ほね・骨 ・Bone!!~【30万人の骸骨が、異世界に移住した結果がこの有様だよ!】
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10話 祖国戦争 序戦 -6「熟練した弓兵によるロングボウの最大射程は500m?」
戦場では重い装備は兵士達に嫌われる。
基本的に徒歩で移動するし、疲労や怪我で部隊から脱落したら死ぬしかないから、槍も鎧も軽いと嬉しい。
だから、ピィザ軍の兵士達は薄くて軽くて安い、三拍子が揃った茶色の鎧を着ていた。
彼らは両手に細長い槍を持ち、密集隊形で砂の上を走る。
もちろん、この槍も軽い。兵士達がそれぞれ槍を運びやすくするために一部を切断したからだ。
補給物資も担いでいたローマ軍の皆さんが見たら、それはもう羨ましくなる軽装だ。
「エビ・ピィザ槍部隊突撃っー!」
貴族出身の指揮官の命令で、槍を構えた兵士達が駆け出した。
目指す目標地点は下ろされたままの跳ね橋。その先にある首都カイロン。
跳ね橋を突破すれば……略奪できる。
なにせ目の前に存在するのは一国の首都だ。
国中の利権が集中する場所だから、金銀財宝が山のようにあるに違いない。
農民や貧民出身の兵士達から見れば、ここはまさに黄金の刈り取り場。
従軍している十代後半のモッタリ・ピザーラ少年も、心の躍動感を抑えきれなかった。
(俺……ここで略奪した財宝を商人に売って、田舎でピリカと結婚して人生をやり直すんだっ……!)
熱い思いと一緒にピザーラがいる槍部隊は前を進む。
密集した槍は弓矢から身を防ぐ盾代わりに使えるから、全員が槍を頭上に掲げている。
武器と防具の両方を兼ねていて便利――だが、やはり人は簡単に死ぬ。
体の何処に攻撃が当たっても、血が通っている以上、それは弱点になる。
「ぱぷっ!」
800mの距離を超えて飛んできた一本の矢。それがピザーラの同僚の頭を、安くて薄い兜ごと貫いて殺した。
(えっ……?)
城壁からここまで800m以上の距離があるのに……矢は人間を殺傷できるエネルギーを維持したまま、次々と飛んでくる。
これはピザーラの今まで体験した常識的にありえない光景だった。
鎧を来た兵士相手に、矢の殺傷力を維持できるのは、せいぜい200mくらいのはず。
しかし800mとなれば矢の持つ運動エネルギーは殺され、浅く刺さるはずだった。それ以前に500m飛べば良い方だ。
だが現実は、薄い兜を貫通して人間を殺せる殺傷力を――矢が持っている。
(セ、セイルン王国の新兵器!?)
槍部隊は前進する度に、雨のように降ってくる矢が身体に突き刺さり、数をすり減らす。
何処に刺さっても血管があるから、1本でも刺されば大問題。
でも前進するしかない。これは意味のある犠牲なのだから。
味方を犠牲にして、跳ね橋との距離を詰めれば勝利は訪れる。
弾幕のような猛烈な矢の雨。前進し続けるとピザーラは見た。
城壁の上にいる膨大な骸骨。それらがロングボウを持って強力な面制圧射撃を連続で繰り返している。
(が、骸骨っ……!?死人が動いているっ……?!
俺、何と戦争しているんだっ……!)
ようやく、ピザーラはこの戦いが普通の戦争じゃない事に気がついた。
死人と生者の争い。相手は文字通りの化物。アンデッド。死人。
大量の矢がピザーラ達へ目掛けて降り注ぐ。その度に顔見知りの同僚や上司が動かなくなった。
骸骨が使うロングボウ……それは強力な長弓の一種。
腕の形が変わるくらい鍛え上げられた筋力がないと、まともに運用できない。だが、運用できれば速射はできるわ、射程距離は長いわと鬼に金棒を与えるようなスペックがある。
特に強力な連射ができるのは良い利点だ。弓兵が少数でも大活躍できる。
高LVの骸骨の筋力を上手く活かせば、信じられない有効射程だって出せる。
その事実は……矢を雨のように浴びせられる側のピザーラにとっては不幸だったが。
(お、俺には当たらないっ……!俺には当たらないっ……!ピリカちゃんと結婚するって誓ったんだっ!
だから生き残れるっ!神様は俺を見てるっ!)
こんな悲惨な状態でもピザーラは逃げられない。
脱走兵は死刑、もしくは懲罰部隊へ編入される。脱走に成功しても故郷に帰る前に餓死するのがオチだ。
ここって異国だし、安全に旅行できるはずもない。
それ以前に、集団で移動中に、個人が別の方向へ移動すると事故りやすい。(現実の自衛隊でも行進の訓練中に、『皆に踏み潰されて死んだ』悲しい事件があった)
辛いけど人生って戦争なのよね。
(勝ち戦なんだっ……!
だから、俺は生き残れるんだっ……!)
「へへへへへっ!ピザーラ落ち着けよ!
矢なんて滅多に当たらないぜ!
当たっても、首都を落とせば勝利だからなっ!
