ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
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SAO編 主人公:マルバ
二人は出会い、そして◆蘇生
第十六話 出会いは唐突で
前書き
シリカとの出会いの章です。
この時を待っていた……!(主に私が)
このフィールドダンジョンに入って既に三時間が経過した。しかし、出口は見えない。
「あーあ、地図アイテムが壊れるなんて考えてもみなかったよ。どうやって脱出しろっていうんだか……」
マルバは大きなため息をつく。
ここは第三十五層の北部にある『迷いの森』。薄暗くてちょうどいいためマルバはここで《隠蔽》と《索敵》の訓練を行なっていたのだが、地図アイテムの耐久値が0になって消滅してしまい脱出できないというかなり悲惨な状況に陥っていた。このフィールドダンジョンはその名の通り、かなり迷いやすい……というより必ず迷うような仕組みになっていて、地図アイテムがなければ脱出は叶わない。そしてマルバはその少し高価な地図アイテムを中古で買ったのだが、なんと耐久値がほとんど残っていなかったのでマルバの手を離れた隙に消滅してしまったのだ。
本来なら出てくるモンスターの心配をするべきなのかもしれないが、マルバのレベルは67ある。第三十五層の敵の適正レベルはそのまま35で、探索には安全をとって45レベルくらいが必要だとされているが、それを実に22も上回っているため、ここの敵は例外なく一撃で倒せるのだ。使い魔のレベルはその主人と同じなので、マルバどころかユキだけでも余裕で勝てるだろう。
しかしそうはいってもトラップは存在する。トラップによるHP減少だけはどんなにレベルが高くても平等に受けるため、マルバのHPは二割近く減ってしまっていた。仕方ない、とつぶやくとマルバはハイディングを発動させる。そのままそこにしゃがみこむと、なんと一心に祈りはじめたではないか!
この行為、格好は悪いが一応ソードスキルである。《瞑想》という不人気ナンバーワンに入るかもしれないエクストラスキルで、効果は取るポーズによって異なる。今マルバがしている、片膝を立ててしゃがみ両手を組む姿勢はその名前を『祈祷』といい、HPが徐々に回復するポーズだ。戦闘中こそ使えないものの、熟練度が500ほどあればハイ・ポーションに匹敵するスピードで回復する、なかなかに強力なスキルである。なにせポーションが要らなくなるのだからストレージにポーションの分だけ余分にいろいろ入れることができるし、ポーション代も節約できるのだ。
ただしこのスキルにも欠点が一つだけある。それは――格好が悪いこと。くだらなく見えるが人の目があるところで使えないため実は非常に困る。だから例え安全地帯でもハイディングしてから使うのだ。
マルバは脱出方法を考えながら祈り続ける。そして、もうすぐHPが全快するというところで……
戦闘の音が聞こえてきた。
《竜使い》シリカは今、絶体絶命の危機にある。全てのHP回復アイテムは既に使いきっていて、残された唯一の回復手段である使い魔ピナの『ヒールブレス』は連続では使えない。更に、せいぜい一度に回復できるのは二割が限界だ。
敵が近づいてくる。この階層で最強レベルの猿人型モンスターではあるが、本来シリカにとって脅威とは成り得ないはずだった。しかし……彼らはなんとHP回復系の特殊スキルを持っていたのだ。三体もいるので一体を倒す前にスイッチされて回復の隙を与えてしまう。シリカはかなり焦っていた。焦りはミスを誘う。被弾を重ね、彼女のHPは黄色まで落ちてしまった。
死の恐怖がシリカの身体を縛った。もはや一歩も動くことは叶わなかった。敵が棍棒を振り上げるのをただ呆然と見る他にシリカができることはなかったのだ。走って逃げればよかった。それができなくても転移結晶を使えば目前の敵から逃走することだけはできたはずなのだ。しかし、圧倒的な死の恐怖を前に、シリカはなにもできなかった。
敵の棍棒が光を帯び、躊躇なく振り下ろされる。シリカは思わず目を瞑った。
しかし……なにか重いものが風を切りなにか柔らかいものに当たったような音がしただけで、彼女の身体を襲うはずの衝撃はいつまでたってもやってこない。おそるおそる目を開けたシリカが目を開けると……
