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RSリベリオン・セイヴァ―

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RSリベリオン・セイヴァ―外伝SHADOW 四話「初戦」

 
前書き
バトルシーンあります。弾の秘密もあります。 

 
メガロポリスにて

「うひょー! やっぱ、メガロポリスは想像以上に凄いぜ!?」
目の前ではしゃぐ大剛を背に、ブツブツと初恋相手への台詞を考える玄弖に、暗い表情を続ける弾の姿があった。
「なぁ? エリア20行く前に何か食って行かないか?」
大剛が近くのファーストフード店へ指をさすが、二人はそれどころじゃなかった。
「二人とも! 聞いてるのか?」
「あ、ああ……すまん。で? どこで飯を食うって?」
気付いた弾は大剛にもう一度問う。
「ファーストフードでも食う?」
「ああ……ん? ファーストフード? 高いからやめておけ? 近頃は、海外の輸入が乏しくなったんだ。今出回っているのは国産が大方だよ?」
現在、世界各国の農業地は各地で激しく起こるテロやレジスタンスによる戦争に巻き込まれ、飼育されていた動物、米や小麦粉などの多くが死に絶える事態へ陥っている。
これに対し、各国では食糧飢饉に悩まされ、アウター地区に住む貧困層の民間組織による工場への襲撃が相次いでいる。そんな状況下で他国へ輸入するなど持っての他であった……
よって、日本でファーストフードを手軽に食べられると言ったらか上流家庭に近い人間達ぐらいだろう。
「出来るだけ値段を下げてはいるものの、安くて普通のハンバーガーが400円もする。それなら、下町の大衆食堂の方が千円内で腹いっぱい食えちまうぜ?」
と、弾。やはり、元は食堂の息子、意地のようなものがまだ少なくも残っていたようだ。
「じゃあ……その、大衆食堂へ行ってみるか?」
大剛は、試しに弾に勧められて、玄弖を引っ張って大衆食堂のある下町エリアへ向かった。
「ええっと……ここだ!」
しばらく歩くと、人ごみで埋め尽くされていた大通りから家々が立ち並ぶ幅の狭い道になり、そこを歩いていくと、弾はお勧めの大衆食堂へ指を向けた。
やや、鄙びた小さい食堂だが、それでも中から漏れる美味そうな匂いは三人の食欲を仰いだ。
――懐かしいなぁ……?
小さい頃、よくこの店で飯を食いに行ったと、幼き日の思いでに慕っていると、背後から聞こえた大剛の声が弾を振り向かせる。
「なぁ! こっちのほうが安いぞ?」
「えっ?」
弾が振り向くと、そこには自分に取って忌まわしい「のれん」が目に飛び込んでくる。
「五反田食堂……!?」
まさか、いや……そんなはずはない! この食堂はここから二キロも離れたエリアにあるのだ。
――まさか……移転したのか!?
「おお、ここ安いじゃん? 大剛、入ろうぜ?」
モゴモゴするのをやめた玄弖は、大剛と共にこの「五反田食堂」と書かれたのれんを潜ろうとした。
「おおーっとぉ!! 待ったァ!?」
それを全力で回避して二人の前へ立塞がる弾。
「ど、どうしたんだよ? いきなり……」
「こ、ここはダメだ!」
「は? ダメって……ん?」
すると、大剛はふとのれんを見上げた。
「五反田……? お前と同じ苗字だな? え!?」
「「……」」
すると、一斉に大剛と玄弖は弾をじろりと宥めた。
「こ、こ……これはだな!?」
「弾、お前さ? 確か食堂が実家って……」
「そうだったな? もしかして、この家が……?」
二人に問われてお早逃げ場のない彼は思い切って叫んだ。
「ああ! そうだよ!? 俺がいた食堂だよ!?」
白状したのか、弾は暗い表情になる。
「別に隠す必要はないだろ? 立派な食堂じゃないか? 隣に自販機もあるし?」
「そうだよ? あ、この店からも美味そうな匂いがしてきたぞ? 入ろうぜ!」
大剛が涎を垂らして再びのれんを潜ろうとしたが、弾が叫ぶように怒った。
「何が美味そうだ! こんなシケたゴミクズみてぇな店なんざ、豚の餌しかでねぇよ!?」
「だぁれが豚の餌じゃ! 戯けぇ!!」
すると、弾の背後からガラガラと引き戸が開いて、弾と同じ姿をした老人が勢いよく出てきて弾の脳天へ拳骨をかました。
「いってぇ~……!? じ、爺……?」
