FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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日常編大魔闘演武後
贈り物
前書き
FAIRYTAILの新小説『トラブルツインズ』を読んでみましたが、あれは時期的に冥府の門編の前なんですかね?
大魔闘演武から冥府に繋がるまでのこの間って押し込もうと思えば何でも押し込めるのではないかと思ってしまった今日この頃。
だがトラブルツインズをやるとは言ってない。やろうかとも思ったがいつまでも先に進めなくなってしまいそうな気がするので。
マグノリアにて・・・
「来たぞ!!帰ってきた!!」
「早く!!こっちこっち!!」
「待ってました!!」
「おかえり!!みんなぁ!!」
マグノリアへと帰ってきた俺たち。その俺たちを待っていたのは、お祭りとも取れるほどの大騒ぎをしている街の人たちだった。
「皆さ~ん!!大魔闘演武優勝ギルドを、盛大な拍手で迎えましょう!!」
ドスの効いた低い声で俺たちの帰還を歓迎するのは、黄昏の鬼のマスター。そして、彼の後ろではそのギルドのメンバーたちが笑顔で拍手をしているのが見える。
「妖精の尻尾!!凱旋!!」
その声と共に花吹雪が舞い、住民たちがこれでもかと大歓声を俺たちへと向ける。
「ただいま!!」
「あいさー!!」
先頭で手を振りながら皆さんの歓声に答えるはやはりこの人。ナツさんとハッピー。
「優勝したぞぉ!!」
「やったよぉ!!」
ポーズを決めながら住民の皆さんに優勝の報告をするナツさん。やっぱり彼がいないと盛り上がりに欠けるというのがよくわかった。
「すごい人の数」
「マグノリア近隣からも集まっているようだな」
街の入り口から途切れることなく続く人の群れ。それを見たルーシィさんとエルザさんがそう言う。
「イェーイ!!優勝じゃあ!!」
アスカちゃんを肩車したマスターが両手を広げて喜びを表現する。
「ミラちゃん!!こっち向いて!!」
「は~い♪」
熱狂的なファンの声に手を振りながら笑顔で答えるミラさん。そのすぐ後ろでは、リサーナさんを肩車したエルフマンさんが、大騒ぎをしている。
「オオッ!!これすごい!!」
「俺たちが一番だ!!」
大歓声にリリーが感嘆の声を上げ、カジルさんが拳を胸に当てて声高らかにそう言う。
「皆さん。応援ありがとうございました」
「もう。シャキッとしなさいよ」
応援してくれていた皆さんに深々と頭を下げるウェンディ。そんな彼女に対し、シャルルがもっと胸を張って歩くようにいう。
「皆さんありがとうございます!!」
「わ~い、皆ありがとう!!」
彼女の隣で俺は両手を広げて皆さんの歓声にお礼をいい、セシリーも同じようにお礼をいう。
「祝い酒だぁ!!」
「いい加減にしろよ、カナ」
お酒の瓶を片手にすでにほろ酔い気味のカナさん。その近くのラクサスさんは彼女のあまりの飲酒の多さに度が過ぎていると感じ、呆れながらも注意している。
「・・・」
皆さんいい笑顔で凱旋をしている中、一人だけぶっきらぼうな表情で、何かを考えているものがいる。
「グレイ様?」
「・・・何でもない」
彼の隣にくっつきながら歩いていたジュビアさんが心配して声をかける。だが、彼は一言それだけ答えると、彼女に視線を向けようとしない。それを見て何かを感じ取ったジュビアさんは、彼同様に浮かない顔をしていた。
「ルーシィ!!よくやったね!!」
そんな彼らとは真逆に、住民たちの中から一人のおばあさんがルーシィさんに声をかける。
「大屋さん!!」
その人はルーシィさんの住んでいる家の大屋さんだったらしい。彼女の声に気付いたルーシィさんはその前で足を止めると、褒めてもらえると思い手を振っている。
「だけど、家賃の話は別!!」
しかし返ってきたのはまさしく現金な話。それを聞いた周囲の人々は腹を抱えて大笑いし、頭の痛いお話にルーシィさんはガッカリとため息をついている。
「エルザさん!!伏魔殿最高でしたよ!!」
「いやカグラ戦だろ!?」
「ミネルバ戦だよ!!」
ルーシィさんとは反対側の住民たちからは、この大魔闘演武でMVPを獲得したエルザさんの、どの戦いがもっとも輝いていたのかの話になっており、皆さん激しく口論していた。
「照れるものだな」
「皆見てたんだね」
その渦中の人物は頬を赤らめ、どこか嬉しそうな表情をしている。エルザさんでも照れたりするものなんだ。意外な一面発見かもしれない。
「シリルお兄ちゃん!!」
「ウェンディお姉ちゃん!!」
すると、俺とウェンディのことを呼ぶ声が聞こえてそちらへと視線を向ける。そこには、俺たちよりもまだ幼い子供たちがいた。
