エイリアン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
6部分:第六章
第六章
うどんは二人共かなり大きな丼の中にこれでもかとうどん玉を入れたものだ。それを食べながらだ。二人で話をしているのだ。
「けれどどうだよ」
「どうだよとは?」
「いいものだろ」
笑いながらだ。こうグリーザに言ってきたのだ。
「日本文化ってやつは」
「そうですね。いいですね」
「このうどんだってそうだしな」
「ですね。それはわかります」
そのうどんをすすりながら頷く彼だった。
「麺ですね」
「ああ、そばもいいだろ」
「確かに。あれもかなり」
「大阪じゃうどんが主だけれどな」
親父はグリーザにこんなことも話した。
「そばだって美味いからな」
「ですね。今食べているのも」
「日本文化はいいぜ」
親父は実に楽しそうに彼に話す。
「何ていっても落ち着くからな」
「そうですね。しかも色々なものがありますね」
「どんな店行ってるんだ、一体」
「お店ですか」
「ラーメンとかそういうのも食ってるよな」
親父はグリーザに対して問うてきた。
「うどんとかそばとか丼以外にも」
「はい、お好み焼きやたこ焼きも」
「いいだろ、ああしたのも」
「濃い味ですね」
ソースに海苔、鰹節という組み合わせは彼の星にはなかった。それで言うのだった。
「それもかなり」
「だよな。マヨネーズもかけるしな」
「あれもいいですよね」
「けれどいいだろ」
「はい、一度食べたら癖になります」
にこやかな笑みでだ。グリーザは答えた。
「あんな美味しいものがあるんですね」
「大阪の味だよ」
「それに焼きそばもいいですね」
「で、その焼きそばを中に入れたモダン焼きはどうだよ」
「最初は何かと思いました」
モダン焼きについてはいささか引いた顔から話すグリーザだった。
「ですがそれでも」
「そうだな。食ってみると違うだろ」
「美味しいですね。他には天麩羅もコロッケもホルモンも」
「結構以上に食ってるな」
「どれも美味しいです、それもかなり」
最早完全にだ。地球の味に魅了されているグリーザだった。
「そのラーメンというのも」
「難波には行ったよな」
「カレーに善哉にですね」
「ああ、河豚に蟹だよ」
難波名物も多い。そうしたものが列挙されていく。
「金ある時はあそこでたらふく食ってるな」
「通天閣でしたね」
グリーザから大阪の象徴の一つを出す。
「あそこの下も」
「おっ、串カツだな」
「最初はソースを二度漬けしようとして怒られました」
「それは絶対にするなよ」
二度漬けについてはだ。親父は真剣そのものの顔で注意した。
「人としてやっちゃあかんことだからな」
「ですね。それもわかりました」
「そうか。それでも通天閣も行ったか」
「面白い塔ですね」
「あそこには一回昇らないとな。大阪人じゃないからな」
こう言ってだ。親父は自分のことを言うのだった。
「実は俺はな」
「親父さんは?」
「関西弁じゃないだろ」
「あっ、そういえば」
言われてだ。グリーザはそのことに気付いたのである。この辺りまだ地球、そして大阪には完全に馴染んではいない彼だった。
ページ上へ戻る