ペルなの
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16.報告
「という事もあったらしいです。ただ、現実ではシャドウは出ずに意識が欝に近いマイナス思考になっちゃう程度だったらしいですけど」
「なるほど、やっぱ霧は無関係やなさそうやね。もし、そないな事ができる道具あったら間違いなくロストロギア扱いやなぁ」
「人か物かだね。話を聞いた分にはテレビっていうよりも映像を映すスクリーンが入口になってる感じだから、大きなのを用意すればあっち側から、そのシャドウを連れてくるのも出来るかもしれいない」
「弱いシャドウだったのは様子見以外にも動物を調教するみたいに飼い慣らす必要があって、その都合だったからとか?でもそれだとあんまり数は用意出来そうにはないよね。時間をかけて準備してたならまだいっぱいいるかもしれないけど、倒された分はガジェットみたいに量産してすぐ埋め直すって訳にもいかないだろうし」
彼女が誰々がしたというのをぼかして自分が体験した一年の戦いとイゴールから聞いた霧の戦いについてをはやて、なのは、フェイトの三人に話すと、三人はこの話を疑う事無く聞き入れて可能性を話し合う。
「あの、自分で話しといてなんですけど、かなり荒唐無稽というかありえなさそうな話なのに信じるんですか?」
「ん?そりゃ勿論信じるよ。こっちもそれなりな体験しとるし、仕事が仕事やからな。今更過去に世界の危機が二度起きてたぐらいじゃあ驚きはせえへんよ」
「朱音ちゃんがこういう事で嘘を言うとは思えないしね。貴重な情報を貰ったんだから役立てないと」
「なのはやはやての言う通りだね。こういう前例があったっていうだけでも情報を集める目途がつくから助かるよ。一先ずユーノに連絡して他に情報が無いか調べて貰おう」
彼女がおずおずと聞いた疑問に対して三人の返答は実にあっさりとしたもの。
寝落ちるまで悶々と悩んでいたのが馬鹿らしくなるぐらいに清々しかった。
これは彼女が思っている以上に三人から信頼されており、更には『StrikerS』本編が始まるまでの三人の経験を踏まえれば何が起きてもおかしくは無いと若くして達観するには十分な人生経験を積んでるからこそであるが、当然彼女はそんな事は知る由も無い。
「シャドウについてはフェイトちゃんの言う通りユーノ君に任せるにして、目先の問題としてはあの霧だね。もし相手が遠距離からでも観測する手段があったら狙い撃ちされても避けれないよ」
「ヴィータも報告であげてたね。相手が霧とシャドウを戦力と数えてるなら視界不良をどうにかする方法を持っててもおかしくないし、早々にどうにかしないといけないけど、難しいね」
「せやなぁ。実地検証しようにもあの霧が出るって事はあちらさんが仕掛けてくるって事やし、ヴィータが回収した霧のサンプルも初めからなかったみたいに消えてもた。しょーじき言ってあたしらだけじゃお手上げやね。ここは素直に年長者の意見でも聴きに行ってみるわ」
「あの、霧に関しては解決策ではないですけど少し考えがあります」
「おお!流石は朱音ちゃんやね!」
彼女がなのは等三人が頭を悩ましている霧について発言すると、すぐさまはやてが食いついた。
他の二人も彼女を真剣に見つめて話を聴く態度を取る。
彼女は自分の考えを改めて纏めながら話を始めた。
「まず軽くお浚いするとあの霧は人間や機械では見通せませんが、シャドウはその中で普通に私達を捉えて来ます。これは物質世界と精神世界、本来なら交わらない世界同士の差異によるものだと思います」
「さっきの朱音ちゃんの話にもあった、シャドウは本来別の異層に存在してるって事からの推察だね」
「はい。シャドウは人のマイナス面が集まって産まれる精神生命体と仮定すると、私はシャドウとは別ですが近い存在を知ってます」
「近い存在?」
「あっ!それってもしかして」
「そう、ペルソナです。改めて思い返してみると、霧の中で出したペルソナは大雑把な指示でも的確にシャドウを捉えて攻撃していました。小範囲ですが、ジャック・フロストやジャック・ランタンの様な喋れるペルソナを偵察に出して索敵を行えば、あの時みたく急な遭遇戦は減らせると思います。また霧の研究もペルソナを調べれば霧を見渡す手段が発見出来るかもしれません」
「……うん、確かに言い考えやね」
彼女が出した意見を聴き、はやては難しい顔で考える。
「やっぱり小隊運用では無理がありますか?」
「やっ、それは違うで。確かに朱音ちゃんの協力が必要やから出せる部隊を分けてでの運用は工夫する必要があるけど、全く索敵出来へんかった状態よりも格段な進歩や」
「なら「でもな、ペルソナを検査するっちゅう事は朱音ちゃんが被験者になるって事やで。勿論ウチの手が届く範囲なら朱音ちゃんが不快になる事はさせへん。けど、あたしの立場でこういうのもなんやけど時空管理局、特に上は万魔殿みたいなもんや。この際言うけど、朱音ちゃんの帰還手続きがこないにも遅れ取るのはペルソナ能力っちゅうレアスキルをデータだけでも欲しがっとる連中が上にいるからやとあたしは睨んどる。ここでペルソナのそないな話を出して朱音ちゃんが被験者になったら、ここぞとばかりに建前と強権を振りかざして研究所にでも連れてって何するもんか分からへん。その可能性が低く無い以上は、気安くお願いなんて出来へんよ」
はやてはいつもの人当たりの良い笑顔で無く、真剣な表情で彼女に言う。
だが、彼女も一度出した事をあっさり手のひら返す程素直な子であれば先輩約二名の気苦労も減っていただろう。
「なら六課の方でこっそりやっちゃいましょう。過程はボカして結果だけ報告すればいいじゃないですし」
「でも何処に本部の目があるか分からへんし、下手な現場よか危険なんやで」
「もし相手が本気で私を欲しがったらどんな理由を後付してでもやってきますよ。それなら出来る事はしておきましょう。それにもし相手がこっちを実験動物扱いするなら、きちんと動物の怖さを叩きこむから大丈夫です」
話してる内にエンジンが掛かって来たのか、特別課外活動部の時みたく押しが強くなってく彼女。
そして彼女は現在ペルソナ能力こそ弱体化しているが、‘あの’姉妹に勝ったという実績を持っているのを忘れてはいけない。
ペルソナ能力の影響を受けて最盛期程では無いにしろ、その身体能力はシグナムと訓練という名のガチ戦闘で互角に打ち合うレベルは保持し、召喚器無しでもペルソナを出せるという事を知ってもいるのだ。
そしてこれが一番重要だが、彼女がセットしているペルソナ達はレベルこそ低いかもしれない。
だが彼女がエリザベスやデスを相手にする為に最高のペルソナを求め様々な合体を試行錯誤しながら繰り返してきた事を。
その過程で弱いレベルのペルソナも、強力なスキルを身に付けているのだ。
その彼女が本気で暴れたりした場合、どの様な事になるかは想像に難くはないだろう。
そうして暫く彼女とはやてで押し問答が続くのであった。
後書き
はやてもシグナムとの手合せ時点では朱音の事をちょっと強い時空漂流者としか見てなかったので、ここまで事態がこんがらがるとは予想GUYでした。
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