「握手して~!!」
「私も!!」
「僕も!!」
そういって次々と俺たちの前に手を差し出す少年少女たち。俺たちは驚いて顔を見合わせた後、嬉しくて笑顔になり、その手を握り返していく。
「ねぇねぇ!!前から聞きたかったんだけどさぁ」
「ん?」
そんな中、最後の一人となった少年が目を輝かせながら俺の顔を見る。俺は何が聞きたいのかと聞いてみるとその少年は・・・
「シリルお兄ちゃんって本当に男なの?」
とんでもない質問をぶちかましてきた。
「プッ」
「ぶはっ!!」
その質問が俺に向けられたのとほぼ同じタイミングで後ろから笑いを吹き出した音が聞こえてくる。
「カナさん!!ラクサスさん!!笑い事じゃないですよ!!」
吹き出していたのはカナさんとラクサスさん。カナさんはお酒の瓶を持っていない方の手で口元を押さえてプルプルと震えており、ラクサスさんは適当な感じで謝罪しつつも、懸命に笑いを押さえているのが見て取れる。
「あんた・・・小さい子にもそんな風に見られるのね」
「さすがシリル~!!」
俺とウェンディのすぐ隣に立っていたシャルルとセシリー。彼女たちもこの質問はあまりにも予想外だったようで、顔をひきつらせながら漏れ出そうになる笑いを必死に堪えていた。
「ねぇねぇ!!どっちなの!?」
「私も気になる!!」
「僕も僕も!!」
その質問をした少年は目をキラキラと輝かせながら俺が答えるのを待っており、それに乗じて近くにいる子供たちも俺が答えるのを待っている。
「えっと・・・」
あまりにも笑顔が輝きすぎていて、正直本当のことを言っていいのか迷ってしまう自分がいる。でもウソをつくのはもっと悪いし、なんか両刀論な感じ・・・
「本当のこといってあげなよ」
「信じるかは別だけどね」
「捉え方はあの子達次第~」
俺が困っているのを見かねたウェンディとシャルルたちが手助けしてくれる。まぁ確かに、本当のことを言わないと後々面倒ごとになるだろうし、俺自身のためにもならないしな。
「俺は普通にお兄ちゃんだよ」
意を消して質問してきた子供にそう言う。すると、少年はこの上ないほどのビックリした顔をしてみせる。
「本当!?証拠は!?」
「えっ!?」
なんと答えただけでは納得するつもりはないらしい。彼は俺が本当に男だという証明を求めてきた。
でも証拠って・・・身分証明書でも見せろということなのだろうか?だけど、そんなの見たことないし持ったこともない・・・じゃあ一体どうすれば・・・
「あっ!!」
しばらく頭を悩ませていると、一つ名案を思い付いた。俺は証拠を待ち続けている少年の手を取ると、自分の胸へと持っていく。
「ほら。男だから胸がないでしょ?」
俺は年齢的にはシェリアやソフィアと限りなく近い年齢だ。二人はまだ成長しきっているようではないけど、そこそこ女性らしい体つきをしている。それに、俺より年下のウェンディも控えめだけどあることはある。男の俺はそんなものは出てくるはずがないから、こうやって確認させればいいんだよ。
「あ・・・はい・・・」
俺の行動でようやく理解してくれた様子の少年の手を離す。すると少年は、次第に顔を赤らめながら、顔をうつむかせてもらった。
「その・・・ありがとうございました/////」
「どういたしまして」
なぜか目を合わせようとしない彼に手を振りながら凱旋の続きへと戻っていく俺たち。俺たちが目の前からいなくなったのと同じくらいのタイミングで、なんだか少年がいた場所が騒がしくなっているけど、どうしたのかな?
「シリル~・・・」
「あんた・・・」
後ろからセシリーとシャルルが俺のことを呼ぶのでそちらに視線を向ける。二人は何やら呆れたような顔で頭を押さえていた。
「「バカね(だね)」」
「何!?」
二人の声がきれいに被さる。だけど、俺はそんなことを言われる理由がさっぱりわからない。俺が一体何をしたっていうんだ!?
「シリル。お胸がなくても女の子かもしれないっては思わないの?」
隣を歩いているウェンディの声が妙に怒っているように聞こえる。彼女の顔色を伺おうとそちらを見ると、笑顔であるが・・・真っ黒な笑顔を見せているウェンディが目に入った。
「いや!!このくらいの年齢になれば少しくらいはあるじゃん!!ウェンディだってあるし!!だからそのグーに握っている手を一回下ろそうか!?」
いつ殴られてもおかしくない位置までウェンディの右の拳が上がっていたのでなんとか説得して下ろしてもらう。それでもウェンディは怒っているようにそっぽを向いて頬を膨らませていた。
「私だっていずれは・・・」
ドラゴンとの戦いの時もあった独り言タイム。最近多いような気がするけど、何か思い詰めるようなことでもあったのだろうか?
