魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル
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DUEL10 学校での出来事
前書き
こんにちはblueoceanです。
先ず初めに前話に修正を加えました。
自己紹介の場面で、カ行の最初が神崎なのに次に柿崎となっていたため、柿崎の名前を岸間に変えました。
大変申し訳ありません………
「ん………?」
2人を制して教室に戻ると何やらクラスの皆の俺を見る目が冷たい。いや、避けられている様に感じる。
「何だ………?」
その疑問を確認する前に休み時間を終えるチャイムが聞こえてた。
「………まあいいや」
俺はあまり気にせず、次の授業に集中した………
「う~ん………」
午前中で学校が終わり、皆帰路に着く中、俺は1人で自分の椅子に座って唸っていた。
「やっぱりおかしいよな………?」
俺が何かで立ち上がれば皆がビクっと驚くような反応をするし、話しかけると「は、はい!?何ですか!?」とビビりながら話してきたり、終いには無視してさっさと立ち去ってしまう者もいる。
「俺、何かしたか……?いや、もしかしたら………」
1つ心当たりがあった。一応危惧していたが、少なからず可能性はある事だ。
「俺の事を知っている奴が居たんだな………」
高校生活が始まって早々、前途多難の予感がした………
さて、何時までも教室に居る訳にはいかないので、帰ろうと靴を履き替え、校舎から出た時だった。
「あっ!レイ〜!!」
俺を待っていたのかディア、シュテル、レヴィ、そして見知らぬ女の子が居た。
「待ってたのか?」
「うん。折角だし様子を見て行こうって」
「レイは危なっかしいので」
「うむ」
「お前らは俺の保護者か」
苦笑いしながらそう言ったが、内心ではホッとしていた。
いくら可能性があると考えていたとは言え、ああ言った態度を取られるとやはり辛いものはある。
しかし昔の俺を知っていても接し方を変えない相手が居てくれるのはとても安心できる。
「それに既に問題を起こしたようだしな」
「問題………?」
ディアにそう言われ今日をふと思い返してみる。
問題があったとすればアミタとキリエが来て少し騒ぎになったくらいだ。
「この顔に見覚えは無いか?」
そう言ってディアは俯いていたもう1人の女の子を俺の前に押し出した。
「ちょ!?王様!!」
「お礼を言いたいのだろう?ならばちゃんと前に出て言わねば」
ディアにそう言われるとその女の子は諦めた様で、恥ずかしそうに俺を見つめた。
「ん?確か君は朝………」
「は、はい!!今朝は助けて頂いてありがとうございました!!」
そう言って深々と頭を下げた。
「いいよいいよお礼なんて。災難だったね、早く学校に向かってたみたいだけど部活?」
「あっ、いえ……私生徒会に所属していてその仕事で早めに向かってたんです」
「なるほど」
確かに高校でも入学式がある様に中学でも入学式があるのは当然だ。
「たまたま持っていたバックがぶつかっちゃたみたいで、それで文句を言われているうちに逃げられなくなっちゃって、助けを呼ぼうにも怖くて………そんな時零治先輩が来てくれて………本当に助かりました」
そう言うと改めて頭を下げる女の子。ここまで何度も頭を下げられると、こっちが何かした様に見られそうだ。
「もういいって。それよりもえっと………」
「あっ、私白斗わかばと言います」
「わかばちゃんか。よろしくね」
「はい!………あっ、生徒会の役員会議の時間だ!!すみません先輩、これで失礼します」
「あっ、ああ………」
わかばちゃんは頭を下げてさっさと行ってしまった。
「生徒会って忙しそうだな………それにしても先輩かぁ………いい響きだ」
今まで言われた事のない呼び方に感動していると3人の視線を感じた。
「「「………」」」
「な、何だよ………?」
ジト目で俺を見る3人。
悪い事はしてないはずなのに、後ろめたさを感じる。
「レイ、デレデレだったね〜」
「先輩と言った年上の雰囲気が全然ありませんでした」
「全く、情けない………」