彼女の目の前で、棍棒に吹き飛ばされたピナのHPバーが全損し、光を放ちながら消滅した。
マルバは走る。ハイディングレートがみるみるうちに降下し、0になるとその表示自体が消滅した。少し遅れて彼の足元でユキのハイディングが解け、ぐにゃりと空間を曲げるようなエフェクトと共にその黒い身体が現れる。
戦闘の音は間近だ。先ほどしばらく剣の音が途絶えたためプレイヤーが死んでしまったことを恐れたのだが、今は再び剣の音が聞こえている。しかし、その音は最初に比べかなり頻度を増しており、おそらくそのプレイヤーはかなり無茶な攻撃をしていることがわかる。棍棒が振り下ろされる音も聞こえるのだが、それに対抗する音が聞こえないからだ。
少し開けた場所に出て、マルバの目は、振り上げられた棍棒の下に特攻する、赤く染まったHPバーを持った小さな影を捉えた。
シリカの狭窄した視界には憎むべき敵の姿しか写っていない。既にピナを殺した敵は葬った。他の敵も生かして返さない……小さな少女のものとは思えない獰猛な思考が彼女を支配する。あと一撃喰らったら死ぬ、そんなことも関係なく彼女は棍棒を振り上げた敵に無茶な特攻を仕掛けたが……
眩い閃光が視界を横切ると、彼女が相手にしていた二体の敵が一瞬にして砕け散った。
消滅エフェクトの向こうに見えた少年は驚いたような目でこちらを見つめている。そのことを確認することもなく、シリカはその場に崩れ落ちた。
「私を独りにしないでよ、ピナ……!」
マルバが敏捷性パラメータに物を言わせてかなりのスピードで放った『円月斬』は当然のように二体の敵を斬り飛ばした。バシッという乾いた音と共に円月輪を回収すると、マルバは自分が助けたプレイヤーの小ささに目を見張った。
地面に倒れ伏して嗚咽を漏らす少女の近づくと、その手に握られた小さな羽根が目に入る。その瞬間、マルバは全てを悟った。彼女もビーストテイマーだったのだろう。
「ごめんね、もうちょっと早ければ君の友達も助けられたと思うんだけど……」
マルバはそれしか言えない。
彼にとってもユキはなくてはならない存在だ。特にソロのマルバはユキの戦闘能力より彼女がそこにいることでもたらされる暖かさにずっと助けられてきた。孤独に戦う時も絶体絶命の時もずっとそばに居てくれた彼女に何度助けられたことか。マルバはそんな半身とも言える存在を失った悲しみを予想できなかった。
「ほんと、ごめん……」
「……いいえ……わたしがバカだったんです……。ありがとうございます……助けてくれて……」
マルバはゆっくりと少女の前に跪き、その手の中の小さな水色の羽根を見つめた。羽根、ということは飛行型モンスターだったのだろう。
「その羽根……アイテム名って設定されてる……かな?」
遠慮がちに尋ねたマルバの問いが予想外だったらしく、少女は涙を拭くと戸惑いながら軽く羽根をタップした。ウィンドウが開き、その重量と名前が表示される。
《ピナの心》
その表示を見ると、少女は再び泣き出しそうになる。それと対照的にマルバは安堵の溜息をついた。
「よかった、《心アイテム》が残ってれば蘇生が可能だって聞いたよ。」
「え!?」
少女が顔を上げて驚いた目でマルバを見つめた。マルバは手帳アイテムを取り出すと、中の情報を見ながら言葉を続ける。
「信頼できる情報屋で買ったから確かな話だと思うよ。第四十七層の南にある、《思い出の丘》ってフィールドダンジョンの最も奥で採れる『プネウマの花』が使い魔を蘇生させるアイテムだって……」
「ほ、ほんとですか!?」
マルバの話が終わらないうちに少女は叫んだ。その目に希望の光が灯る。しかし、次の瞬間、なにかに気づいたようにその光は掻き消えてしまった。
「四十七層……」
装備から、そしてこのダンジョンにいることから察するに彼女は中層プレイヤーなのだろう。だとすればレベルはせいぜい40台前半のはずだ。四十七層に挑戦するにはレベルが低すぎる。
「情報、ありがとうございます。……今は無理でも、いつか……必ず……!」
ふらふらと立ち上がりかけた少女に、マルバの残酷な一言が降り注いだ。
「それが……使い魔を蘇生させりことができるのは、三日間だけ、らしいんだ……。しかも、使い魔を亡くしたビーストテイマー本人でないと花を採ることはできないらしい。」
「そんな……」
少女はその瞳に絶望の色を浮かべ、再び地面に膝をついてしまう。
