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戦国異伝

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第二百四十五話 夜においてその十一

「耶蘇教についてな」
「ですか」
「そうであろうな、そしてその時は」
 元親は飲みつつその目を鋭くさせて言った。
「その腐れ坊主達一人残らずな」
「討たれますか」
「己の欲の為に悪事を為す者を許しては」
 そうなってはというのだ。
「天下は定まらぬ」
「だからですな」
「その時は拙者もです」
「戦われ」
「そうします」
 耶蘇教の僧侶達を一人残らず討つというのだ。
「そうします」
「左様ですな」
「そうしましょうぞ、しかし」
「今は、ですな」
「耶蘇教のことは先で」
 それで、というのだ。
「今はです」
「魔界衆」
「あの者達ですな」
「あの者達をどうするか」
「それですな」
「左様、明日の戦で」
 その戦で、というのだ。
「勝ちましょうぞ」
「ですな、ただ」
「ただとは」
「明日の戦で勝とうとも」
 歳久は言うのだった。
「それでもです」
「まだ、ですか」
「戦はあるかも知れませぬ」
「次の次ですか」
「この一ノ谷で勝っても」
「あの者達は残り」
「そしてですな」
 歳久はさらに言った。
「また次の戦があり」
「その戦で勝つか」
「そして滅ぼせるか」
「そういうことですな」
「はい、おそらくは」
「ですか、では」
 元親も歳久に応えて言った。
「一ノ谷での戦の次は」
「何処で戦うか」
「そのことですが」
「何処でとなると思われますか」
「敵は西に行きますな」
 こう言うのだった。
「おそらく」
「西、ですか」
「はい、それも」
 歳久はさらに言った。
「海を」
「陸は全て抑えている」
「ですから陸に逃れることは」
 最早というのだ。
「出来ませぬ」
「それで、ですな」
「海です」
「海ならば船で逃げて」
「そして広いので」
 それ故にというのだ。
「戦がしやすいので」
「それで、ですね」
「西の海の逃れるかと」
 これが歳久の読みだった。
「それがしはそう思いまする」
「壇ノ浦か」
 義弘は目を鋭くさせて言った。
「では」
「壇ノ浦か」
「あれだと」
「はい、先に屋島今は一ノ谷」
 義弘は兄と元親にも応えて言った。 
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