割れ発生。原因は不明』と書いてある。テレビの画面が変わり、その小学校であろう写真が映し出された。その写真にはそのテロップ通り、校庭を二つに裂くような地割れの様子が収められていた。

『こちらが発見されたのが今朝とのことなので、この地割れが起こったのは昨日のうちということになりますが』
『え~、昨日は地震が起こったという情報はありませんね。ますます謎が深まります。では、次のニュースです』

画面が変わり、次のニュースに変わる。しかし、あの地割れ何か違和感を感じるな。

「っと、パン忘れてた」

キッチンに向かい、トースターからクロワッサンを取り出す。少し冷めてしまってはいるが、まぁ良いか。皿を持ってリビングに戻る。なにかないかとテレビのチャンネルを変えるが関心を引くような番組はやっていなかったので、テレビの電源を消す。

「さてと、どうするかな」

さっきの地割れがやはり気になる。今日はすることもないし、その地割れでも見に行くことにするか。

                 AM8:30

地割れのあった学校までやって来た。当然、校門のところには警察ドラマとかでよく見る立ち入り禁止の書かれた、黄色いテープが張られており、中に入ることはできないようだ。しかし、校庭が直ぐ側にあることで、近づくことは出来ずとも見ることは出来た。

「う~ん、やっぱり何か違和感があるんだよな」

地割れを注視する。テレビで見た時の違和感、実際の場所を見たらなにか分かるかと思ったんだが。

「あれ、マコトさん?」

後ろから声がかけられた。誰かと思い後ろを振り向くと、そこには制服を着たミクが立っていた。

「ミクか。おはよう」
「おはようございます。こんなところで一体何を?」
「テレビで地割れのニュースやっててさ。少し気になってな。ミクの方は?」
「私は部活の都合で今から学校に行くところです」

ミクが肩にかけていたギターを見せた。ああ、そうか。そういえばもう少しでミクたちのバンドがライブするんだっけ。

「今度ライブするんだろ?見に行くよ」
「ホントですか!嬉しいです!マキさんたちもですか?」
「あ~、今日聞いて見とく。多分余程のことがない限り来ると思うけど」

そう言うとミクが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。そのとき、校庭の地割れが見えたのか、怪訝な表情を浮かべた。

「マコトさん、あの地割れ……」
「なんか違和感あるだろ?」

ミクが俺の隣に立って、同じように地割れを注視する。

「違和感っていうか、多分ですけどあれ」

ミクが指差す。すると、そこから音の波が発射される。それはゆっくりと地割れに向かっていく。

「見てください、あれ」

音の波が地割れにぶつかる寸前に、弾かれたように消し飛んだ。

「相殺されたてことはやっぱり」
「あれってもしかして、音怪なのか?」

俺の問いかけにミクが頷いた。まさか、あれを誰かが起こしただって?

「直接触れられればもっと色々分かるんですけども」
「流石にここを越えていくのはな。それよりも、良いのか?」
「あっ!そ、それじゃ失礼します!」

ミクが慌てて踵を返し、走り去っていった。ミクのおかげでこの地割れが人為的(怪異的と言ったがいいか)なものだということが分かった。だけどなんでこんなことを。今のところ俺がわかっているハーメニアは七人。俺にミク、ゆかりとIA。着物男にルカ先生に東北か。この中でわかっているのはルカ先生は音を感じ取ることしか出来ないらしいから除外として。

「残りは六人」

ここで俺を外して考えても五人。これだけ大きな地割れを起こすことができるとなると、相当な力の持ち主だろう。もう一度地割れを見る。そこで俺は、あることを発見した。

「これ、地割れというよりも。斬ったあとって感じだな」

そこで思い出す。確か、IAの武器って鎌じゃなかったか?それにゆかりや着物男も刀を呼び出すことができる。

「疑いたくはないが……聞いてみるか」

ゆかりに連絡を取る。IAも恐らく家にいるだろうし、俺の部屋に集まることにしよう。

                 AM10:00

連絡をとってから一時間半。ゆかり少し用事があったらしく、ようやく全員揃うことが出来た。

「それで…どうしたの?」
「とりあえず、先にこれを見てくれ」

先程観察に行った時に撮ってきた、地割れの写真を見せる。二人が覗きこむように写真を見る。

「これって、テレビで言ってた地割れですか?」
「すごく…大きい」

どうやら二人共ニュースで、大体の事は知っているようだ。なら話が早い、この地割れがハーメニアの起こした音怪だということを伝える。

「それでこれなんだけど」
「マコトの言いたいこと…わかった」

IAが俺の言葉を遮るように言った。

「この地割れ…私達の誰かが起こしたって…かんがえてる?」
「えっ、やっ、それは……。まぁ、可能性としては」

それを言うと、IAが少しむくれた。そりゃ疑われて良い気はしないだろうけども、可能性があるならそれを疑わない訳にはいかない。

「マコトさん、それは流石にひどくないですか?」
「だ、だから可能性だって!俺だって、お前たちがやったとは思ってないって!」
「でも…仕方ないと思う。私も…同じ状況だったら疑ってた」