「だから保護者か!!……別にデレデレなんてしてないよ。ただ女の子から先輩って言われたのがちょっと嬉しかったって言うか………」
「?レイは今まで何て言われてたの?」
「兄貴」
そう言うと3人は、何とも言い難い微妙な顔をした。
「………言いたい事は分かるが、決して俺は違うからな!」
「分かっている。レイ、今日の夕餉はレイの好きな物で良いぞ」
「同情もいらねえよ………豆腐ハンバーグ」
「何で豆腐?レイってお肉駄目な人じゃないよね?」
「豆腐ハンバーグをバカにするなよ、凄い美味しいんだからな」
「豆腐ハンバーグか………確かまだ作った事が無かったな。ふっふっふ、腕がなる………」
「王、やる気の様です」
「これは夕飯が楽しみだ………」
その後、俺達4人はディアの買い物に付き添ってから帰った。夕飯はとてつもなく美味しかったと伝えておこう………
「くそっ、可愛い女の子の子といちゃいちゃと………見てろ………」
翌日。
「おはよ〜」
「………」
朝、15分前に学校に着いた俺は教室に入ると同時に挨拶をしたが、誰も返してこない。
(うん、やっぱりビビられてるな)
今いるクラスメイトの様子を見ると誰もが関わりたくないと言った様子だ。やはり、俺の過去を知られてしまったのだろう。
「まあ、いっか」
この学校にはちゃんと俺の事を理解してくれている人もいる。今はそれだけで良い。やがて俺の姿を見て時間が解決してくれるだろう。
(まあそれまでの辛抱だろう………)
そう思っていたが、少し違っていた………
「ちっ、いるのかよ………」
教室に入って早々、俺の顔を見て舌打ちしつつ中へ入ってくる男子生徒。
昨日神崎の前に自己紹介した岸間だ。
「だからクラスの雰囲気が悪いのか〜」
と煽るように言ってくる。そう言っている本人が更に悪くしているのに気が付いているのかわざとなのか。恐らく後者だろうが反論するだけ無駄なので無視する。
「あっ〜同じ空気にいるだけでもありえねえ………」
恐らくこれに反応して『何で反応してるの?別にお前の事言ってねえよ』とか言いたいのだろう。相手よりも優位に立つ快感を得たい、ましてや相手が不良なら更に気分が良いのだろう。
………尤も経験が無いので想像ではあるが。
「………ちっ」
暫くすると無反応の俺に飽きたのか教室から出て行った。
「はぁ………面倒な奴に知られたな………まあああやって行動に移す分、対応しやすいけど」
それから数日が経ち、岸間の嫌がらせはエスカレートしていった。
「はぁ………」
最初は嫌味だけだったが、最近は物にいたずらをし始めた。
『不良は学校を辞めろ!!』
と机にマジックでデカデカと書かれている。
昨日は机の下の方にちょこっとだったが、今日は大胆に行動に出たようだ。
「うわぁ………」
「ひでぇ………」
流石にやり過ぎたのか、一部のクラスメイトからそんな声が聞こえるが手を差し伸べるような奴はいない。自分の方に飛び火するのが怖いからだ。
「流石にこれは消せないか………」
そう呟きながら犯人を見る。当の本人は満足そうに俺の様子を見ていた。
「仕方が無い」
そう呟いて俺は教壇の前に立つ。
「皆聞いてくれ。見ての通り、誰かが俺の机にいたずら書きをした。取り敢えずこんな机使え無いんで先生に報告する。多分いじめだと思われるから色々と面倒を掛けると思う。まあ了承の事よろしく」
と伝えた。
「ふざけんな、なんでそんな無駄な時間を取らせるんだよ!!無駄だと思うなら我慢しろよ!!それにそれ位自分で消せるだろ?なっ?」
と、岸間が吠える。
「ほう………じゃあ………」
そう呟きながら俺は自分の机を運ぶ。
俺が言われた通りにすると思って岸間はニヤリと笑みをこぼしたが、自分の机の前に止まったことに気が付いて不思議そうに俺を見た。
「よっと」
俺は岸間の机を持ち上げ中身を全部外へ出した。
「はああああああああああ!?何やってんだよてめえ!!」
「何ってお前自分で言ったろ?それ位自分で消せって。人に言うくらいだからお前は簡単に消せるんだろ?だったら机交換したほうが早いだろ。俺は自信無いしね」
「ふざけんな!!俺の机だ!!」
「何言ってるんだ?学校の備品だろ?お前が自分で買った机なのか?」
「そ、それは………」
