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2部分:第二章
第二章
「あんたが失敗し続けた記憶がね」
「そんな大袈裟な。記憶だなんて」
「じゃあ何て言うの?記録?」
やはり冷たい感じで真由子に問うた。
「思い出?いい思い出と悪い思い出があるっていうけれど」
「この場合は悪い思い出ね」
「わかってるなら自覚しなさい」
またしても冷たい言葉が出た。
「自覚をね。いいわね」
「自覚って大袈裟な」
「大袈裟でも何でもないわ」
智巳はまた言ってみせる。
「だって本当にそうじゃない」
「自覚がないって?」
「痩せたいのよね」
それをあらためて真由子に対して聞く。
「本気で」
「ええ」
真由子もまた真剣な顔でそれに答えた。
「そうよ。何があっても」
「じゃあ。真剣に努力しなさい」
「真剣になのね」
「そう、だったら協力してあげるわ」
ここでやっと親友の顔になるのだった。
「ダイエットのね」
「そうなの」
「もう一度聞くけれど本気なのよね」
それをまた真由子に問うてきた。
「本当に」
「ええ、本気よ」
はっきりと智巳に対して答える。
「嘘じゃないわ」
「わかったわ。それじゃあまずはね」
「まずは?」
「紅茶に砂糖は入れないことね」
「入れてはいないわ」
智巳はコーヒーで真由子は紅茶だ。見れば真由子のそれはレモンティーだ。色が少し薄くなっているのでそれがよくわかるのである。
「まずは合格ね。言うまでもないけれど」
「ダイエットに甘いものは禁物ね」
「そういうこと。ただし蒟蒻ゼリーとかは別よ」
「カロリーがないからね」
「どうしても食べたくなったらそれね」
まずは甘いものからだった。
「けれど基本的にはね」
「甘いものは駄目」
「クリープを入れないのもいいわね」
「そうなの」
「乳製品は結構太るのよ」
そこを指摘するのだった。
「牛乳もいいけれどここはやっぱり」
「何がいいの?」
「豆乳よ」
智巳が出してきたのはそれであった。
「豆乳がいいわ。それに野菜ジュース」
「成程」
「食べるのもお肉は駄目」
続いてはそれであった。
「特に牛肉はね」
「そうね。それは知ってるわ」
「鶏肉、しかもササミとか」
さらに言葉を続ける。
「お魚がいいのよ」
「お魚がいいのね、それもよく聞くわ」
「しかも小魚」
「それね」
「ええ。あと御飯は」
「御飯はどうなの?」
「麦を入れるか思い切って玄米にするか」
言うのはそれだった。
「玄米が理想ね」
「玄米嫌いじゃないわ」
真由子は答える。
「別にそれでも」
「じゃあそれで決まりね。食事はそんなところよ」
「それで終わり?」
「あとは三食しっかり食べる。外食もあまり止めた方がいいわね」
「お弁当の方がカロリーとか栄養をコントロールし易いからね」
「そうよ。それに一番大事なのは」
「何なの?」
また問う。本当に真剣であった。
「三食しっかり食べることよ」
「三食しっかりと」
「そう、規則正しい生活をすることが大事なのよ」
そこを強調して言うのであった。
「そこがね」
「それもよく言われることね」
「よく言われるからよ。ああそうそう」
さらに言い加える智巳であった。
「わかってると思うけれど夜遅くに食べるのと間食は駄目よ」
「やっぱりそうなのね」
「それ位なら朝にしっかり食べる」
それであった。
「いいわね」
「ええ。後は」
「運動ね」
次にはそれであった。
「あんた元々バレー部よね」
「ええ、そうよ」
智巳の問いに答える。
「だったら運動は慣れている筈だから」
「ランニングとか?」
「それと筋トレね」
その二つであった。
「朝起きて走って夕食の後、お風呂入る前なんかにね」
「毎日やるのね」
「わかってるじゃない」
「何度もやってるから」
ダイエットのベテランなのだった。実は。失敗ばかりしているにしろ。
「知識としてあるのよ」
「じゃあ後は途中で止めないことね」
「途中でなのね」
「一応聞くけれど」
智巳はまた真由子に問うてきた。
「今度は何?」
「あんたどうしていつも失敗してるの?」
問うのはそこであった。
「それを聞いておきたいけれど」
「辛いから」
「辛い?」
「ええ、身体がしんどくなってお腹が空いて」
困った顔で智巳に答えるのだった。
「それで限界になって」
「ああ、それははっきりわかるわ」
「わかるの?」
「理由がね」
こう真由子に対して答えてみせた。
「わかったわ。あんたまずしっかり食べなさい」
「三食しっかりとじゃなくて?」
「痩せたければ食べるのよ」
随分と懐かしい言葉であった。この言葉を聞くと肌が白くなりそうだ。それだけで。
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