マルバは跪いたまま、彼女の肩に左手をおいて言った。
「大丈夫、僕が手伝ってあげる。」
そういうやいなや、少女の視界にトレードウィンドウが開いた。驚いて少年を見つめると、彼はその右手を操作して次々とトレードウィンドウに装備品を移していた。
《軽防具:『ブルーアローイプレート』》
《副防具:『鈍光』》
《追加防具:『フェザーリィ・ウェリントン』》
《追加防具:『豪腕の腕輪』》
レアアイテムが多いのだろう、シリカが見たことも聞いたこともないようなアイテムが並ぶ。唯一知っているのは『豪腕の腕輪』というアイテムで、筋力値がぐんと上昇する競売にかければ高く売れるはずの準レアアイテムだ。
最後に少年は自分の左腰から鋭い輝きを持つ短剣を抜くと、鞘も外し、鞘ごとストレージの中に突っ込む。そしてそれもトレードウィンドウに移した。
《武器:『ブルークオーツスライサー』(短剣)》
「これで6、7レベルは底上げできるんじゃないかな。僕も一緒に行くよ。これだけあればなんとかなると思う。」
シリカは少年を見つめた。その口調や背格好から察するに、高く見積もってもせいぜい十八歳程度の少年だ。この層で最強のモンスターを一撃で葬った攻撃から考えると相当なハイレベルプレイヤーだと予想できる。
そして、シリカはそんな少年の真意が分からず、警戒してしまった。《甘い話には裏がある》のがSAOの常識である。
「……どうして、そこまでしていただけるんですか?」
うーん、と唸ってから、彼は口を開き、
「僕もさ、こいつを失ったら生きていけないからさ。」
そういっていつの間にかすぐそばにいた黒いウサギを抱き上げた。
「こいつ、ユキっていうんだけど、第三層からずっと一緒にいるんだよ。この世界でずっと僕を支えてくれたパートナーって感じでさ。君にとって同じような存在がいなくなってしまったのなら、その子を助けてあげたいなって思って。」
それから彼は少し躊躇してから、こう付け足した。
「それに……君の雰囲気がなんかその……妹に似ててさ。ほっとけないもんだから……」
思わず笑ってしまったシリカに、少年はバツの悪そうな顔をした。
「笑わないでくれよ……」
「ごめんなさい、でもおかしくって……!」
ひと通り笑うと、シリカは涙を拭ってからマルバに向き直った。
「ありがとうございます。それじゃ、これからしばらく、よろしくおねがいします。助けていただいたのに、その上こんなことまでしていただいて……あの、こんなんじゃぜんぜん足りないと思うんですけど……」
手持ちのコル全てを入力するが、少年はそれを受け取らずにOKボタンを押してしまった。
「いいよ、僕にはいらないものだったから。悪いんだけど、『豪腕の腕輪』と『ブルークオーツスライサー』は君の友達が還ってきたら返してくれないかな、僕も使うから。」
「もちろんお返ししますが……その短剣、装備してましたよね?使うんじゃないんですか?」
「ええと、僕にはこれがあるから。」
少年は右腰の円盤状の見たことのない武器らしきものを取り出してシリカに見せた。
「……?」
「見たことない?チャクラムって武器だよ。投げて使うんだ。」
「投剣なんですか?見たことないです。」
「二層の攻略ではかなり活躍したって聞いたけど、そんなに広まってるわけじゃないしね。」
ふうん、とシリカがしばらくその武器を眺めている間にマルバは今更ながら尋ねた。
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったね。僕はマルバで、この子はユキ。しばらく、よろしくね。」
「あ、すみません!わたしはシリカです、よろしくおねがいします。」
「シリカ……?どっかで……あ、『フェザーリドラ』の主人か。ピナっていうんだっけ?」
「そうです、ピナです。現実で飼ってた猫と同じ名前なんですけどね。」
「そっか、それじゃなおのこと早く蘇生させてあげないと。僕も見てみたいからね。」
マルバは立ち上がると、何かに気づいたように急に声を上げた。
「……あ、そうだ。助ける代わりといってはなんだけど……、地図アイテム壊しちゃったもんだから出られなくて困ってたんだ。道教えてくれない?」
「……私も持ってなくて迷ってたんです……」
「……ええと……じゃあ、どうやったら出られると思う?」
「……地図アイテムなしだと脱出はほぼ不可能です。一分以内に各エリアを走り抜ければいいらしいんですが、私はそんなに速く走れませんでした……。」