そう言って言い淀む岸間。
「くくく………!!」
「何がおかしい黒崎!!」
そんな岸間の様子に黒崎が含み笑いをしていたようで岸間にはそれが聞こえたようだ。
「いや、余りにも滑稽だったんでな。………岸間、相手が悪い止めとけ。何が気に入らないのか分からないが、このまま嫌がらせをし続けても墓穴掘るだけだぞ?」
「うるせえ!!俺は別に悪くねえだろ!!こいつが不良のくせにのうのうと学校に来てんのがいけねえんだよ!!こっちだって迷惑だろ!!いつ何のトラブルに巻き込まれるか分かったもんじゃねえし!!むしろ良いことだろうが!!」
もう既に嫌がらせも肯定し、更に動機も浅い。
「はぁ………有栖、お前も面倒なバカに目を付けられたな………」
「まあ一度や二度じゃないから別に構わないけど、まさか高校生にもなってこんなくだらない事する奴がいるとは思わなかったよ」
「この野郎………!!」
黒崎の煽りに乗っかって煽り返したら、顔を真っ赤にして怒っている、今にも殴り掛かろうとして来そうな勢いだ。
「舐めんじゃねえ!!!」
「おい、さっきから煩いぞ一体何を……ふべっ!?」
「「あっ………」」
ありのまま起こった事を説明しよう。
怒りに身を任せて殴りかかってきた岸間と俺の間に文句を言いながら間に入ってきたのだ。当然、岸間の勢いは止まらず、俺を守るように関係ない神崎が殴られた。
「神崎!?」
そのまま近くの机を巻き込み倒れる神崎を慌てて確認する。
殴られた頬は腫れているが、幸いにも歯が折れたり血が出たりはして無かった。しかし倒れた時に頭を打ったのか気絶しており、すぐには起きそうにない。
「お前………!!」
「おっ、俺は悪くない!!俺は間違っちゃいない!!」
黒崎が睨むなか、半狂乱の様な状態で岸間が叫ぶ。
クラスの女子の悲鳴響き、クラス内が騒然とした。時期に騒ぎを聞きつけ、先生もやってくるだろう。
(迷惑を掛けないって決めたんだけどな………)
最早岸間も止まる様子は無い。もう少し冷静だと思って煽ったのが失敗だった。
しかしそんな中更に厄介な事態が巻き起こった。
「………何の音?」
窓側にいたクラスメイトが外の異変に気がついた。
改造バイクが出す様な大きな音が幾つも聞こえ、それは校門の前から聞こえていた。
「あっ、あれ!!」
その生徒が指差した校門から次々とガラの悪い男達がよじ登り、校門を開けた。
「おいおい、撮影じゃないよな?」
「何なんだこれ………?」
校門を開けると次々とバイクで校庭内に入ってくる男達。
「不良が乗り込んできたぞ!!」
その叫びにクラスの皆が外の様子を覗きに動いた。
「何だよこれ………」
「30人以上居るぞ……」
そんな呟きが聞こえる中、岸間が口を開いた。
「ほら、俺の言った通りだ!!早速迷惑をかけてるぞ!!おいどうすんだよこれ!!!」
先程の狂乱ぶりはどこへ行ったのか、勝ち誇った顔で叫ぶ岸間。
「有栖何か心当たりはあるか……?」
「いや?特には………あっ」
黒崎の言葉で入学式の朝の事が頭に浮かんだ。
「…………」
「心当たりあるのかよ………もしかして入学式の朝の不良達が倒れていたのって………」
「あれは中等部の女の子が絡まれてたから助けた際に襲ってきたから返り討ちにしただけだよ」
「………それじゃないか?」
………確かにそう思えてきた。
「おいおいどうするんだよ!!ちゃんと責任取ってもらえるんだよな?なっ!!」
これでもかと言った具合に俺に突っかかってくる岸間。とことん俺に突っかかって来る。
「ん?何か先頭の人がスピーカーを出してきたよ」
「どういうことだ?」
そんな事を話しているうちに先頭の不良がスピーカー越しに話し始めた。
『今年入学した岸間健吾!!この学校に居るのは分かってる!!さっさと出てこいや!!!』
呼び出されたのはまさかの岸間だった。当の本人も理解できてないのかポカンとしている。
『人の女に手を出したんだ。それなりの覚悟は出来てるんだろうな?早く出てこねえと学校の中へ探しに行くぞ!!』
と連れている仲間の不良達が雄叫びを上げる。それぞれ鉄パイプやバットなど武器も持っており、全員学校に乗り込んで来れば明日のニュース番組のトップを飾る事になるかもしれない。
