MS Operative Theory
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MS戦術解説
人間による起動兵器との戦闘法②
——地球連邦軍の対MS特技兵たち——
MSのパイオニアがジオン公国軍であるなら、地球連邦軍は生身の将兵による対MS部隊を編制した組織と言える。ジオン公国軍の地球侵攻作戦直後やMSが実用化された後もMSが配備されなかった地域では、戦闘爆撃機フライマンタや61式戦車などが対MS戦闘を行っていた。しかし、これらの兵器すら不足していた部隊では、対MS火器を運用する対MS特技兵分隊が組織された。
「地球連邦軍対MS特技兵分隊(E.F.G.F. AntiMS Squad)」は、対MS重誘導弾(AMSM)M-101A3リジーナを扱う特殊技能兵と、これを援護する一般兵で編制された部隊である。分隊員は5人で、ランチャーを運搬、運用する特技兵が二人、誘導弾の運搬にも携わるライフルマンが一人、分隊支援火器担当、通信兵が各一人という構成であった。2個MS中隊を持つ極東方面軍第一機械化混成大隊にも、装甲兵員輸送車両と対MSミサイルが装備する対MS歩兵中隊(小隊4個で編制)が常設されており、対MS部隊は、必要不可欠な存在として考えられていた。
——重火器を用いた肉弾攻撃——
身を隠しながら敵MSに接近し、対装甲攻撃力を持つ誘導弾や無反動砲、ロケット・ランチャー、グレネード・ランチャーで攻撃を加える。「バズーカ」などの対戦車火器を用いた対戦車攻撃に近く、最も一般的な対MS攻撃と言える。人間が携行可能な対装甲火器類は、射程が短く命中精度にも劣るため、どうしても接近する必要がある。このため死傷率が高いと言う欠点があるが、敵MSを撃破するにはこうしたリスクを承知して実施されるケースも多い。
①身を隠しながらMSへ接近
位置が露見すると攻撃を受けるため、障害物や高低差を利用して身を隠し、携行火器の有効射程まで接近する。MSは集音センサーも持つため、音も消す必要がある。
②死角から攻撃
有効射程まで接近し、かつ敵MSの死角となりやすい足元周辺を遷移した後に、敵パイロットに察知される前に攻撃を行う。股関節や膝、スラスターなどを破壊目標とする。
③敵機の処理
投降勧告や重要箇所の破壊など、目的に合わせた行動を取る。移動ユニットのみを破壊していた場合、敵MSの兵装が残っているので、反撃を受けないためにそれも無力化する。
CASE1:シローアマダの対ザク肉薄攻撃
一年戦争時、コジマ大隊第08MS小隊長のシロー・アマダ少尉が、ゲリラの村の堀から奇襲攻撃を実施した。グレネード・ランチャーでMS-05(ザクⅠ)の股間部を破壊し、移動力を奪った。
CASE2:ネネカ隊の対V2攻撃
ベスパ近衛師団のネネカ隊が、ロケット・ランチャーを用いてLM314V21(V2ガンダム)へ肉薄攻撃を行った。この結果、V2ガンダムの増加パーツを破壊したが、反撃を受け、隊は全滅した。
——ワイヤートラップ——
MSの破壊ではなく、一時的に移動能力を封じるための攻撃方法。森林地帯など、MSからの確認が困難な場所にワイヤーを張り巡らせMSを転倒させる。トラップの隠匿性を向上させるためにワイヤーを埋設し、敵MS通過時にこれを引き上げると言う手段も採られる。トラップを主軸とするため、攻撃側に被害が出にくい点が特徴だが、ワイヤーの強度や設置方法によってはMSに突破されるという問題もある。これと爆発物を組み合わせたトラップもある。
①トラップ設置とMSの誘導
MSの通過予測地点にワイヤートラップをを設置する。この際、隠匿性を確保するために森林地帯などを選ぶ。そのまま待ち伏せするか、敵MSをトラップエリアに誘い込む
②ワイヤーで転倒させる
敵MSがトラップに差し掛かったら、ワイヤーを展開して転倒させる。この際、ワイヤーや基部の耐久性が低いと引き千切られてしまう為、注意が必要。
③敵MSの処理
転倒させた後に兵装や移動機構を破壊するか、パイロットを拘束してMSを無力化する。戦闘が継続していた場合、パイロットの殺害やMSを完全に破壊することもある。
CASE1:サジジ村の戦い
ジオン公国軍が占領していたサジジ村に08小隊が攻撃を行った際、地元ゲリラがワイヤートラップでMS-06(ザクⅡ)を転倒させた。MSが行動不能となったため、パイロットは投降した。
CASE2:カサレリア近郊のワイヤートラップ
