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私は町の何でも屋

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2部分:第二章


第二章

「だからね。それを出しておけばすぐに寄って来ますから」
「じゃあ頼めるかい?」
「わかりました。それじゃあ散髪が終わってからですね」
「頼むよ。ただ」
「ただ?」
「わかってると思うけれどあの猫は凶暴だから」
 彼が今言うのはこのことだった。
「だから注意してね。引っ掻かれたりそういうことがないようにね」
「わかってますよ。あの猫はもう何度も探していますから」
「大丈夫だね」
「はい、そうです」
 また答えるマゼットだった。
「それは」
「そうか。任せられるか」
「任せて下さい。鰻さえあればいいですから」
 マゼットは笑顔で応えてだ。さらに話す。
 そうしてそのうえでだ。散髪の仕事を手早くやる。それが一段落してからだ。マゼットはすぐに家の台所に向かいそのうえで鰻を一尾取って来た。
 それを見せてだ。彼は言ってきた。
「すぐに行って来ます」
「頼むよ。僕は今から代筆をするから」
「そっちをですか」
「うん、すぐに書くよ」
 既に紙とペンを用意してある。そこにすぐに書いていく。かなりの速筆である。
 それを書き終えた頃にはだ。もうマゼットはいなかった。鰻を持って街に出ていた。その家出した猫を探し出して連れ帰る為である。
 とりあえず書き終えた手紙を見てからだ。彼は少し休もうとした。しかしだった。
「いるかい?」
「何ですか?」
「散髪を頼むよ」
 新しい客が入って来ての言葉だった。
「すぐにね」
「はい、どういう風にしますか?」
「最近白髪が多いから染めてくれ」
 そうしてくれというのだ。
「黒にね」
「はい、じゃあ染料持って来ますから」
 すぐに店の奥に入りそれを持って来たのであった。
「黒ですね」
「真っ黒で御願いするよ」
 客はそうしてくれと話す。
「もうね。黒々とね」
「それじゃあそれで」
「後は」
 客は椅子に座りながらさらに話す。
「少し縮れさせたいな」
「縮れですか」
「うん、そうしてくれるかな」
 こう話すのだった。
「それで御願いできるかな」
「時間かかりますけれどいいですか?」
「ああ、いいよ」
 客は屈託のない笑顔で応える。
「その間シェスタをするから」
「そうですか、シェスタをですか」
「あんたもこれが終わってするのかい?」
「それがその暇もないんですよ」
 フィガロは困った笑顔で客の言葉に返す。
「それがね」
「ないのかい」
「最近は特に」
 そうだというのだ。スペインにあってもだった。
「残念ですが」
「そうか、忙しいんだね」
「凄いんですよ」
 こうその客に話す。
「とても」
「それはまた難儀だね」
「かといって夜もですね」
「仕事があるのか」
「そうなんですよ。今日も仕事が入っていまして」
「おやおや、それはまた」
「けれど何か楽しいことは楽しいですよ」
 それでもこんな話もするフィガロだった。
 
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