「………」
岸間も何がどうなってこんな事態になってしまったのか理解できないようで完全に固まっていた。
「警察に連絡は!?」
「連絡したけど来るまでにかなり時間が掛かるって!!」
ここ海鳴市はどちらかと言えば新しい街で、駅周辺は都市化しつつあるが、元々は首都圏から離れた場所にあるため、警察署も遠かった。実際駆けつけるのは1時間以上は掛かると考えたほうが良い。
「おい、どうするんだ岸間?お前さっきまで有栖に迷惑だとか言ってたけど、今お前自身がこのクラスだけじゃなく、学校全体に迷惑を掛けてるんだぞ?お前はどうするんだ?」
「ど、どうって………」
と青ざめた顔で後ずさりながら黒崎を見る。
助けを求めようとするが誰も手を差し伸べようとはしない。
「岸間、答えろよ………」
俺以上に何故か怒っている黒崎を横目に校庭を見てみる。
「おいおい………」
騒ぐ不良達の方へ向かっていく1人の女子生徒に気が付いて俺は慌てて教室から出たのだった………
「あなた達は何を考えているんですか!!」
校庭を陣取り騒ぐ不良に臆せず向かっていったアミタ。
「おっ、そそるねぇ〜スタイルもいいし美人だし、俺もこの学校に入学したかったわ〜」
1時間目が体育だったアミタは校庭の異変に気がつき、真っ先に向かったのだ。
「なあなあ、学校なんて良いから俺達と遊ばね?」
「忘れられない体験をさせてあげるぜ」
不良達の視線に嫌悪感を感じ、後ずさりそうになるが、負けじ逃げなかった。
「今すぐここから出て行ってください!!」
「そういうわけにはいかねえんだよ。俺の女に手を出した奴がいるんだ。それ相応の見返りをしてもらわなきゃな………尤も」
そう言ってアミタに近づくリーダーの男。
「お前が俺の女になるって言うんだったら今すぐ引いてもいいぜ」
「ッ!!」
そう言った不良の頬をアミタは思いっきりビンタした。
「最低………!!」
「………くく、良いじゃねえか。気の強い女は好きだぜ。反抗的で屈服させた時の表情は最高でよ………中坊卒業したばっかのガキに股開くビッチよりも全然良いな。………決めた!!お前を連れ帰って楽しむとしよう」
そう言ってアミタの腕を掴んだ。
「ちょ!?止めて!!」
アミタは懸命に抗うが、男の力に叶わず、されるがままだった。
「だ、誰か!!」
助けを求めても校庭にいる同じクラスメイトは誰も動かない。
「諦めな。こんな良い子ちゃんばっかの学校に俺達に楯突こうなんて奴は誰もヘブッ!?」
話し途中で男の顔にスニーカーが直撃した。
「アミタ、来い!!」
聞き覚えのある声につられ、アミタは駆け出す。
その先には見覚えのある男子生徒がいた。
「零治君!!!」
「全く焦ったぞ本当に………」
決死の如く走ってくるアミタの両肩を受け止める。肩で息をしながらも震えているのに気が付いた。
「怖いならでしゃばるなよな………」
「わ、私は生徒会副会長ですし、見てるだけなんて出来ませんでしたから………」
………これもアミタの良いところなのだろうが、見てる方は本当にヒヤヒヤした。
「まあ間に合って良かったよ。………まあ実際は間に合いそうになかったから上履きで出てきちゃったんだけど………」
靴を履き替えようとした時には既にアミタは連れて行かれそうになっていた。
慌てて外に出て持っていたスニーカーを思いっきり投げたが当たって本当によかった。
「………まあ1人だけバカはいたようだな」
律儀にスニーカーを投げ返しながらリーダーの男が呟く。
「アミタ、学校の中に逃げろ」
「えっ!?でも………」
「俺は大丈夫だよ。こういった事は慣れてるし、囲まれて喧嘩………なんて事はしょっちゅうだったし」
「でも……」
「捕まって人質にされる方が面倒だ。だから………」
「わ、分かった………零治君、無理しないでね………」
そう言い残してアミタは校内へと走っていく。
「おい、あの女、逃すなよ?」
「あいよ!!」
リーダーの男は支持し2人ほどこっちに向かってくる。
「小数はありがたい……!!」
アミタにはああ言ったが、30人程を1人で相手した事は無い。
「邪魔だどけろ!!」
1人が俺を退かせようと持っている鉄パイプを振り回してきた。
「ふん!!」
