西山田パイ次郎の日々
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パイ次郎……!
西山田パイ次郎は悩んでいた。図書館で働いてる女の子に恋してしまったのである。
パイ次郎はシャイだ。何て声をかけていいかわからない。
パイ次郎は妄想する。
「あなた、かわいいですね」
「えっ。ありがとうございます」
「むちゃくちゃかわいいっす」
「あなたもかっこいいですよ」
「照れるね。えへへへ」
「うふふ」
こんなバカな会話はない。
女の子が気になって気になって読書に集中できない。
パイ次郎は困ってしまう。
野良犬が不気味に吠えていた。
女の子と小説。永遠の課題である。どちらもパイ次郎に必要なものだ。どちらが欠けてもいけない。
ゆえにパイ次郎は、腿をつねる。痛い。しかし、読書に集中できた。
んで読書が終わったら、女の子を見てうへへ~となる。こういうことの繰り返し繰り返しだ。
パイ次郎はこう思う。女の子と小説ではないけど、批判者とイエスマン、両方ほしい!
批判者がいると衰退しない腐敗しない。イエスマンだらけだとする。
イエスマンがいると鬱にならずよって自殺もない。批判者だけだとする。
バランスだなと。バランスが大事だなと。資本主義と社会主義はどっちがいいとかそういうものではなく、両方必要だと。資本主義がないと確実に怠けるし(社会主義はみんな給料同じだからね)社会主義がないと確実に餓死者を出す(資本主義においては貧困も自己責任になるから、生活保護の発想がない)
生活保護も競争も両方いる。
片方だけでは成り立たん。競争がないと社会が衰退するんで、そもそも生活保護受給者を養うことができない。
生活保護制度がないと、社会から転落した時に受け皿がないんで、貧しい人は簡単に自殺したり餓死したりする。
どっちもダメだ!
つまらんけど深い作品を評価するために芥川賞がある。
浅いけど面白い作品を評価するために直木賞がある。
パイ次郎は図書館で直木賞作家、奥田英朗の「純平、考え直せ」を借りてきた。予想通り、ストーリーや人間造形が軽くて浅い!けど面白い!わくわくする!
また、マンガ喫茶に芥川賞作家、又吉の「火花」が置いてあるんで再読してる。はっきり言って面白くない!(又吉のお笑いに比べたらね)だけど、深い!いろいろ考えさせられる!
パイ次郎は、ある日、決心した。
「あのう」
むちゃくちゃかわいくて緊張する。
やっぱり何を話していいかわかない。いきなり付き合ってくださいとか好きですとか言っても、わけがわからない。
「コピーをとらせてください」
「コピーですね。こちらの用紙に記入を」
くそくそくそ。声もむちゃくちゃかわいい!
パイ次郎は顔が真っ赤だ。
くそぅ。何でオレはこんなにシャイなんだ。ちゃら男なら簡単にナンパできるのに。
パイ次郎は仕方なく、読書に専念した。
また妄想してしまう。
「キスしてもいいですか」
「みんなが見てますよ」
「かまうもんか」
「んもう」
バカである。完全バカである。
パイ次郎は自分が情けない。
読書に集中、集中、集中! 邪念を振り払え!
でも、意識は女の子に向かってしまう。
パイ次郎は悲しかった。シャイな自分が憎かった。
とはいえ。
まあそれも人生だわね。
パイ次郎は40となり、熱狂的ファンに射殺された。
何てのは嘘。ジョンかよ。パイ次郎はまだプロじゃないから、そういうことはない……。
パイ次郎は図書館でまた妄想してる。
「あの。僕とホテルに行きませんか」
「いいですよ」
「やったー」
そんな都合よくいくわけがない。
パイ次郎はだんだん鬱になってきた。
心療内科でカウンセリングを受ける。
「先生。このままだと僕、自殺してしまいます」
「困りましたねぇ」
結論!
カネのかからない遊びをする。
となると、やはり小説か……。
パイ次郎は、図書館で町田康を借りてきて読んだ。
パイ次郎は、妄想の世界で遊ぶ。女の子と寿司屋に行く。妄想の世界ゆえに回ってない高級な寿司屋だ。やたらに中トロを注文する。
寿司屋を出てから、二人で歩く。幸せである。パイ次郎はルンルン気分だ。
不良、登場。女の子の腕をつかみ連れてゆこうとする。
「おのれ」
パイ次郎は一本背負いで投げ飛ばした。不良はアスファルトに叩きつけられ、わんわん泣く。女の子はパイさんすてきぃと目がハートマークになっている。
パイ次郎は照れる。
不良がなおも泣いてやかましかった。かわいそうなのでうまい棒をあげたら泣き止んだ。パイ次郎って優しいね。
女の子とベンチに座る。夢を語り合った。
「オレ作家になりたいんだ」
「あたし宇宙飛行士」
「負けた」
女の子のアパートまで送る。ドアの前に男が立っている。借金取りだ。借金取りが女の子の腕をつかみ、ソープに売り飛ばしてやるとぬかすので、パイ次郎はかちんときて、一本背負いで投げ飛ばした。男は階段を転がり回り死んだ。
「ヤバい逮捕される」
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