だから――」
左隣にいる先輩のパウダー伍長が安心するために語りかけてきた。
でも、突然、声がしなくなったから、ピザーラは左を見た。
そこにはパウダー伍長の姿はない。
集団行動中に転ぶと、皆に踏み潰されるから、パウダー伍長はひき肉になっていた。
(良い人ほど早死するって噂っ……!
本当だったんだっ……!)
~~~~~
的確に弓矢による面制圧攻撃を繰り返す骸骨達。だが、このままでは敵軍に接近され、跳ね橋を突破されるのは時間の問題だった。
現代や近代なら機関銃で物量任せの突撃を阻止できるが、スケルトン達のアイテムボックスにはそんな武器はない。
弓矢って何だかんだ言って、連射力も貫通力も機関銃と比べれば『アリとゾウ』ほどの性能差があって微妙。だから敵軍の進撃を止めるのが難しい。
ロングボウより、戦国時代の火縄銃の方がこの場では役に立つはずである。無論、そんなもんはないが。
(くっ……!このままでは城門を突破されるっ……!
陛下がいるから陥落はしないだろうがっ……!私の信用が失墜する!)
ワルキュラに失望される事を恐れたデスキング。スケルトン大陸軍を指揮する彼は、骨の両手を前に出し、照準を人間の兵士達に定めて
「ダークボール!」
無差別殺戮用の暗黒魔法を使おうとした。しかし、頭上に輝く人工太陽が発動を妨害。効果は発揮されず、恥ずかしい思いをする。
すかさず、副官のリッチがツッコミを入れた。紅い帽子を被った骸骨さんだ。
「だから魔法は使えないっス!
あの人工太陽がある限り、俺らの魔法はほとんど使えないっス!」
「くっ……!」
デスキングは焦燥に駆られる。ノーライフ・オンラインの最終決戦で無残に『水爆』で蒸発して、ワルキュラの役に立てなかった負い目があるだけに、絶対に勝利しなければいけない場面だ。
失敗は許されない。
(私はここで負ける事は許されないのだ!
これはあの方が与えてくださった最後のチャンスだぞっ!)
槍を掲げて、迫り来る敵軍。スケルトン大陸軍の物資は、最終決戦の時に大部分を使い果たしたり、死んだ時に落とした。
爆弾や銃よりも安価な魔法に依存していたから、こういう状況は相性が悪すぎる。
あと少ない残り時間分で取れる手段がデスキングには思いつかない。ロングボウの乱射で時間を稼げても、着々と人間の軍勢は、イナゴの群れのように跳ね橋へと押し寄せようとする。
「ふふふふふっ!お困りのようですね~!」
勝気な女の声がした。デスキングはその方向へと顔を向ける。
そこに居たのは、バランスの良い体型をしたエルフの金髪美少女。緑色の高級感溢れるドレスを着ている。
魔法開発班のアトリだった。
「アトリっ!なぜ、ここにいるっ!?」
問われたアトリは、指でVサイン作って返事する。
「なんとっ!陛下からの命令でっ!魔法開発班が溜め込んだ在庫を持ってきたのです!」
よく見たら彼女は分厚い手袋をしている。
それが何もない空間に突き刺さった。異次元に収められたアイテムがそこから出てくる。
それは――今の状況を覆す可能性を持つ。
日本人の日常生活でも有り触れた道具だった。デスキングも喉から骨の手が出るほどに欲しい最高のアイテム。
その反応を見て楽しんだアトリ。彼女は妖しく微笑んで
「これを上げるのです。
だから……陛下に戦勝報告する時に、私の名前を必ず出して欲しいのですよ?」
(陛下っ……!ありがとうございますっ……!
私に今度こそ勝利しろとっ……!そう言っておられるのですなっ……!)
デスキングは心の中で泣いた。恐らく、骸骨に涙腺があったら涙を流すレベルで感激している。
「ワルキュラ様。跳ね橋を燃やすのは……ダメなんですか?
普通にタイマツで放火できますよね」
「ぼ、防衛の判断はデスキングに委ねた。彼なら最善を尽くすはず。
(デスキングっー!お前、名将なんだろぉー!?
早く跳ね橋燃やせぇー!うわぁっー!敵軍が近づいてきたぁー!
司令官がいちいち、細かい事を命令してたら現場が混乱するしっ!どうすればいいんだぁー!?)」
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この話のコメントまとめ
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c13.html
【内政チート】「機械化にはゴムが必要なんだよ!」 By20世紀のアメリカ
http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/by20.html
【小説家になろう】 金正日「主人公補正なしで新政策やりまくった結果!」300万人餓死の乞食国家に
http://suliruku.blogspot.jp/2016/03/300.html
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ゲーム時代
スケルトン(´・ω・`)逝くぞ!暗黒魔法でランドウォーリアシステム!(歩兵達が情報を共有して便利なシステム。現実だと電気を消費しすぎるのが欠点)
プレイヤー(´・ω・`) (´・ω・`) さすがゲームだ・・・・
現実の米軍が開発して運用に困っているアレを使えるなんて・・・
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