その攻撃を最小限の動きで避け、振り終えた瞬間をカウンターの要領で、手のひらで相手の顔を押し出す。
「へぶっ!?」
カウンターだったこともあって相手は顎に強打した攻撃に相手はその場に倒れ伏した。
「なっ!?てめえ!!」
仲間が倒れた事でもう1人の男もこちらへ向かって来た。
「遅い!!」
もう1人は特に武器を持っていないかった。がむしゃらに振られた拳はとても単調で容易に対応出来た。
「うおっ!?」
殴りかかった腕を掴み、リーダーの男の方へ、投げ返した。
「うあああああああああ!?」
投げられた男は運悪く頭から倒れ込み、そのまま気絶した。
「………てめえ」
「おいおい、無視しようとするなよ?話はまだだろ?」
リーダーの男は完全に俺に狙いを付けた様だ。
「いいだろう、先ずはお前からだ………てめえら、痛めつけてやれ!!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!!」」」」」」
大勢の不良達が雄叫びを上げる。
「さて………ここからだな」
リーダーの男を倒すか、学校に入られない様にここを死守するか………
「迷ってる場合じゃ無いな………取り敢えずくる敵を相手に………って!?」
波のように俺に迫ってくる不良の大群。
「流石に一気に来られたらなぁ………なるべく相手を固まって戦わせないように動きながらやるしかないか………」
そう言いつつ少しづつ下がりながら相手が来るのを構える。
「もっと………もっとただ単純に俺に向かって来い!!」
さっきの2人を見ても思ったが、こいつらはどちらかと言えば喧嘩慣れしれいない。ただ人数だけいるゴロツキだ。だからこそ、こうやってただ単純に数で押してくる。
「今!!」
相手は俺が引いてるのを良い事に何も考えず向かって来た。その内、自分達が一直線で向かって来ている事にも気付かずに。
「はあああ!!」
だからこそ、先頭の不良を吹っ飛ばせば自然と全体の動きも止まる。
「うごっ!?」
俺は勢いと共に跳び蹴りを戦闘の不良に放った。当然向かって来た男は避ける事も止まる事も出来ず、力と力がぶつかり、そのまま後ろへと吹っ飛んだ。
「ちょ!?お前!!」
それと同時にドミノ倒しの様に後ろにいた不良達も体勢を崩していく。
「今の内に!!」
後は再び向かって来るまでできるだけ数を減らす事。なるようになるしかない。
しかし俺の想像よりも横に広がっていた不良達が俺へと向かってくる。
「おらっ!!」
拳を一突き。それを再び掴み、近づいてきた男に投げつける。
「次!!」
「あぐっ!?」
間髪入れず、横から来た拳を払い、腹部に掌底を叩きこむ。
「舐めるな!!」
「くっ!?」
流石に後ろには目が付いておらず、掌底を叩きこんだ隙を狙われ、脇をしっかりと固める様に拘束されてしまった。
「今だてめえら!!」
チャンスだと言わんばかりに武器を持っていた奴等が俺に向かってくる。
「させる………か!!」
拘束している男に後頭部で頭突きし、相手の力を緩め、そのまま反転した。
「ちょ!?」
「おい!?」
既に武器を振り下ろそうとしていた不良達の手は止まる事は無く、盾と言った形で俺の代わりに拘束していた男が攻撃を受けた。
「うぐっ!?て、てめえ………」
「サンキュー、助かったよ!!」
相手が動揺している時を狙い、盾にした男を投げつける。
「ちっ、ヤバいな………」
先ほど体勢を崩した不良達が立ち直ってきている。まだ数も減らせてないので一気に押し寄せてくるだろう。
「だがやるしか………」
「流石に苦戦しているみたいんだな」
「えっ!?」
そんな声が聞こえ、後ろから誰かが駆けていく。
「何だテメエ!!」
不良の1人が木刀を振り下ろすが、それよりも早く、駆けて行った男の竹刀が男の鳩尾を突き、沈黙させた。
「そっちの男のクラスメイトだ。流石にこの人数じゃハンデが大きすぎるしな」
「ハンデだと!?」
「ふざけた事ぬかすんじゃねえぞ!!」
「はてさて、それが本当かどうかは実際に確かめてみな」
「いい度胸だ!!皆行くぞ!!」
先頭にいた不良の掛け声と共に残りの大群が再び襲い掛かってきた。
「黒崎、来るぞ!!」
「俺は問題ない。自分の事と学校の事だけ気にしてろ」