ザンスカール戦争時、対MS警戒として不法居留区ポイント・カサレリア周辺の森林地帯にワイヤートラップが仕掛けられていた。
——ワッパを用いた肉薄攻撃——
パーソナル・ホバークラフト「ワッパ」などの機動性を用いてMSに接近後、MSに対しても有効な爆発物を設置、あるいは投擲、発射して敵MSを攻撃する方法。徒歩と異なり機動性に優れるワッパを用いるため、一撃離脱に近い攻撃となる。高速移動のため、敵MSに補足されにくいが、防御力は殆ど無く、対人兵器で反撃される可能性もある。ワッパで敵MSの直前を通過し、足元に地雷を投下する作戦を実施した部隊もあったといわれる。
①敵MSへの接近
目標に設置、投下する兵装を持ったままワッパ部隊で敵MSに接近する。移動中のワッパはその起動音で発見されやすいため、味方MSなどの牽制が必要となる。
②爆発物の設置、投下
敵MSに接近した後に爆発物を設置、あるいは足元などに投下する。この際、時間をかけるとMSと接触する危険があるため、一撃離脱の要領でMSから離脱する。
③敵MS周辺からの離脱、処理
設置タイプを使用した場合は時限信管式のため、爆発前に敵MSから遠ざかる。対MS地雷などの場合、敵MSが接触した時点で爆発するので、投下以前から予測した起動で離脱する。
CASE1:公国軍パトロール部隊とガンダムの戦闘
クワラン曹長が率いる極東のジオン公国軍パトロール部隊がザクⅡを囮として、ワッパ部隊でRX-78-2(ガンダム)に時限爆弾を設置した。戦闘後、アムロ・レイの手で爆弾は全て取り除かれた。
CASE2:リガ・ミリティアのワッパによる追撃
欧州地区を移動中のリガ・ミリティアは、攻撃を仕掛けてくるベスパ部隊に対し、バズーカ砲手を載せたワッパで迎撃した。このように自走砲化されたワッパが用いられることもあった。
——MSの乗っ取り——
起動中の敵MSから敵パイロットを排除し、そのままMSを奪うと言う強引な方法(アムロ・レイやカミーユ・ビダンのような停止中のMS奪取とは異なる)。実例は少ないが、意表をついた行動であるため奇襲性が高いこと、これを実行した大半の者が少年であったため、パイロットが見くびっていたことも成功の要因であったと考えられる。ただし、MSのコックピットは10m近い高さにあるため、そこまでよじ登る手段を講じなければならない。
①メインセンサーを無力化
可能であれば、ペイント弾などで敵MSのメインセンサーを無力化し、敵パイロットにハッチを解放させる。無理なら外部からハッチを強制開放する。
②パイロットの排除
コックピットハッチを開放した後に、敵パイロットを機体から排除する。銃器を使うと跳弾の可能性が高いので、非致死性兵器で無力化するなどの方法が用いられる。
③MSの確保
敵パイロットを排除した後に、MSを奪取する。敵識別コードや機体そのものを利用して、敵部隊を奇襲するという手もあるが、味方からの誤認もあるために注意が必要。
CASE1:ジュドー・アーシタのガルスJ強奪未遂
第1次ネオ・ジオン戦争時、サイド1・1バンチの少年ジュドー・アーシタがコロニー内でマシュマー・セロのAMX-101(ガルスJ)の奪取を試みた。しかし、これは失敗している。
CASE2:ウッソ・エヴィンのシャッコー強奪
民間人のウッソ・エヴィンがパラグライダーで飛行中、クロノクル・アシャーが搭乗する試作MS、ZMT-S12G(シャッコー)と空中で接触。この直後、ウッソはシャッコーを強奪している。
——絶えることがない人とMSの戦闘——
MSの絶対数が不足していた一年戦争時には、対MS特技兵と言った特殊兵科が必要とされていた。しかし、戦後には地球連邦軍の殆どの部隊にMSが配備されたうえ、各地のゲリラ組織もMSを装備するようになった。また、対MS特技兵の損耗率の高さもあって、生身の人間がMSと対峙する必要性は低下していった。だが、旧ジオン公国軍残党などとは異なる反地球連邦組織や、リガ・ミリティアなどの民兵組織が誕生すると、装備が不足していたことから人間が対MS戦を行うケースも見られるようになった。また、ティターンズのRGM-79Q(ジム・クゥエル)のように、治安維持や暴徒鎮圧を目的として対人能力を強化されたMSも開発されていることから、人間とMSの戦闘がなくなることは無いと考えられる。
後書き
MS戦術解説 了
次回 内部図解 MS
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