「けっ! どこのチンピラかと思ったらドラ孫のオメェか!?」
「クソ爺……テメェ、まだくたばっていなかったのかよ?」
「ふん! 蘭をIS学園へ入れさせるまで、わしゃ死にゃせんわい!!」
「あいかわらず孫娘にはアホみたいに甘いな? めでたい老いぼれだぜ……!」
「なにを……!? こんのバカ孫が!!」
「おう! 今ここで爺を生け造りにしてやんよ!!」
と、弾は頭に血が上って、巨大な斧のRS「斬兒(ざんげ)」を展開した。
「落ち着けって?」
玄弖と大剛が慌てて止めに入る。
「ちょっと! お爺? 外で何があったの?」
騒ぎを聞きつけて、一人の少女、これもまた弾と同じ格好をした少女が三人の前に現れた。そして、弾を見て目を丸くする。
「お、お兄……?」
「……」
しかし、弾は彼女から目を背けた。
「お兄なの……? お兄だよね!?」
泣きそうな顔をする少女を目に、玄弖と大剛はお互いの首を傾げた。
話によると、弾はこの五反田食堂の長男らしく、祖父と妹、母親と共に暮らしているらしいが、ある日をさかえに長男の弾が突然蒸発してしまったという。
「ふぅん……弾って、結構伝統ある食堂の息子ってことか? どうしてエリア14なんかに来たんだよ?」
野菜炒め定食をもりもり頬張る玄弖は、その話を聞いている。
「そうさ。どうして、抜け出したんだよ? お爺さんや妹さんも皆良い人っぽいよ?」
焼肉定食をガツガツ食いながら大剛も言う。
「うるせぇ……! 俺はこんな世界に居るのがまっぴらごめんだからよ?」
「あの……」
そこへ、カウンターから弾の妹が顔を出してきた。名を蘭といって常連の間ではアイドル的な少女らしい。
「いつも、お兄がお世話になってます! その……お兄?」
「……」
しかし、弾は黙ったままだったが、代わりに間を置いてから別のことを発した。
「……IS学園へ行くんだってな?」
その一言で、厨房で食器を洗っている祖父の両手がピタリと止まった。
「え? うん、そうだけど?」
「そうか……」
「あ! そうそう? その、IS学園なんだけどね? 私、ISの適性が強く出たの。これなら、問題なくIS学園の試験資格が得られるって?」
「……」
だが、最後に弾は表情を酷く曇らせる。そして、「ごちそうさん……」と、言うとコップの水を飲み干して先に店から出て行った。
「あ、お兄!?」
「「……」」
そんな光景を、玄弖と大剛は黙って見届けていた。
そのあと、二人は食事を終えてカウンターへ財布を取り出したが、兄の友人だからと蘭や祖父がタダにしてくれた。俺たちは深々と頭を下げて礼と言いつつも、先に外で待っている弾の元へ急いだ。
その後は、弾とそれ以上口を利くことはなく、旅費も節約するためにと交通費を削って徒歩で向かうことになった。
休憩を挟みながら、エリア20を目指すがやはり一日ではたどり着くことはできず、一行はある人目のつかない公園を探すと、そこを今夜の寝床にした。
別に彼らにとって野宿など慣れているが、問題なのは警官に見つかって取り調べをされないかが心配だったのだ。
「明日は、早く起きようぜ? 日の出と共に出発ってやつだ」
玄弖が寝袋に潜り込んでそう告げると、すぐさま寝息を立てて寝てしまう。
「玄弖のやつ、本当に呑気だな?」
隣で寝袋に入っている大剛は、この後の難関を気にしながらどうも寝付くことができなかった。
「なぁ、大剛……」
その隣で寝ている弾は夜空を宥めながら大剛へ言う。
「どうした?」
「その……今日俺の食堂で、不愛想な態度をとって悪かったな?」
「何だよ……別に気にしてないって?」
それほど気にはしていないが、それでも弾はこう話した。
「俺が……家族を嫌っているところを見て、不愉快に感じただろ?」
「ああ……でも、別に俺たちが口をはさむような権利はないから」
「でも、見苦しいところを見せちまったな?」
「……なぁ? 弾」
大剛は、効いてはいけないことかもしれないと知っていても、やはりどうしても知りたかった」
「ん?」
「もしよかったら……いや、無理にとは言わねぇ。お前の、過去とか詳しく知りたいなってさ? お前がどうしてエリア14へ来たのか、その経緯が知りたくって……」
「……」
弾は口を閉じてしまったが、しばらくしてから重い口がゆっくりと開いた。
「聞いてくれるか……?」
「ああ、話してみろよ?」
「それは……」

