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双子の悪戯

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4部分:第四章


第四章

「お家じゃ話せないことらしいです」
「家じゃね」
「そうみたいなんですよ」
 こうだ。必死に取り繕って話したのだった。
「ですからちょっと来てくれますか?」
「どういう事情かはわからないけれど」
 また一瞬だけ目を光らせてからだ。
 それからだ。彼は麻美、実は亜実に話した。
「それじゃあね」
「一緒に来てくれますか?」
「そうさせてもらうよ」
 こう答える彼だった。
「じゃあ案内してくれるかな」
「是非共」
「それでその場所は何処かな」
 丈は場所についてもだ。彼女に尋ねた。
「そこは」
「公園です」
 今度は考えていたので。亜実も答えられた。
「ここから少し行った」
「ああ、あそこだね」
 そこまで聞いただけでだ。丈は理解した。
 それでだ。こう彼女に返したのだった。
「あの公園だね」
「あそこで話したいそうで」
「じゃあ行こうか」
 ここまで聞いてだ。丈は微笑んでだった。
 その場所に入りだ。そうしてだった。
 派手な外見の女の子に案内されてだ。戸締りをしてから家を後にした。二人でだ。
 公園までの道を歩いていた。彼女は右にいた。筈だった。
 丈が右を向くとだ。彼女はいなかった。しかしだ。
 左からだ。声が聞こえてきたのだった。
「あの」
「んっ?」
「どうしたんですか?」
「いや、さっきだけれど」
 こうだ。左を向いて声に応えた。するとだ。 
 そこに彼女がいた。そしてにこにことしている。さっきまで右にいたのにだ。
 その彼女を見てだ。丈は言うのだった。
「右にいたんじゃなかったの?」
「私さっきからこっちにいましたよ」
「あれっ、そうだったかな」
「そうですよ」
 実は物陰に隠れていてだ。二人についてだ。入れ替わったのだ。
 そうしてだ。兄に仕掛けたのだ。
 その真実がだ。笑顔で兄に話す。
「気のせいじゃないんですか?」
「だったらいいけれど」
 丈は首を捻りながら応える。
「それでだけれど」
「公園にですね」
「一体何なのかな」
 このことがだ。丈は気になるといった様子だった。少なくとも真実からはそう見える。
「本当に」
「まあ公園に行かれれば」
「わかるんだね」
「そう思います」
「そうなんだ」
 ここでだ。丈は顔を正面にやった。その間に。
 入れ替わりだ。今度は亜実がだった。
 右からだ。声をかけたのだった。
「それでなんですけれど」
「あれっ!?」
 右に同じ顔がいた。それで左を振り向くと。
 いないのだ。右に戻っていた。それを見てだ。彼は。
「右って」
「最初からこっちでしたよ」
「いや、さっき左にいなかった?」
「気のせいじゃないんですか?」
 くすりと笑ってだ。亜実はその素顔を隠して言う。
 
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