戦国異伝
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第二百四十九話 厳島その三
「やはり戦は飯がありじゃ」
「武具もですな」
「そうしたものがあってこそな」
「出来るものですな」
「刀も槍もなく」
信長は諸将にさらに言った。
「矢も鉄砲の弾もなくて戦えるか」
「はい、それはです」
「とてもですな」
「無理です」
「それは」
「そうじゃ、出来ぬ」
まさにという口調での言葉だった。
「だからじゃ」
「安芸に兵糧、武具を集め」
「そのうえで」
「周防に来るであろう敵と戦う」
「そうしますな」
「その通りじゃ、まずはそれからじゃ」
兵糧や武具を集めてというのだ。
「戦が出来るからな」
「ではやはり広島城に戻れば」
「その時こそは」
「最後の戦ですな」
「その時になりますか」
「そうなる、安芸に戻って数日経つか経たぬか」
それだけの日でというのだ。
「敵が姿を現すであろうな」
「そして最後の戦ですな」
「まさに」
「そして戦い」
「勝ちましょうぞ」
皆強く言うのだった、そうして。
天下の主な武士達が皆厳島に入った、そして海から浮かび出たその見事な社の中に参った。するとだった。
その社の中と前の海、後ろの山。赤と青と緑を見回してだった。羽柴はその目を丸くさせてそのうえでこう言った。
「噂には聞いていましたが」
「猿、ここでもはしゃぐか」
「はしゃぎもしまするぞ」
柴田にもこう返す。
「ここは凄い」
「確かにな、この厳島神社はな」
「社には思えませぬ」
「では何だというのじゃ」
「竜宮です」
それだというのだ。
「竜宮城の様です」
「そうじゃな、言われてみればな」
「潮が退けば海から出て来る」
「その様な社は他にはないな」
「全くです、それにこの造りも」
社のそれもというのだ。
「木の色と赤が」
「奇麗でな」
「そのことかもです」
「竜宮の様だというのじゃな」
「全く以て、権六殿もそう思われますな」
「思うがな」
しかしと返す柴田だった。
「御主は全く以て」
「はしゃぎ過ぎだと」
「もう立派な大名となって久しいというのに」
「いやいや、それでもです」
「見ていて立派だからか」
「どうしてもはしゃいでしまいます」
「そういうことか、しかしな」
また言う柴田だった。
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