とある地下の暗密組織(フォートレス)
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第1話
ep.009 『赤く染まる幼い少女編 7』
「先日ぶりだね、叶くん。」
小さく幼い体から、立前の声がする。
「は?」
と、少し気が抜けそうな声を漏らすと、少女が腹の上で現状の説明を始めた。
「あ~、私の声が何で聞こえるのかとか聞きたいんだよね?」
と、首辺りに手をやりながら言う。
「それはね、なんとこの子私のお姉ちゃんなのだ!」
と、エッヘンと胸を張り両手を腰に当てる。
(うん、知ってた。)
「まあ、そんなに無い胸を張られても意味がないので、とりあえず続きを説明してください。」
露骨に嫌そうな顔をしてみれば、
泣き出す。
「お兄ちゃん、ごめんね。・・・・・・・・・、ごめんね。」
これはずるい。まだ幼い女の子の(姿をした立前さんなんだが)涙を、こんな形で流すなんて。
「ま、それは置いといて。」
(軽いな~。)
と、毎度の流れ。
「今日は大事なことを伝えるために、この子の身体借りてるんだけど」
「あれ、そのこの子の方がお姉ちゃんじゃないんですか?」
と、横やり。
「まあ、身体的にも社会的にも私の方がお姉ちゃんなんだし良いじゃないっ。」
と、またエッヘンとする。
「じゃなくて、大事な事。」
とエッヘン中止して、話を戻した。
(珍しい。)
と思いながらも、話を聞く。
「私、しばらく学園都市・・・・、というか日本から出るから、よろしくね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。は?」
まただ。また立前さんの『意味こそ解かるけど理解できない言葉』が始まった。
「じゃ、そういう事だから、この子との接続も切るね。」
「え・・・・・・・、いや。・・・・・・・・・・ちょっ」
鉄でできた童女が倒れる。その着地点は、夢絶の頭だった。
その鋼鉄の骨格が、夢絶を気絶させる。
掠れながらも目が開く。
「んん・・・・・・、っぐ。・・・・・・、ううぅ・・・・・・・・・。」
目が覚めた。昨日の会話の後、何かあったようだが思い出せない。
起き上がろう。が、身体が妙に重く起こせない。
どうなってるんだ?
見れば、布団の上でがっちりと夢絶の胴を抱く童女の姿が。
「なんだ、昨日のシーちゃんか。」
と、眠気に負け、眠りについた。
目が覚める。時刻は05:10、起きていても叶世ぐらいだろう。
身体がすんなりと起き上がった。
「あれ、シーちゃんは?」
辺りを見回しても、姿がない。
(とりあえずは、起きるか。)
身体を持ち上げ、服を着替える。そして部屋を出て廊下を左右交互に見る。
右、左と交互に見る。やはり誰も起きていないようだ。
グウウゥゥゥ~~~~~~
(とりあえず、腹減ったな。)
右に向きゆっくりと歩き出す。
目指しているのは本来は待合室として使われるはずの場所。今は、家でいうリビングの役割を果たしている。
「やっぱりまだ誰も起きてきてないか。」
ついつい口ずさみながら左へ曲がり、歩き出す。
欠伸を漏らし頭をかきながら、申し訳程度にシーちゃんを探す。
着いてしまった。一応、進みながら見回していたがそれらしい姿は無かった。
「とりあえず腹減ったし、なんか飯でも食うか。」
漁る。傍から見れば、泥棒にしか見えないような光景だ。台所、冷蔵庫と探して、何もないのかと思い、戻ってきた。
椅子に座り、ふと机の上に目をやる。そこには普通に食パンが置かれていた。と言うより見落としていた。
ついつい机の上に何かあるなと思って、どうせ叶世が置いた置物だろうと思っていたが、まさか食えるものだとは・・・・・。
ガチャッ
いつも通り、邪魔が入る。
何処かの誰かではないが、
「不幸だ。」
言葉が漏れた。
目的区は全体的に階段と廊下と部屋だけの作りだから違うが、ここは地下でずっと夜だ。日の出の無いここの住人達は好きな時に目を覚まし行動し、好きな時に眠る。
「誰だぁ?」
叶世がいないという事は、地下の人間だろう。ここら辺りで来るとすれば『GROW』の人間か?
いや、『シ 302』の事で来た地上の人間か?
何方にせよどうせろくな奴が来ないことは分かっている。
「誰だとは人聞きの悪い。お前らが最近こそこそとしているから調査に来たまでだ。」
(・・・・、不幸だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)
この第0学区に置いて一番合いたくない人間が来てしまった。
部屋に入り、夢絶の視界に入る。夢絶には死神の様な女がその目に移った。
真っ黒色のひざ元まである白衣のように見える上着。中にはへそ下までしかないピチピチの黒シャツ。黒ベルトに太ももにも達していない丈のパンツ。右腰からチェーンが逆アーチ形に後ろに伸びている。
その女、矢田 子狂。
支配区の管理者であり、この地下のトップレベルの能力者。そして、『正確性』と言うものにおいて右に出る者はおらず、その能力から人間の姿をした死神とかと影で愚痴られていたりする。
(夢絶が本人のいないところで言い始めたことが起源。)
「それで、お前たちが何かしているはずだが、そのイザコザはもう終わったのか?」
もう見透しているような言い方。それでも彼女は知らない。今回は地下にはなんの関係ないのだから。
「ああ、終わったな。まあ事後処理?、・・・・みたいなのがまだだがな。」
夢絶はやる気のないめんどくさい顔と、寝起きのボサボサヘアーを彼女に見せる事で間接的に「早く帰れ。」と言っている。
「そうか、ならば私は支配区に戻るとしよう。」
彼女にしてはおかしい。いつもはもっと追い詰めるように聞いてくるはずなのに。
「どこかのアホのせいで、地上から人間が来るらしいからセンタービルでする仕事が溜まっているんだ。」
グサリ。
「ああ、一体どこの誰だろうな。 前科もある事だし監禁区にでも突っ込んでやろうか。」
恐怖だ。監禁区にも会いたくない奴らがいるというのに。
入口前。
「まあとにかく、お前は今は何もするな。 叶世にも、今回のイザコザの事後処理までを終わらせたら何もしないように言っておけ。」
「何故だ?」
素直な言葉。
「本来ならお前らが地上と行き来している程度で私が来るはずも無い。そうだろ?」
それはそうだ。本来ならばと言うところに疑問を抱くが、いつもなら全くに来ないな。という事を伝えるための返事。
「そうだな。」
「お前にだけは言っておこう。」
扉を閉まらないように手で押さえながら彼女が言う。
「現状、地下の全管理者が厳戒態勢に入っている。理由は、国際的過激派武装組織指定されている組織『ピースメイカー』が潜伏しているという情報が入ったからだ。」
手を離し、支配区に体を向けて歩き去りながら、
「今のは極秘だぞ。」
扉が閉まる。
後書き
次回で終われます。 (*‘ω‘ *)
あと、遅れてしまってすいません。<m(__)m>
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