リアルアカウント ~another story~
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account 5 隙有り~♪
「……あいつ、本当になんなんだと思う……?」
「わ、判んないわよ……、そんなのっ」
1人、1人が 彼の行動を逐一見てしまうのも無理はない。異常な状況が起こった上に、突然異常人が現れたらもう仕方がない。一周回って、冷静になれると言うものだ。
ただ、マーブルの表情? が明らかに優れてないのは、溜飲下がる思いだと言う事は皆が同じである。何せ、人の命をなんとも思ってない化物。
この世界で何人も死んだ。
直接手を下したのは最初の1人かもしれない。
だけど、どうやったのか判らないが、直接手をくださずに、ルールを作り 人を殺す事が出来る。まるで質の悪い漫画や映画の中に放り込まれた気分だといえる。
そんな中、気を取り戻したのか判らないが、突如テンションが高い声が響いてきた。最初にやり合っていたマーブルが姿を消したかと思えば、もう1人現れたのだ。
「はいどうも~~~、さっきは妙な事があっちゃって、白けたみたいですがー、ここからは、このマーブル6号! マーブルの分身である、6号の私が、第1ゲームの司会を務めs「おっ!? つまり、こんな感じか? ふむむ~~、つまり~……、ええっと、なんって読むんだ……? ああ、成る程、こうやって調べたら……」………」
突如、大声で話に紛れ込むのは、先程の要注意人物。
だけど、さっきまでの? マーブル司会が無視する、と宣言した様に 6号とやらも、一瞬だけ、言葉を詰まらせたようだが、直ぐに調子を取り戻し、続ける。
そう、続けようとしたのだが……。
「ええっと~、6号の私が、司会を務めさせてもらいm「ふむふむ。成る程成る程~~この力コピったら バリエーション豊かになるジャン。面白そうジャン?」……………………」
明らかに狙ってる感じが、この辺りからしたんだろう、と言う事は判った。
皆白け出してしまって、マーブル自体もおちょくられているのが判ったんだろう。
そんな感じなので、しばらくして……。
「ゴラァァァ!!! 進行妨げんじゃねぇぇぇぞぉぉ!!!! てめぇぇぇ!!」
ついに、6号さんが、キレてしまった様だ。
だが、それも仕方がない。
何せ、あの後 かれこれ、5回目なのだから。
だから、盛大な講義と共に、実力行使と言わんばかりにあのしなって伸びる腕を振るうのだが……。
「ええっと、こーか! 試し打ち、って事で……、《熱い鞭の糸》~~!」
「ぷげらっっ!?!?!?」
これまた、彼の手の先から、燃える様に赤い何かが飛び出てきたかと思えば、鞭のように撓って、マーブルを吹っ飛ばしてしまった。
周囲も当然ながら唖然とする。何よりも、その力は見覚えがあるのだから。最近、アニメも漫画に近づいてきているから……実際に動いている場面を見た事ある人もいる。
完全出鱈目な力。――二次元的な力。
―――で、でも……やっぱ、それ使うのはまずいって……。
と、今回は一瞬だけ思った様だが、別に誰も突っ込まない。
マーブルが何かを仕様としていることはわかる。そして、それが人の命に関わるであろう事も明白だ。なら、あの男が盛大に暴れてくれて、全てが有耶無耶になってくれれば助かる。と、冷静に考えている者もいたり、 中には、はやし立てようと、何度も歓声を上げたり、声援を送る者達も沢山いたりした。
その声援に応える様な事は男はしなかった。
「ん? さっさと始めろよ」
ぶっ飛ばしたマーブルを見てため息を吐く姿を見たら……被害者側も、置かれた境遇を考えれば、歓声の1つでもあげたいと思えるんだが……それでも、多少なりともムカつく気持ちがあるのはどうしてだろうか?
