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真田十勇士

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巻ノ三十二 会見その五

「それにあの家はもう上田には来ぬ」
「あくまで関東ですか」
「やはり北条家は東国の家、それではな」
「あの家は来ませぬか」
「だから特にじゃ」
「もう北条家とは親しくなりませぬか」
「喧嘩はせぬがな」
 揉めはしないが距離を縮めることもしないというのだ。
「そういうことじゃ」
「ですか、戦の後は」
「その時にも御主達には動いてもらう」
 今度は二人に言った、再び。
「わかったな」
「はい、では」
「その時は」
「そういうことでな、では今は戦をしようぞ」
 昌幸はこう言ってだ、戦を待っていた。その用意は既に出来ていてそれこそ何時でも戦える状況であった。
 その真田家と対する徳川家の軍勢、信之と幸村達を城に帰した彼等はというと。
 本陣においてだ、主な者達が話していた。
「思っていた以上にじゃな」
「うむ、お二人共確かな方々じゃ」
「真田殿は立派なご子息達をお持ちじゃ」
「後ろにいた十人程の者達もな」
 彼等もというのだ。
「身なりは変わっておるが強いな」
「相当な猛者達じゃな」
「肉の付き方が違う」
「目の光も強い」
 そうしたものを見ての言葉だ。
「やはりかつて武田家にいたことはある」
「強いな」
「これまでもやられてきたが」
「ここで気を引き締めねばな」
「遅れを取るな」
「そうなるな」
「その通りじゃ」
 ここで鳥居も言った。
「この度の戦は厳しい」
「はい、上田の城を囲みましたが」
「それでもですな」
「この度の戦はです」
「容易ではありませぬな」
「一気に激しく攻めてじゃ」 
 そしてというのだ。
「本丸まで迫りな」
「そして、ですな」
「そのうえで降る様に言う」
「相手の進退が極まったところで」
「その時に」
「殿は真田家を滅ぼすつもりはない」
 鳥居はここで主の考えを言った。
「上田の領地を手に入れてな」
「その兵を組み入れ」
「そして真田家も家臣とする」
「決して滅ぼしたいのではなく」
「組み入れたいのですな」
「殿は無駄な血を好まれぬ」
 家康のこの気質についても言う、実際に家康は戦で戦い兵を繰り出しても決して殺戮を許す様なことはしない。
 だからだ、この度もというのだ。
「だから真田家もじゃ」
「滅ぼさずにですな」
「戦で進退極まる様にして降らせる」
「そうお考えですな」
「出来れば最初からじゃったがな」
 ここでこうも言った鳥居だった。
「戦、いや兵を送ることなくな」
「上田を組み入れられていれば」
「それで、でしたな」
「よかったのですが」
「それが出来ずにですな」
「我等は今ここにいますな」
「そうじゃ、こうなれば仕方がない」
 確かな声で言う鳥居だった。 
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