おぢばにおかえり
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第二十五話 思わぬ再会その三
「あとの一人は」
「その子なんだよね」
また受付の人が仰います。
「その一年の子だけれどね」
「まだなんですか」
「目立つからすぐにわかるんだよ」
そうみたいです。お話を聞く限りは。
「けれど。何処かな」
「ああ、彼ならもうすぐですよ」
一年生の女の子が言ってきました。
「ちょっと商店街をうろうろしていましたから」
「商店街を?」
「はい。何かパンとかお菓子を見て」
「パンとかお菓子を」
それを聞いて少し眉を顰めさせました。
「そんなのここに一杯あるのに」
「そう思うんですけれどね。それでも」
「けれどもうすぐ来るのよね」
「はい」
これは確かなことでした。
「そうです。もうすぐです」
「じゃあ待っていてもいいかしら」
私はこう考えました。
「それだと」
「そうだね。まあもうすぐだろうから」
受付の人も仰います。
「とりあえず部屋にね」
「ええ」
「それじゃあ」
皆がそれに頷いたところで。その最後の一人がやって来ました。
「時間ギリギリでしたっけ」
「そうだよ、阿波野君」
「阿波野君って・・・・・・」
平気な顔でやって来たその男の子と受付の人の言葉を聞いて思わず絶句しました。そうです、やって来た最後の一人が何と。あの子だったのです。
「君、あの時の!?」
「あれ、先輩」
私を見ても平気な顔でした。
「どうしてここに?」
「それはこっちの言葉よ」
思わず言い返してしまいました。
「何でこんな場所に」
「だって僕奥華らしいですから」
「らしいって」
これまた実にいい加減な言葉でした。
「何よ、その言葉」
「駄目かな」
「駄目っていうかね。普通所属先は覚えておくものでしょ」
「いや、まだ天理教のことよく知らないしね」
しれっとした言葉でした。
「だからまあ」
「そういえば阿波野君って高校入学からだったっけ」
今思い出したことです。
「天理教に本格的に入ったのって」
「そうですよ。だから全然」
「知らないの」
「今まで宗教色なんて全然ない世界にいたんですよ。まあ一応は」
話が阿波野君ペースで進んでいるのがわかりました。どうもこの子と話をするとそうなってしまうような気がします。波長がそうさせるんでしょうか。
「中学の時に何度かここに来てますけれどね」
「おぢばに?」
「ええ、遊びに」
どうやらそうらしいです。何か声を何処かで聞いたような気もしないではないですけれど。
「来てましたけれどね」
「詰所に来たことは?」
「三年の時に一度だけ」
そうらしいです。
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