「お、お前がぶっと……こほんっ! ええ~~、次のステージですが~~」
相手にするのは間違い。
と言う事は先程の攻防で十分に身にしみた様なので、気にせずに先へと続けた。男もニヤニヤと笑ってはいたが、それ以上は何もしてこない様だ。
「え~、画像! 皆さん、スマホの中にはどんな、画像、入れてますか~?」
男の妨害もなくなった今、淀み無く次の話が始まってしまった。
落胆の声が響く中、ちゃんと《ゲーム》の説明を頭に入れようとする者ももちろんいた。
ここで、1名を上げるとするなら、当初 場の皆を止めた男。あの異常な力を持つ男に助けをこおうとした複数のプレイヤー達を止めた男、《向井ユウマ》である。
でも、……あれだけ 男がいじり倒していたら、深刻な状況に思えないのだろうか? マーブルがいろいろと 弄られていた時、《相互フォロー》でパートナーとなった。文字通り生死を共にしたパートナーとなった、《上條あやめ》とひと悶着あったりしていたのだ。
『さっきのは、正直驚いちゃったのは事実だけど、あたし、あんた個人に、なんのキョーミもないからー!』
と、互いの事を少しでも知って、上手く連携を取ろうとしていたのにも関わらず、ムカつく言い方で、拒否されてしまったのだ。あの異常人物について、お互いに驚いていた筈なのに、それも否定。『勝手に自分が騒いでたんでしょ』と一蹴されてしまった。
いろいろと腹が立つのだが、今は集中させていた方が何倍も良い、と言う事で、彼はマーブルの話に集中した。
そして、始まったのが『悪いいね! ゲーム』である。
リアルアカウントのコンテンツの1つである『アルバム』で、画像をリアアカ内で公開出来る。公開された時、その写真画像を見た閲覧者が、『いいね!』と思ったら、、ぽちっと押して、その気持ちを気軽に伝えられるのだが、ここでマーブルがプレイヤー側達に訊いた。
『それは 本当にいいね! と思っているのか?』 と。
義務的だったり、なんとなくだったり、……つまる所、『自慢写真』や『善人アピール写真』など、本当は『うぜぇ』と思ってないか? と人間の本心に迫る質問を投げかけたのだ。
それは誰しもが、心の中では想っている事だろう。
繋がっている相手が、仲良し友達だけとは限らないのだから。
そこで、肯定することしか許されなかったのを、次の『悪いいね! ゲーム』で検証するとのことだ。
――本当に『いいね!』と思っているのか? 本心では『悪いいね!』と思っているのではないか?
それらが、今回のゲームで全て明らかにされる。
「ってな訳で、ルールは簡単ですよー、まず1人ずつステージに立ってもらい、その後スマホの中から、画像一枚がランダムで選ばれてモニターに表示されます~! んで、あなたは、他の人達に、『本当はどう評価されているのか』を予想して、ステージ上にある、ボタンを押してもらいまーす」
マーブルがさす先にあるステージでは……、『いいね!』 と言うボタンと『悪いいね!』と言うボタン、そして スマホを入れる台が備え付けられていた。
「審査員は現実世界の皆さんですよー。なんにも危険はありませんので、奮ってど~ぞ!」
マーブルは、画面に向かって指をさした。
現実世界はこちら側カラでは見えないが、大部分の人間が興味を持っているのは予想がつくものだ。安全圏にいて、楽しむ様な演出をされたのだから。
そして、何よりも大切なのがここからだ。
「えー、本人の予想ボタンと審査員の評価が、一致すれば、クリア~!! でも、もしも外したら………、即死亡。もち、フォロアーも! なので、注意してね☆」
『っっ!!!』
その言葉に当然ながら、場がどよめいてしまう。
フォロアー診断でせっかく助かったと言うのに、また危険なゲームをさせられるのだから、当然だ。だから、急いでデータを消そうとする者達が増えだしたのだが……、それは出来なかった。
「あったりまえでしょ~?? ゲーム中は、データなんか消せませんよー! ってな訳で、ゲームスターt「ちょ~っと良いか??」ぶっ!?」
ゲームスタート宣言をしようとした瞬間、顔面に何かが当たって、思わずのけぞってしまったマーブル。先程暴れた時に出来た残骸だ。