半年前、弾は藍越学園へ向けて親友と共に受験勉強に励んでいた。成績は親友ともに最下位であったが、それでも男として「根性」を引き出して、親友と共に受験勉強を頑張っていた。
しかし、女尊男卑が進むにつれて弾に対する女子たちへの風当たりが次第に激しさを増していき、彼に対する噂は、保護者の五反田家へと広まり、特に妹は兄の嫌な噂を耳にし、それが原因で彼女はクラスメイトから嫌な目で見られることが多くなった。
友人も減っていき、いつの間にかクラスで孤立されつつある状況へと陥ってしまう。
蘭は、この元凶を作りだした兄の弾を激しく嫌うようになった。家でも彼と口を利かないどころか、視線すらを逸らされる。いつも彼の陰口を叩き、そして毎日喧嘩を続けた。
弾は、蘭に嫌われたと同時に祖父との仲の次第に悪くなり、自分にとっての居場所が徐々に失われていったのだ。
そしてあの時、蘭がIS学園を第一志望校に選び、熱意ある理由を聞かされたことで、弾は心の底から妹に対し兄妹の縁を切り、また五反田家との縁も切った。そして、彼は家を飛び出して途方もなくさ迷い歩いたのである。そして、偶然迷い込んだのがエリア14だったというのだ。
時に、行くあてもない彼は適当に寝床を見つけて、しばらく此処で野宿を続けることになった。
しかし、最初はかなり抵抗があった。統括者と言うマッドサイエンティストが影で支配し、その表にはヤクザや野盗やらの組織が仕切っている。
さらには、誘拐され、または迷い込んできた女性を捕まえては性奴隷にする恐ろしい闇市場など、女尊男卑と対なる男尊女卑が支配している街であった。奴隷の中には、蘭と同い年と思われる少女が鎖につながれて連行されていく風景を目撃した。
――本当に、とんでもないところへ来ちまったな?
最初はただ、それしか思わなかった。しかし、彼としては後のこの街の風が肌に会うことになる。
ある日、突如侵入してきたISの部隊との攻撃に巻き込まれ、生死をわけた選択が彼に試されることになる。
すると、そんな戦場の中で彼の目の前でとんでもない非常識な光景を目撃する。それは、今までこの街を仕切っていたヤクザや野盗達が共に力を合わせてISと戦っていた。それも、とんでもない化け物のような怪力と、戦術でISの部隊を圧倒したのである。まるで、漫画の世界に引き込まれたかのように、男たちは鍛え上がられた大柄だ肉体で次々とISを撃墜していく。
そんな中に弾はどうにか生き残ることができた。そして、この戦いで生き残れたことにかつてない生き甲斐を感じたのである。
そして、男の意地とプライドをかけた彼らの戦いに魅了されていた。
その後、徐々に弾はこのエリア14に馴染んでいき、気付けば玄弖や大剛といったジャンク屋仲間と出会って、行動を共にするようになった。