といきなり命令口調なのは気になるが、この人数に臆せず援軍に来てくれた事はとてもありがたかった。
単純に相手する数が半分になっただけでもやはり違う。
「容赦ねえな………」
剣術をやっていると言っていたが、その言葉通りの戦い方で不良達を寄せ付け無い。武器を持っていようと巧みな足捌きに自分の戦い易い距離を保ち、突きや顔面に容赦ない払いの一撃で相手をノックダウンさせる戦い方はとにかく無駄が無かった。
「あれなら突破される心配はなさそうだな。だったら………」
黒崎には悪いが足止めを任せ、一気にリーダーを倒す事に集中する。
「おらぁ!!」
「甘い!!」
相変わらず単調な攻撃ばかりで、俺は相手を掴み、投げながら道を作る。
「岩永さん………」
「狼狽えるな!!相手は2人なんだぞ!!」
そんな叫びと共に、リーダーの男の近くにいた不良が一斉に向かってくる。
「あの人数で止められなかったのをたった5、6人で止められるとは思うな!!」
要領は同じで、向かって来た相手の腕を取り、同じく投げ返して道を作る。
「くそっ、たった2人に止められたと分かれば世間の笑いもんだ!!来い!!」
ここで逃げていれば俺も苦労しただろうが、リーダーの男は自分のプライドもあるのか、逃げようとせず迎え撃とうとした。
「おらっ!!」
他の不良とは違う、右の鋭い拳。だがそれでも俺が今まで見てきた中ではとてもレベルの低い一撃だ。
いや………
(そう言う風に見えるのか………?)
ブレイブデュエルでの戦いが実際の現実世界にも影響を与えている。………そんな風に思ったが、今考える事では無い。
「一撃で決める………!!」
相手の拳に合わせ、カウンターの要領で踏み込む。
「うぉっ!?」
慌てて、逆の左で俺を止めようとするが、もう遅い。
「掌底破!!」
「うぐっ!?」
手の平の掌底部分で相手を押し出すように腹部に俺の鋭い攻撃が入る。
始めは拳で殴った際に出来てしまうであろう、手の怪我を有栖家のおばさんやおじさんにバレない様にするために、とある本にあった掌底での戦い方を参考にしたのが始まりだった。
最初こそ違和感があったものの、今では怪我も少なく、相手にもかなりのダメージを与えられる為、基本掌底を中心とした戦い方をしている。
「お、思い出した………隣の市の安久津高校の不良グループを潰した……………中学生が………まさか………!!」
「さあな?取り敢えずこれで眠るお前には関係無い事だよ」
そう言い残し、トドメとして顎に掌底を当て、相手の頭を揺らし、リーダーの男は意識を失った。
「お前達のリーダーは負けたぞ!!まだ無意味な戦いを続けるつもりか!!」
俺がリーダーを倒したのを見計らって、黒崎が叫ぶ。すぐさま不良の間に動揺が走り、1人、帰っていくと同時にそれにつられるようにどんどん不良達が学校を出て行った。
「ふぅ………」
「お疲れだな」
「まさか高校に入ってこんな目に遭うとは思ってなかったから」
気絶したリーダーの男とおいていかれた男を黒崎と共に引きずって、一か所に固め、動けなくしてから俺達は一息ついた。
「さて、どうなるかな………」
「停学………で済めば良いが………」
理由はともあれ、暴力に対して暴力で返したのだ。お咎めなしは流石に虫が良すぎると思う。
「それは心配いらん」
不意に聞こえた威圧感のある声に2人揃って振り向いた。
「理事長!?」
「理由はどうあれ、例え暴力で返したとしてもそれで救われた者も大勢おる。皆がお主達に感謝しているぞ。ならば処分も不要だろう」
「………良いんですか?」
「ああ。それともう1つ………我が学校と我が学校の生徒を守ってくれてありがとう。2人は感謝している。後は儂に任せて一応保健室に行って見てもらってから教室に戻るといい」
「あっ、はい………じゃあお願いします」
まだ突然の理事長の出現に驚きを隠せないが、取り敢えず言われた通り、保健室へと向かう。
「さて、あの2人はこれからどうしていくのか。楽しみであるな………」
2人の後ろ姿を見ながら理事長は呟いたのだった………
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