「オレさぁ~、いや この男って言った方が良いのかな? ま、どーとでも良いけど、ケータイ、スマホ、ってヤツが結構苦手らしくってよ~。画像データとか無いんだわ。そういう場合、どーすんの?」
「むぐぐぐ……ま、またオマエか!」
「いーから答えろって。プレイヤーからの質問には公平に答えてもらわないとさぁ? ……んで、画像無いと、無理なんだろ? オレ、退屈ジャン」
ふぁぁ、とあくびをする男。
それを見たマーブルは、被り物をしているのにも関わらず 表情が明らかに真っ赤にさせてるであろう程、身体を震わせていた。
「オマエは、何やっても死なないんじゃ、全部ヌルゲーになるだけだ!! 画像なんか、その辺のテキトーに取ればいいじゃねぇか!! 消せないが、追加はできんだよ!!」
「おお、な~るほど。ふむふむ……」
男は、ケータイを色々と確認をしていた様だ。
その一挙一動の全てが不快に見えるのだろう。マーブルは足踏みを続けていた。
「ま、これなら 傍観してた方が楽しめる……かな? あいつも判った筈だし」
そして、その後……男の身体は 何故か光に包まれたのだ。
光の発生に、周囲のプレイヤー達はもちろん、マーブルも自らが主催するゲームそっちのけで、光に注目――、そして 光が消え失せたかと思えば……その容姿が変わった。
「……って、このタイミングで!? えええ、そ、そんな無茶苦茶なっ!!??」
姿を変えたかと思えば、突然動揺しだしていた。
姿形が完全に変わっている。先程、巫山戯ていると言うのに、肌を突き刺す様に感じた威圧感も今は全くない。
――ただの、人間。
そうしっくりくる。
「……………」
マーブルは、表情が見えないと言うのに、どういう顔をしているのか、よく判る。
それを感じ取ったユウマは、恐る恐る声を掛けた。
「な、なぁ…… お前は今は……、ふつう……の?」
「も、もうっ!! 勝手に身体動かし回したかと思ったら、今度はそんな勝手な……っ」
話しかけるのだが、傍から見たら、盛大に独り言を言っている、見えない何かと、言い争っている完全に危ない人になってしまっている様だ。
「これがチャ~~ンス! ってヤツ、デスカネ♪」
ぎらっ! とマーブルマスクの奥にあるであろう瞳が光った気がした。
すると、あの何人も貫き、死に至らしめた 伸びる殺人の手が再び撓った。
うねりながら、独り言を続けている彼の方に伸び……、1秒もしなう内に、貫いてしまう。
「っっ!!??」
貫かれたことに、当然遅れて気づく彼。
「なっ……!?」
ユウマ諸共、貫かれるのか? と思ってしまったが、彼に当たる寸前で止まった様だ。
「ほっほ~~、おバカさんですね。一時、休憩のつもりだったんですか~? アナタの妙な力、はっきり言って訳が判りませんが、今はふつうの人間でしょ? じゃなきゃ、さっきまではサラっと躱してくれてたのに、随分あっさりと。こ~んな簡単に当たる訳ないですもんね~??」
伸ばした腕を、戻すマーブル。
鋭利な手刀の先端を、返しの様に折り曲げている為、彼の身体も同じく引き寄せられてしまう。ぼとぼと……、と大量の血を撒き散らせながら。
「これで、平和なリアルアカウントの世界に戻れますねぇ? おバカなバグが消えてくれて、せーせーしますねぇ~」
ニヤニヤと笑いながら、もう事切れているであろう、彼を緩やかに左右に振り回していた。
『い、いや……っ』
『う、うわぁぁぁ……!?』
当然、その返り血は、周囲に舞い散るから、回りにいた人間達も悲鳴を上げていた。
ただ、悲鳴の理由は、それだけではないだろう。
何故なら、この中で唯一マーブルに抗える。……いや、圧倒できる男だったから。
本人はやる気はなく、気まぐれな性格、こちら側の味方だとは、到底思えなかったけれど……、彼が楽しめば楽しむ程、被害はマーブル側になっていっていた。
だから、ひょっとしたら、助かるかもしれない、と言う期待があったのだ。
それが、あっさりと奪われてしまい、残ったのは、理不尽なゲーム。最悪のゲームだけとなり、思わず悲鳴を上げてしまったのだ。
そんな中で、笑い声を上げ続けるのは、マーブルただ1人。
もちろん――、その笑みが長く続く程……彼は、じっとはしていない。
楽しむ為に――この世界へと来たのだから。
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