「……と、いうわけだ?」
「ふぅん……いろいろあったんだな?」
「結局、俺は外の世界じゃ不適合な人間だったのかな?」
「……」
「ま、軽く聞き流してくれ? じゃあ、お休み……」
と、弾は先に寝息を立てた。
翌日、玄弖達は早朝に起きると軽く朝食を済ませて旅立った。
「エリア20の目的地へ行くには、モノレールに乗った方がルート的に早い。とりあえず、モノレールの駅を探そう……」
弾が先頭に立ってモノレールの駅へ向かう。
「そういや、前にメガロポリス来た時もモノレールに乗ったな? あんときは興味本意で乗っかったばっかりに酷い目にあったけど?」
「ほう? どういう?」
大剛が最後尾を歩く玄弖へ振り向いた。
「それが? 偶然通りかかったIS学園の生徒。それも中国の代表候補生に案内料として結構金をぼったくられたぜ?」
「ははは……そりゃあ、災難だったな?」
「運が悪かったな?」
「うん……」
モノレールの駅は、偶然にも全か俺が来た時と同じ駅だった。
「あ、此処使った駅だ」
「ここが、一番よく使われている駅だ。平日はよく混んでるが、休日になるとそうでもない」
弾がそう解説しながら二人に切符の買い方と改札口の通り方を説明した。
――そういや、このモノレールでIS学園に行ったんだよな?
もし、IS学園へ入校できたなら、今一度箒に会いたい。玄弖はそう思った。

