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喋らせる

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2部分:第二章


第二章

 盛道はそうした漫画を手に取りそのうえで。
 一冊一冊読んでいく。しかしだ。
 どれを読んでもにこりともしない。表情すら変えない。
 特にだ。ガキデカを読んでもだ。
「おい、あんな下品な漫画読んでもか」
「全然表情変えないぞ」
「こりゃ一体どういうことだ」
「マカロニほうれん荘でもか」
 それも駄目であった。
「あの漫画で笑わないまでもな」
「表情は変わるよな」
「それだけの威力はある漫画だろ」
「花の応援団でどうして笑わないんだよ」
 とにかく古い漫画を出すがだ。全くだった。
 彼は表情を変えない。勿論一言も言わない。結局だ。
 漫画も駄目だった。それではだ。
「よし、テレビだ」
「ラジオもいいな」
「アニメだアニメ」
「声優さんのラジオ持って来い」
 とにかく笑えるものを持って来る。だが。
 そうしたものでも全く笑わない。何一つだ。
 その彼にだ。遂に皆こう言うのだった。
「こりゃ駄目か?」
「まんまゴルゴじゃねえかよ」
「何一つ笑わないし話さないしな」
「完璧ゴルゴだな」
「ああ、人が後ろに立つと殴ってきそうだな」
 ゴルゴ13の奇妙な癖の一つだ。何故か人が後ろに立つと総攻撃を仕掛けるのだ。尚これが本人の役に立っているかどうかは疑問だ。
 その彼だというのだ。まさにだ。
「ううん、どうしても喋らないか?」
「笑わないのか」
「お手上げだな、こりゃ」
「ああ、どうしようもないぜ」
 流石に諦める声も出て来た。しかしだ。
 皆が匙を投げようとしているクラスでだ。先生が来てだ。
 クラスの中をしきりに見回してだ。生徒達に尋ねるのだった。
「ドラゴンズの一番知らないか?」
「福留ならメジャーに行きましたよ」
「ライトにコンバートしたら一気にブレイクして」
「ああ、その一番じゃなくて」
 彼ではないというのだ。
「うちのクラスの高木だよ」
「ああ、そういえばドラゴンズの一番でしたね」
「打順も一番で」
「それでしたね」
「そっちの高木いるか?」
 先生はまた生徒達に尋ねた。
「名古屋球場に行ったか?」
「もう名古屋ドームになってますよ」
「ついでに監督落合ですから」
 こんな突っ込みも来た。
「とにかく高木ですね」
「あいつ探してるんですね」
「このクラスにいるか?」
 また尋ねる先生だった。
「いたらいいんだがいるか?」
「はい、いますよ」
「相変わらず一言も話さないです」
「サイボーグみたいです」
 こう応える生徒達だった。いるというのだ。
 それを聞いてだ。先生は生徒達が指し示す方を見てだ。その盛道を見る。
 そのうえでいたか、という顔をしてから彼の前に来てだ。こう言うのだった。
「手術成功したぞ」
「・・・・・・・・・」
「妹さん助かったぞ。よかったな」
 その言葉を聞くとだった。
 
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