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戦国異伝

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第二百四十七話 待つ者達その四

「うちのは女好きだからね」
「あれであの人結構もてるからね」
「あの顔だからもてないと思ったら」
 それがというのだ。
「凄くもてるからねえ」
「そうだよね、男は顔じゃない」
「本当にその通りだね」
「藤吉郎さんは性格なんだろうね」
「そうそう、私だってね」
 右手を前に振りつつだ、ねねは話した。
「あの顔じゃなくてね」
「性格にだね」
「惚れたんだよ」
 そうだったというのだ。
「あの人懐っこさと愛嬌にね」
「どうもだね」
「話してるとついついね」 
 それこそというのだ。
「心を持って行かれるからね」
「それであの人が好きと」
「そうだよ、だからもてるのもね」
 自分以外の女にもだ。
「仕方ないなって思ったりもするんだよ」
「あら、そうは言っても」
 ここでだ、おまつは笑ってねねにこう返した。
「ねねさん何年か前随分焼き餅を焼いていたね」
「ああ、そうしたこともあったね」
「藤吉郎さんが浮気ばかりするって」
「上様にもぷりぷりして言ったよ」
「それで後で上様に文を貰ったんだったね」
「あまり怒るなってね」
「あれで上様はおなごに優しいからね」
 信長の意外な一面だ、彼はそうしたところもあるのだ。
「私達にも」
「それでその文をうちの宿六にも見せろってね」
「そうも書いてあったんだね」
「それで見せたら暫くの間はね」
「藤吉郎さんの浮気の虫も収まったんだね」
「やけに小さくなってね」
 その文を読んでというのだ。
「そうなったんだよ」
「それはいいことだね、けれど」
「私達の間はね」
 それこそというのだ。
「子供がいないんだよね、まだ」
「他の人との間もだよね」
「そうなんだよ」
 ねねはこのことは困った顔で述べた。
「どうもうちの亭主はそっちは恵まれなくて」
「だからだね」
「そう、孫七郎殿をね」
 秀次をというのだ。羽柴の姉の子で彼にとっては甥になる。
「やがては、って考えてるけれど」
「あの人は三好家に入ってるね」
「宗家にね」
 その三好家のだ。
「今じゃ三好家のご当主様だよ」
「じゃあ羽柴家に戻るんだね」
「そうなるかね、私に子が出来ればいいけれど」
「まだ若いし大丈夫じゃないかい?」
「だといいんだけれどね」 
 困った顔で言うねねだった、このことについては。
「願掛けもしてるよ」
「そっちも頑張るんだよ」
「そうしてるよ、二人でね」
 夫である羽柴と共にというのだ。
「何かとね」
「それじゃあね」
「あんた達はそこはね」
「ええ、うちはね」
「子沢山だね」
「有り難いことにね」
「若し子が出来なかったらね」 
 ねねは今も困った顔で話す。 
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