上空を、数機のISの編隊が上空で浮上していた。彼女らの纏う機体はステルス迷彩で目立たぬよう身を潜めていた。
「ターゲットは、例の量産型の破壊だ……」
眼帯の女隊長が任務を開始する前に内容の確認を部下たちへ促した。
「あの例の瞬間的攻撃は脅威だ。オリジナルと比べて機動力は劣るが、それでも我々にとっては恐ろしい存在になりかねん。ドクター・Tの情報によれば装着者がこの近辺に潜伏しているという。必ず見つけ出して、装着させるまえに抹殺しろ?」
「しかし、何故抹殺を? ターゲットは人ごみの中に紛れているため暗殺のほうが適しているかと思いますが……」
「ドクター・Tの命令だ。何が何でも『抹殺』を決行せよと……たとえどのような手段を選ぼうとも構わんそうだ。勿論、被害状況など気にする必要もないと?」
「死傷者を出したりしたら後から厄介ですよ?」
「そのために政府がいる。適当にテロの襲撃とでも理由付けておくだろう」
ISの集団は各自目標の空域へ移動し、ターゲットの三人がエリアへ入ってくるまで待ち続けた。
場所は、モノレールのホームである。
「スナイパー隊、ターゲットへ照準を定めろ。一撃で狙え? これが失敗に終われば我々は強制的に駅を破壊してまでもターゲットの抹殺を決行せねばならない」
「了解」
そして、ホームに現れた三人の中で大剛の後頭部に赤い光点が浮かび上がった。
「あれ? 大剛、これって……」
玄弖が大剛の髪の毛に浮かび上がる何かに気付いた。
「え?」
しかし、その現象にいち早く気づいたのは弾であった。
「スナイパーだ! 伏せろ!?」
弾が大剛を押し倒そうとしたが遅く、銃声が鳴り響いたがそれと同時に金属を弾く激しい音が三人の耳に飛び込んでくる。
「!?」
大剛の後頭部が、彼のRS「鈍龍(どんりゅう)」が自動的に展開して楯となり、装着者である彼を守ったのだ。
「ISがパイロットを守ったのか? それとも見破られていた? どちらにせよ失敗か……!」
隊長の指示で、各ISは一斉にホームへ急降下しながら三人へ銃撃を浴びせる。
「何だ!?」
玄弖はホームの上空を見上げた。そこには、複数のISと見られる機影がこちらへ向かって銃弾をばら撒いている。
三人の身はRSが楯となって銃弾を防いでくれるものの、周囲に居た人々はその銃撃の巻き添えを喰らって次々に倒れて行く。
「何がどうなってんだ!?」
大剛は混乱する。
「わからないが、ドンパチやってることだけは確かだ!」
「どうする!?」
玄弖が問うと、弾はやることは一つだと答える。
「……やるっきゃ、ねぇだろ?」
三人は四方へ散開するが、そこへ数発のミサイルがホームへ着弾し、駅は跡形もなく崩れ落ちて行く。
「やったか……?」
上空から浮上するIS部隊は、煙に包まれている駅を見下ろしていた。
「あれだけの攻撃を受けたんだもの、絶対に生きている確率はないわ?」
「隊長……?」
「ああ、だが念のため遺体の確認に向かえ? ドクター・Tの情報によると、ターゲットの耐久率は我々の機体以上にしぶといらしい……」
隊長は、適当に二名程を指名して瓦礫と化した駅へ降り立つよう命じる……が。
「!?」
一人の青年が斧を担いで、未だ消えない煙を突き抜けて、こちらへ一直線に突っ込んでくるはないか。
「喰らえぇ!!」
青年が振りかざす巨大な斧が、降り立とうとしたISの一機へ切りかかり、それは一撃で爆発した。
「な、なに……!?」
「そこかぁ!?」
さらに、弾は斬兒を横へ振り回し、降り立とうとした二人目も脇腹を切り裂いた。
瞬く間にIS二機がこうもあっけなく撃墜されてしまった事実に他のIS達は隊長を含み、目を丸くさせていた。
「ば、ばかな……ISがこうも!?」
ISが二機、それもRSを握って日の浅い素人に敗れた訳は、自分たちが世界で最強だと思う大きな自尊心と安心感に慕っていたことが原因である。
「こ、これなら……!」
――ISと同じように空も飛べる。これなら……行ける!
弾は再び斬兒を握り、構えた。
「くぅ……撃て! 撃ち落せ!!」
しかし、再び銃弾の群れが弾を襲い、流石に強気になり始めていた彼も血相をかいて上空を逃げ回る。
「やっべぇ!」
銃弾以外にも、ミサイルまでも彼に照準を定めるが。
「弾! そのままだ!!」
再び、地上から上空にかけて大剛が飛び立ち、弾を追撃する真上のIS一機を鈍龍で打ち付ける。
ISの操縦者のうめきと共にその機体は一撃で爆発した。
「もう一丁ぉ!」
と、傍で唖然となるISの一機にタックルをかけ、そして鈍龍をそのISの頭上へ振り下ろした。
再び四機目が撃ち落され、部隊の半数を失ってしまう。
「そ、そんな……バカな!?」
しかし、呆然としている隊長に、相手は待ってくれなかった。
「こんのぉー!!」
背後の部下二名が爆発していくことに隊長は振り向いた。
「そんな……どこから!?」
それは、実態を見せず、刹那のごとく一瞬にして獲物を仕留める脅威の刃であった。
「喰らえ!」
玄弖が握る飛影こそがそれであり、彼の肉眼では捉えられぬ一瞬の攻撃で相手は急所を一撃で貫かれ、そして撃ち落される。
一瞬に聞こえた金属音と共にさらにもう一人目が撃墜される。
「どこだ……どこから攻撃している!?」
「隊長! このままだと、全滅です。ここは一旦引きましょう!?」
最後に残った部下が必死になって隊長の説得に入る。しかし、彼女は自分は「女」だから引くわけにもいかないという維持があった。
「ふざけるな!? たかが『男』共にこうも負けを認めるというのか!?」
「し、しかし……きゃっ!?」
突如、部下は背を飛影の刃が遅い、隊長の目の前で爆発した。
「そ、そんな……!?」
最後に残ったのは自分一人、この予想外の事態に彼女は混乱し始める。
「げ、解せぬ……解せぬぞ!? 我が、尖鋭部隊が何故こうも!?」
「満足だろうな? 女尊男卑を掲げて男たちを支配する気分は!」
「誰だ!?」
その声に隊長は振り返ると、そこには両手に黒い角錐状のナイフと思われし刃物を握った青年がいた。
「若い男……!?」
「そうさ! 男で何が悪い!?」
「くぅ……生意気な! キサマ達は何者だ!?」
「強いて言うなら、闇界のジャンク屋だ!」
と、発言と共に隊長が抱えるアサルトライフルを飛影が切り裂いた。
「なっ!?」
隊長は青年から距離を置いて、彼らの正体に目を丸くさせる。
「闇界……エリア14だと!? まさか、エリア14に新たな兵器が作られていたのか!?」
「詳しいことは知らんが、これだけは言っておく……俺は、お前たちを決して許しはしない!」
飛影の先を向け、さらに玄弖はこう叫ぶ。
「無関係な人たちを大勢巻き込んで、虐殺したお前たちの非道を許すものか!」
「フン! エリア14の男が正義面するなぁ!!」
混乱に続き、興奮状態に陥った隊長は、腰からナイフを取り出すと、それを握ってこちらへ襲い掛かってくる。
「死ねぇ! 男ぉ!!」
「女尊男卑に取り付かれた哀れな奴め!」
そして、隊長は飛影に懐を貫かれ、絶命した。