「一分以内、か。弱ったな、僕一人だったら無理じゃないかもしれないけど……」
「そう、ですか……。足手まといですみません。シーフ役なんだからせめて《探索》スキルを持ってればよかったんですが、武器スキルの他は《隠蔽》とか《索敵》とかで埋めてしまったので……」
「……?《探索》があれば抜けられるの?あれって方角がわかるだけじゃない?」
「はい、このダンジョンは一分ごとに四方の連結が入れ替わるので同じ方向に進んでも脱出することはできませんが、《探索》さえ持っていれば同じ方角に進み続けることができますから。ちなみに、北が出口です。」
「そっか。それならユキに付いて行けば出られると思う。それじゃ、ちょっと走るよ。……ユキ、北だ。行くよ!」
マルバはそう言うと小走りに走りだした。ユキが先行する。シリカは慌ててそれを追いかけた。
そして第三十五層主街区。
「よかった、無事脱出できましたね!」
「ほんとによかった。あのまま出られないかと思ったよ……。」
「迷いの森って名前は伊達じゃないですから、中で遭難した人もいたらしいですよ。たまたま出くわしたパーティーが救出したって聞きました。」
「……君がいて助かったよ。僕一人じゃ脱出の方法が分からなかったから……。」
「……助かったのは私の方です。本当にありがとうございました。」
「いいっていいって。」
雑談をしながら歩く二人の前に急に数人の男たちが現れて進路を阻んだ。マルバが何事かと思っていると……
「シリカちゃん、フリーになったんだって?よかったら俺たちとパーティー組もうよ、パーティー。」
シリカは困ったようにマルバを振り返ってから、丁寧に断った。
「お言葉はありがたいんですけど、この人とパーティー組むことになったので……」
男たちはじろりとマルバを睨んだ。思わず一歩下がるマルバ。
「あんた、抜け駆けはやめてくれないか。俺たちはずっと彼女の声かけてたんだぜ。」
「いや、そんなの知らないよ……。それに、僕は彼女をある場所に連れてく約束をしたからね、譲るつもりもないよ。」
その言葉を聞くとさらに男たちの視線の疑惑の色が更に濃くなった。じろじろと全身を見ているのは装備からレベルを推し量っているのだろう。
「ある場所……?」
「企業秘密ってやつだよ。」
「企業秘密……?怪しいな、お前、見たとこそんなにレベルも高そうじゃないのに、シリカちゃんをどこに連れてこうっていうんだ。」
「なんか嫌な聞き方だね。だから企業秘密だって言ってるじゃない。」
押し問答になりかけるが、シリカがそれに割り込んだ。
「あの、あたしのほうから頼んだんです!すみませんでした!」
シリカがマルバの袖を掴んで引っ張ったので、男たちもそれ以上言えずに恨みがましい目で二人を見送った。
「すみません、嫌な思いさせちゃって。」
「大丈夫、大丈夫。人気者なんだね、シリカさん。」
「シリカでいいですよ。――そんなことないです。マスコット代わりに誘われてるだけですよ、きっと。それなのに……あたしいい気になっちゃて……一人で森を歩いて……あんなことに……」
マルバはそれに対して微笑んで言った。
「大丈夫、きっと生き返られてみせるから。」
シリカもそれを聞くと安心したように笑った。
シリカの定宿、《風見鶏亭》が見えてきた。
「あの、マルバさん、ホームタウンはどちらに?」
「今のホームタウンは例の四十七層だけど、今日はここに泊まろうかな。」
「そうですか!ここのチーズケーキってけっこういけるんですよ!」
「へえ、それはいいね!甘いの好きだからさ、新しい街につく度に食べ歩きしてたんだけど、チーズケーキはまだ食べてないんだ。」
「マルバさん甘党なんですね。ちょっと意外です。」
言いながらマルバの袖を引っ張って宿に入ろうとすると、中から出てきたパーティーとすれ違った。何故か一人のメンバーがこちらにやってくる。それはシリカにとって最も会いたくない人であった。
「あら、シリカじゃない。森から脱出できたんだ。良かったわね。でも残念ね、もうアイテムの分配は終わったわよ。」
「要らないって言ったはずです!――急ぎますから」
マルバの服の裾を更に強く引っ張り、シリカは宿屋に入ろうとするが、その女性は後ろからさらに言葉を投げつけてきた。
「あら、あのトカゲ、どうしちゃったの?」
「ピナは死にました……でも、必ず生き返らせてみせます!」
