ロココの真実
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4部分:第四章
第四章
「デッサンも難しいわね」
「背景も大変ですしね」
「書き込むところ多いですよ」
「妙に気も多いですし」
「もう何かと」
「全く。こんなに大変だなんて思わなかったわ」
不平も出る。これも仕方のないことだった。
「いや、大変な連載になったわ」
「全くですよ」
「果たしてどうなるんでしょうね」
描きながらだ。彼等は連載の行く末も不安になってきたのだった。
それでも原稿は落とさなかった。次の号もその次の号もだ。それでだ。
カトリーナ達はあくまで描き続けた。そしてだ。連載を続けていくうちにだ。
読者の評価があがり人気も上昇してだ。編集部からこう話が来たのだった。
「えっ、外伝ですか」
「はい、脇役の娘を主人公にした作品をです」
所謂サブストーリーをだ。描かないかという話が来たのである。
「どうでしょうか」
「それは短編ですか?」
「いえ、連載です」
しかもだ。読み切りではなかった。そちらだった。
「あのキャラ。男装の麗人ですよね」
「ああ、シャルロットですね」
「あのキャラ女の子達に凄い人気があるんですよ」
「それは私も聞いています」
カトリーナはテレビ電話の向こうの若い美人の編集者に答えた。カトリーナは編集者に対しては貴族の妻らしい優雅な笑顔と言葉で応える。描いている時とは違い。
「その様ですね」
「はい、ですから」
「あの彼女を主人公にして」
「外伝を描かれたらどうですか?」
今の連載に加えてだ。それもだというのだ。
「別冊の方に連載ということで」
「では外伝であると共に姉妹作品になりますね」
「そうですね。互いにかなり密接した関係にある」
「それを描いて欲しいというのですね」
「はい。お願いできるでしょうか」
一応は頼むという形でだ。編集者はカトリーナに話してきた。
「その様に」
「そうですね」
今でも徹夜続きで大変だ。だからだ。
カトリーナは断ろうかと思った。貴族の家で資産もあるので経済的には困っていない。カトリーナの実家は印刷会社を経営しており夫の家は文房具だ。どちらの経営も上手くいっている。
だから経済的には困っていない。それで断ろうとも思った。
だがその前にだ。彼女の考えを見越したのか編集者はこう彼女に言ってきた。
「大人気なんですよ」
「人気があるんですか」
「もうそのキャラにファンクラブや応援サイトまで出来て」
「えっ、そこまでなんですか」
「そうです。熱狂的なファンが一杯ついて」
「そこまで人気だったんですか」
実はカトリーナはキャラクターはかなり愛する方だ。その彼女がキャラクターに人気があって喜ばない筈がない。編集者はそこを衝いてきたのだ。
それを言われてカトリーナは心が動いた。そこに編集者はさらに攻めてきた。
「その彼女が主人公の作品がスタートしたら」
「それならですね」
「はい、皆喜びますよ」
ファンがだ。誰もがだというのだ。
「ですから。どうでしょうか」
「あの娘が人気があって」
そのキャラがだと。カトリーヌは言った。
「そして連載がはじまればですね」
「もっともっと愛されますよ」
「あの娘にとってとてもいいことですね」
完全にキャラクターの親の立場から。カトリーナは考えていた。
そしてだ。その考えに基きだ。遂にこう言ってしまったのだった。
「仕方ないですね」
「ではそういうことで」
「はい、その作品も描かせてもらいます」
こう編集者に言ったのである。そしてだった。
カトリーナは連載をもう一本持つことになった。するとだ。
アシスタントだけでなく彼女自身もだ。さらに多忙になってしまった。それで描いている中でだ。アシスタント達が死にそうになりながら言うのだった。
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