「どうにかなったな……?」
夕暮れ時。臨海公園のベンチに三人が腰を下ろし、そのうちの弾が呟いた。
駅での戦闘は終わり、そのあとから警察のパトカーがサイレンを鳴らして押しかけてきた。いろいろと面倒だから三人はすぐさま姿を消してこの場を逃げ出した。
「マジで死ぬかと思ったぜ……?」
大剛は両指を鳴らしたあと、大きく背伸びをする。
「あれが……俺たちに課せられた力なのか? 今思うと、スゲー怖い」
静かになる玄弖は、そうボソッと呟いた。
「臆病の暗いが丁度いいかもな?」
そんな彼に弾が返した。
「……かもな?」
と、大剛も。
「……なぁ? この先もああいった危険なことが起こるのかな?」
「だが、今更エリア14へ戻るわけにはいかないだろ?」
帰ったとしても、移住しろと言ったのだ。半ば追放されたようなもの。ガイラ達は気にせずとも、統括者たちは嫌がるだろう。
「ここまで来たんだ。行くしかない。エリア20へ……」
大剛がベンチから先に立ち上がった。
「行くしかないか?」
と、次に弾がベンチから立つ。
「玄弖……」
弾が最後にベンチに座る彼を見る。
「……乗りかかった船だ。行くよ?」
最後に玄弖がベンチから腰を上げると、三人は夕暮れに照らされながら目の前の道を歩いた。
「とりあえず、どうする?」
「乗り物だとまた危なっかしいし、無関係な人たちが巻き込まれるかもしれない。こうなりゃ、徒歩で行くっきゃねぇな?」
弾はしぶしぶ答えた。
「マジかよ……?」
顔を青くする大剛だが、そんな彼の隣を歩く玄弖は、
「行こうぜ? 大剛」
と、明るい口調をかけて、彼が先頭を歩いた。
「とりあえず、今晩の夕飯どうする?」
何気に尋ねる大剛に。
「旅費のために携帯食一個だ」
「マジかよ……?」
再び大剛の顔が青くなった。
 
 

 
後書き
予告

野を超え谷超え、ようやくエリア20へやってきた! ……て、ここどこ? 野原に畑、田圃に小川が流れて……そして喉かすぎるこの空気……これって、田舎!?
IS学園近辺じゃないの!?
くそ……このままじゃ箒に会えやしない! しかし、そんな集落で奇跡が起きる……
一方の大剛ときたら、なにやら一人の巫女に一目惚れ!?

次回
「再会と遭遇」
 
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