戦国異伝
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第二百四十九話 厳島その一
第二百四十九話 厳島
信長は諸将と軍勢を広島城まで動かした、とはいっても四十万の大軍は広島城には入りきらずその周辺の城にも別れて入った。
そのうえでだ、信長は諸将に言った。
「海に出るぞ、少しな」
「戦の前にですか」
「少し、ですか」
「そうじゃ、主な者は皆来るのじゃ」
信長について来いというのだ。
「よいな」
「海といいますと」
「この安芸の海ですか」
「と、いいますとそこは」
「まさか」
「そうじゃ、厳島じゃ」
そこにだというのだ。
「行くぞ」
「ですか、厳島神社において」
「あの社に入ってですか」
「そのうえで参拝して」
「そして」
「勝つことを告げるぞ」
祈るのではなく、というのだ。
「厳島明神にな」
「ううむ、だからですか」
「上様は安芸でああ言われたのですか」
「戦の前にですか」
「参ると」
「そうする、この瀬戸内は何といっても厳島明神の海じゃ」
この神のというのだ。
「だからな」
「あの社にですな」
「我等皆で入り」
「そしてそのうえで」
「告げられます」
「勝つのを祈るのではない」
そこは違うとだ、信長は強く言った。
「わしはな」
「祈るのではなく約束する」
「勝ちをですな」
「それをですな」
「誓ってそして」
「実際にですか」
「そうじゃ、あの者達を滅ぼす」
魔界衆、彼等をというのだ。
「よいな」
「さすれば」
既に戻っている雑賀が応えた、見れば飛騨者も十勇士も皆戻ってきている。そのうえで皆信長の前にいるのだ。
「厳島に参りましょう」
「そうするぞ、まだ魔界衆の者達は見付かっておらぬ」
島から逃げた彼等の行く先、それがというのだ。
「何処に出るかはおおよそわかっておるが」
「まずは、ですな」
ここで言ったのは信行だった。
「厳島ですか」
「すぐに行ってすぐに戻る」
そうするというのだ。
「これよりな」
「畏まりました」
信行が応えてだった、信長は諸将を大船に分けて乗せてだった。そのうえで広島から厳島に向かった。その途中にだ。
海から島々を見てだ、信長は唸って言った。
「ここは面白い場所じゃな」
「島が多く、ですな」
「それぞれ入り組んでおってな」
案内役の村上にも応えて言うのだった。
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