いかにも痛快という様子で笑っていた女性はその笑みを引っ込め、値踏みするような目でシリカを、そしてその手が引っ張っている服の主であるマルバの方を見る。
「じゃあ《思い出の丘》に行く気なのね。あんたのレベルじゃ無理じゃないの?」
「……ッ!」
そこでマルバは一歩前に出ると、その女性と対峙した。
「できるさ。独りじゃ無理かもしれないけど、僕がいる。二人いればなんとかなるでしょ。」
「へえ、アンタもその子にたらしこまれちゃったの?」
「生憎とそういう訳じゃないんだな、これが。シリカ、行こう」
マルバはその場で振り返り、今にも泣き出しそうなシリカを女性の視線からかばうようにして宿屋に入っていった。
「ごめんなさい、嫌な思いさせてしまいましたよね」
「いいんだ、気にしないで。君のせいじゃない」
マルバはNPCに注文を告げ、シリカを慰めた。
「腹が減っては戦はできぬ、って言うし、まずは食事済ませよ、ね?」
ちょうどそのタイミングでウェイトレスが温かい飲み物を持って来たので、勧められるままにシリカはそれを一口飲む。
「……おいしい……!あの、これは……?わたし、こんなの飲んだことないんですが……」
「NPCレストランって頼めば持ち込んだボトルも出してくれるんだよ。おいしいでしょ?ホットジンジャーだよ。現実世界で僕が好きだった飲み物なんだけど、こっちでも作れないかなって思ってさ。いろいろ混ぜてたら偶然できたんだ。簡単で安価なくせになんと『幸運』のバフが付く効果があったりして、ダンジョンで飲むと身体も心もバフ枠もほかほか」
「自分で作ったんですか!それじゃ、《料理》スキル上げてるんですか?」
「うーん、積極的に上げてるわけじゃないけど、けっこう昔に取ったから今450行ったところくらいかな。難しいのは無理だけど、これくらいなら楽勝だよ。」
二人は運ばれてきた料理を談笑しながら食べ、親交を深めた。そして最後に運ばれてきたチーズケーキはマルバの新たな好物となった。
シリカにとってマルバは相変わらず謎が多い人だったが、料理のことや使い魔のこと、この世界での冒険について話すうちに彼女はマルバの優しそうな人柄に惹かれていた。彼は彼女よりもずっといろいろなことを知っていて、彼が語る世界は彼女が生きる場所とはどこか違うようにさえ感じられた。彼の話す冒険はまるで自分の全てをかけてこの世界に立ち向かおうとしているかのようで――。
シリカはマルバが生きる世界を知りたいと思った。
一方で、マルバは知り合ったばかりのビーストテイマーであるシリカの冒険を聞くことをとても楽しく思っていた。中層プレイヤーである彼女はマルバよりもずっと強くこの世界を『生きている』ような感じがしたのだ。攻略こそを生きる理由とするマルバとは違う理由で彼女はこの世界で生きていた。なんの目的ももたずに――いや、本当にそうなのだろうか?
マルバは彼女の真剣な瞳が捉える世界を知りたいと願った。
二人の生きる世界は異なり、それ故に二人は互いの世界を知りたいと思う。
攻略組のマルバ、中層プレイヤーのシリカ。ここから始まる物語は一体どのようなものなのだろうか――。
第三部 【二人は出会い、そして】
――Link start――!
後書き
さて出てきました不人気エクストラスキル《瞑想》。
カッコ悪いけど素敵な効果があったりなかったり。地味ですけど役に立つことはあると思います。基本スキルの『瞑想』が一番素敵ですけどね。デバフからの回復時間が減るってなんてナイス。麻痺毒には使えないですけどね。ポーズ取れないですし。
はい、恒例の裏設定コーナー。
《瞑想》スキル。格好が悪い、地味、でも効果は高い。惜しいのはそれだけでスキル枠をひとつ消費してしまうことですね。マルバは《料理》と《瞑想》を使う時に合わせて切り替えて使ってます。スキルの切り替えができるのは原作設定にありました。《二刀流》スキルが最初に出てきたとこに載ってます……多分。
また次回出そうかなと考えているスキルはオリジナルの《音楽》スキル。完全に趣味スキルです。出す理由?私が歌うのが好きだからです。合唱やってます、はい。歌うの楽しいですよ。
SAOにいかにもありそうなスキルだと思うのですが……どうでしょうか?
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