戦国異伝
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第二百四十六話 妖術破りその七
「あえてそうするぞ」
「では」
「これより」
森と池田も応えてだ、そのうえで。
織田家の軍勢は本陣も含めて間合いを一気に詰めた、そしてだった。
魔界衆の軍勢を一気に攻めだした、それを見てだった。
老人は魔界衆の棟梁達にだ、強い声で言った。
「妖術を使える者は使え」
「はい」
「これより」
「そして忍術を使う者はじゃ」
百地達はというと。
「よいな」
「はい、忍術でですな」
「攻める」
「妖術の後で」
「一気にですな」
「まずは妖術で一気に叩く」
織田家の軍勢をだ、老人は既に頭の中で考えていた。
「そして次に忍術じゃ」
「そのうえで、ですな」
「最後に」
「軍勢で攻めて倒す」
これが老人の考えだった。三段の攻めなのだ。
「よいな」
「最後に傀儡も含めた軍勢で攻めて」
「織田信長を倒す」
「そうしますな」
「その軍勢と共にな」
無論その中にいる諸将も入っている、そうしてだった。
空に暗雲が漂う中でだ、妖術を使える者はそれぞれ印を結んだり妖刀や数珠を出してだった。そうしてから。
それぞれだ、妖術を使いだした。
雷が落ち防風が吹き荒れ炎が起こる、魔龍や鵺に妖鳥、大蛇に巨大な毒虫達が次々に出てだった。
軍勢に襲い掛かって来る、足軽達の多くはこれに仰天した。
「よ、妖術だ!」
「遂に来たぞ!」
「早く逃げろ!」
「助けてくれ!」
「動じるでない!」
その彼等にだ、柴田が喝を入れた。
「既に上様のお話は聞いておろう!」
「旗ですか」
「旗に出た呪文ですか」
「我等にはそれがあるので」
「大丈夫ですな」
「案ずるな」
こう言うのだった。
「よいな、このまま攻めよ」
「わ、わかりました」
「では妖術に怯えずに」
「このまま攻めまする」
「妖術は破れる」
必ず、というのだ。
「怯えることはないわ」
「はい、では」
「このままですな」
「敵を攻めればいいのですな」
「そうじゃ、このまま攻めるぞ」
実際にとだ、柴田は言ってだった。
彼の上から巨大な闇色の龍が迫るのを見据えていた。龍は大きく口を開け咆哮して柴田と彼の周りの兵達を喰らわんと降りて来た。
その口が柴田達に迫って来た、だが。
龍の姿は瞬時にだ、柴田の目の前に口を開けた状態でだ。
消え去った、そして。
雷、嵐に炎もだった。全て消え去り。
妖鳥や鵺、毒虫の類もだった。織田家の軍勢に襲いかかったところで。
全て消え去った、闇の霧となって。
気付けば空が青く晴れ渡っていた、信長はその空を見上げて確かな笑みで笑った。
「よし、果心居士の力じゃ」
「あの方の呪文が」
「まさに天下を救った」
こう蘭丸にも言う。
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