Moreもっと恋して
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第一章
Moreもっと恋して
先生は言う、それもいつも。
「恋をしろ、人は恋をして大きくなるんだ」
「そう言うけれどね」
クラスメイトの一人がいつも口を尖らせて先生のこの言葉の後で言う。
「私達が実際に誰かと付き合ったらね」
「そうよね、もう絶対によね」
私もその娘にいつもこう返した。
「先生怒るわよね」
「不純異性交遊だのまだ早いだの言って」
「じゃあどうして恋しろっていうのよ」
「そうよね」
それこそとだ、私も彼女もいつもそう思っていた。
「これこそ矛盾?」
「国語の授業で習ったけれどね」
中学のその授業でだ。
「最強の盾と矛ね」
「それよね」
「本当に」
この話こそまさにそうだと思った。
「この関係って」
「恋しろって言いながらね」
「ちょっと男の子と話したら火山みたいに怒って」
先生達のその時の怒り様といったら本当にそんな感じだ、冗談抜きで何がそんなに悪いのかという位に怒る。
それでだ。私は彼女にいつもこう言った。
「結局あれよ、先生達は男の子と付き合うなって言いたいのよ」
「そうとしか思えないわよね」
「そうでしょ、手を繋いだだけで言うのよ」
流石にこれでは怒鳴られないにしても。
「そんなのじゃね」
「何も出来ないわよね」
「無理よ」
絶対にだ、それこそ。
「そんなの出来る筈ないわよ」
「そうよね、どうして誰に恋をしろっていうのか」
「それが謎よね」
「本当にね」
私達は先生達の言っていることが冗談抜きで矛盾していると思った。男女交際禁止でどうして恋なんてものが出来るのか。
訳がわからなかった、それで。
私は結局のことだ、誰とも付き合わないといいのでしょうと結論を出してだ。
クラスメイトにだ、はっきりと言った。
「付き合わないわ」
「誰とも?」
「だって付き合ったら先生達怒るじゃない」
それでとだ、彼女にはっきりと言った。
「親呼ぶとか家庭訪問とか面倒でしょ」
「顔真っ赤にして怒鳴ってね」
「じゃあどうして恋しろっていうのよ」
「不純異性交遊だ、まだ早いとか言ってね」
「それって結局するなってことじゃない」
「恋をね」
「学校の外でしてもばれたらそうなるじゃない」
実際にばれてだ、親呼び出しを受けた娘もいる。
「そんなのならね」
「最初からなのね」
「もうしないわ」
絶対にというのだ。
「少なくとも中学の間はね」
「高校に入ったら?」
「その時はわからないけれど」
それでもとだ、彼女に答えた。
「今はね」
「何もしないってことで」
「恋なんてしないわ」
はっきりと、しかも忌々しげに言った、言ってやった。
「絶対に」
「そうよね、怒られるのも鬱陶しいし」
「内申書がどうとかもなるし」
「ならね、最初からよ」
「しないのが一番面倒じゃない」
「そういうことよ」
私は彼女に自分の結論を話した、そしてだった。
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