「街のみんなにいいもん見せてやるぞぉ」
一番前を歩いていたナツさんが急に立ち止まると、背負っていたリュックを地面に下ろし、ゴソゴソと中から何かを取り出そうとしている。
「なんだろう・・・すごく嫌な予感がする・・・」
「私も・・・」
ナツさんが何を取り出そうとしているのかはイマイチわかっていない。だけど、なんだか悪い予感がする。不安そうに彼が取り出すものを俺はウェンディはじっと見ていると、彼はとんでもないものを取り出した。
「じゃ~ん!!」
それはなんと、パーティーでナツさんが王様から奪い取っていた王冠だった。
「国王の冠!?」
「取って来ちゃったんですか!?」
「いつの間に!?」
ワカバさんもマカオさんもまさかの出来事に顔面蒼白。ウェンディもさっきまでの怒っていた態度から一変し、ナツさんの破天荒ぶりに目を固まってしまう。
「あ、これじゃねぇや」
「取って来ちゃったんですか・・・?」
慌てる俺たちをよそにナツさんは冷静にリュックの中に王冠を戻すと、再び中から何かを探して持ち上げる。
「優勝の証!!国王杯!!」
それは閉会式で渡された、大魔闘演武優勝の記念品であるカップであった。
「信じらんねぇよ」
「俺たちが優勝だぜ」
「ずっと最下位だった俺たちが」
「「優勝したんだ!!」」
「「わ~いわ~い!!」」
その証を見て優勝した時の記憶が甦ってきたドロイさんたちは目に涙を浮かべて喜んでいる。七年間俺たちがいなかったことでかなり大変だったことはわかっているし、本当に優勝できてよかったと思う。
「ほらロメオ!!もっと高く上げろ!!」
「おう!!」
ナツさんはロメオを肩車して、彼に国王杯を高々と掲げさせる。それを見て住民たちはさらなる盛り上がりを見せていた。
「グレイ様」
盛り上がるナツさんたちを見てもいまだに笑顔を一切見せないグレイさん。そんな彼を心配したジュビアさんが声をかける。
「どうしたのかわかりませんけど、そんな顔をしていたら、皆さんに悪いですよ」
「・・・そうだな」
諭すようにそう言われ、グレイさんは少し考えたような素振りを見せた後、口角を上げ、彼女に礼を言う。
「ありがとう」
「やだ!!何コレ!?かっこよすぎてウケるんですけど!?」
グレイさんの笑みに目をハートにして大興奮のジュビアさん。グレイさんも狙っているようにしか見えないし、やっぱりあの二人はお似合いのような気がしてならない。
「それよりあの王冠・・・どうするのかな?」
「王様に怒られないといいけど・・・」
皆さん盛り上がっているのは大変いいことなのだが、俺とウェンディはナツさんが持ち帰ってきた王様の冠のことが気になって仕方がない。普通返されてなかったら王国軍の人やら餓狼騎士団の人やらが回収しに来ると思うんだけど、ここまで持ってきてしまっているということは、回収しに来なかったということだよね。それほど大切なものじゃない・・・なんてことはないだろうし、物の管理が杜撰すぎるような・・・
たぶん後で怒られることは間違いないだろうけど。
「えー、これよりマグノリア町長から、記念品の贈呈です!!」
俺たちが心配している中、俺たちの前に街の町長さんがやって来る。彼は一つ咳払いをすると、後ろからオーガのマスターがそんなことをいう。
「記念品とな?そんな気を使わんでも」
それを聞いたマスターは頭を掻きながら町長の前へとやって来る。数ヵ月前までは煙たがられていた俺たちなのに、大魔闘演武で優勝した途端に扱いが変わったように感じる。それだけあの大会での勝利というのは大きいものなのだと、改めて感じた。
「妖精の尻尾の皆様、どうぞこちらへ」
すると、マスターだけでなく、俺たち全員に前へやって来るように指示する町長さん。よほど大きな贈り物なのかと思ったら、それは俺たち全員の予想を遥かに上回る代物だった。
「妖精の尻尾は我が街の誉れであります。よってギルドを修繕して贈呈したいと思います」
それを聞いた瞬間、皆さんの先程までよりさらに笑顔になったのがわかった。
七年のうちに借金の形として売り払ってしまったかつてのギルド。いずれ何としても取り戻そうと考えていたそれは、記念品という形で俺たちの元へと返ってきたのだった。
「ギルドが元通りだ!!」
「あいさー!!」
「「やったやった!!」」
思い出のたくさん詰まったギルドが戻ってきたことに大喜びのナツさんとハッピー。彼らの後ろで俺とウェンディは抱き合いながら同じように喜んでいる。
「町長・・・あんたって人は・・・」
涙を流してギルドが返ってきたことに感動しているマスター。聞いた話によると、ギルドは街の皆さんが壊れた箇所の修繕や掃除をしてくれたらしい。それを聞いたマスターはさらに感動し、目から滝のように涙を流している。
「ワシはこの街が大好きじゃあ!!」
大声でマスターがそう言うと、街の皆さんのボルテージがさらに上がっていく。その後入ったギルドは七年前と変わらない状態を保っており、街の人たちの優しさを感じたのはいうまでもなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回は少し短めになっちゃいました。
次からはアニメオリジナルやらをやっていこうと思います。
妖精たちの罰ゲームはOADを購入し次第書こうと思います。
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