IAが溜息をつきながら言った。

「私達が知ってるハーメニアは…少ないから」
「そう言われると確かに」
「とりあえずは二人共違うんだよな?」

ゆかりとIAが頷く。良かった、疑ったのが申し訳ない。あとで何かご馳走しよう。
これであとは二人。着物男と東北か……。東北のほうが可能性は高いが、あいつの響器は弓だったからあそこまでのものは難しいだろう。となると、着物男か。

「ゆかり、着物男って普段どこにいるんだ?」
「がくぽさんですか?さあ、私もよくわからないんですよね」


親父に聞いてみるしかないか。携帯で親父の番号を呼び出す。ワンコール、ツーコール

『どうしたマコト』
「あのさ、着物男どこいるかわかる?」
『着物男?ああ、がくぽか。今オレの隣りにいるが』
「マジで?」

場所を聞こうと思っていたら、あたりを引いたらしい。これはなんと運の良い。

『どうしたんだいマコトくん。僕に用事って』
「あんた、地割れの話知ってるか?」
『ああ、あのことか。先に断っておくが、僕じゃないよ?』

あっさりと否定された。

「別に疑っちゃいないが」
『あ、そう。すまないけど今から会議なんだ、失礼するよ』

通話が切られた。あいつ、人が答える前に切りやがって、やっぱり嫌いだ。

「どうでした?」
「あいつじゃないってさ。こうなると、東北か俺達の知らないハーメニアが起こしたってことになるか」

三人で考える。

「「「う~~~~ん」」」

「何唸ってんの三人とも……」

リビングの入口から声がした。そちらに目をやると、買い物袋を持ったマキが立っていた。

「あ、マキさん。いえ、少し問題がありまして」
「それよりも…弦巻先輩はなにしに?」
「お昼ごはんをつくりにだよ~。お父さん今日いないから、マコトと食べようと思ってさ」

冷蔵庫に食材を仕舞う。俺は立ち上がり、それを手伝いにキッチンへ向かう。買い物袋の中には豆腐にネギ、ミンチなどが入っている。これは……

「麻婆豆腐作る気か?」
「正解。ゆかりちゃん達も食べてくでしょ?」

ゆかりとIAが顔を見合わせる。

「食べる…」
「お言葉に甘えさせてもらいます」

                 PM12:00

 「「「「「いただきます」」」」」

四人で机を囲みながら昼ごはんを食べ始める。

「マーボードーフ…おいしい」
「本当ですね!私あまり辛いの得意じゃないんですけど、ちょうどいいくらいで食べやすいです」
「良かったよ。マコトってあんまり美味しいとか言わないからさ」

ジト目でマキがこちらを見てきた。静かに目を逸し、ご飯をかきこむ。

「テレビつーけよ」

マキがテレビのチャンネルを取り、電源を入れる。番組はバラエティか、色々な芸能人がクイズをやっていた。

「あ、マキさん」
「これ今日放送だったんだ。恥ずかしいな」

マキがチャンネルを変えようとするが、IAがそれを奪ってチャンネル変更を防ぐ。マキだけじゃなく、天音や鼓姉妹、御手師がいるのでjamバンドとして出ているんだろう。

「あ、マキさん落ちた」
「ここさ、実は落ちたがネタになるかなぁって思って。わざと落ちた」
「メタ発言やめろよ」

知らなくていい裏情報だそれは。アイキャッチが入り、番組がCMに移る。


「そうそう、この番組の子。この頃人気だよね」

マキの声で皆がテレビを見る。その瞬間、マキ以外の皆が固まった。

『ずんずんTV!毎週日曜日17時放送中ですっ!』
「東北のご当地アイドルだったらしいんだけど、アピールのためにこっちにやって来たらしいよ。郷土愛に溢れた子だよね」

マキがなにか言っているが、全く聞こえない。ゆかりとIAも空いた口が塞がらないようだ。そりゃそうだ……なんたって昨日殺し合いをした相手が、アイドルだっただなんて驚くに決まってるだろうに。

「?どしたの、三人とも」
「い、いえなんでもありません」
「すこし…びっくりしただけ」

もしかして、契約ってこれのことか?
謎がまた増えてしまった。今度あったら聞いてみることにするか。そう決めて、残り少なくなった麻婆豆腐を食べ始めた。

続く 
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