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戦国異伝

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第二百四十五話 夜においてその九

「色々な酒も飲める様になりますな」
「ですな、茶も多く飲める様になり」
「酒もですな」
「色々と楽しめる」
「そうなりますな」
「有り難いことですな」
 上機嫌で四兄弟にだ、元親は言った。
「やはり天下は泰平であってこそです」
「何かと楽しめる」
「そうなりますな」
「酒も他のことも」
「色々と」
「そうですな、これまで土佐は僻地でした」 
 元親、つまり長宗我部家が領地としているその国はというのだ。
「しかし織田家に入ってから政に力を入れておりまして」
「その土佐がですな」
「豊かになり」
「僻地ではなくなってきている」
「そうなのですな」
「今は四十万石に相応しい程です」
 そこまで豊かだというのだ。
「そしてさらにです」
「豊かにしていくと」
「そうお考えですか」
「左様です、果物も植えて」
 そして、というのだ。
「さらに豊かにしていきますぞ」
「ですか、では我等も」
「政に力を入れてです」
「薩摩、大隅を豊かにしていきます」
「兄弟で力を合わせて」
「国を豊かにする」
 まさにそのことがというのだ。
「これからの我等の務めですな」
「その通りです」
 ここで応えたのは義久だった、四兄弟の長兄であり島津家の主だ。
「外で戦もして」
「ですな、本朝は定まっても」
 それでもとだ、義弘も言う。
「おそらく南蛮との戦がありますな」
「そうであろうな」
「美麗の島や呂宋に行くことになりましょう」
「本朝はな」
「ですから外で戦は続きます」
「外で戦をしますが」  
 歳久もだ、ここで言った。
「中ではです」
「治めるのじゃな」
「そうなりましょう」
「それは忙しいですな」 
 こうは言ってもだ、家久の顔は笑っていた。
「しかしそれでいて楽しそうですな」
「そうじゃな、天下は外と中でな」
「忙しくなる」
「外で戦をして領地を得て」
 義久はさらに述べた。
「その領地も治めていく」
「そうなりますな」
「何でも南蛮では紅毛人以外はごみの様に扱うとか」
 元親は飲みつつだ、その顔を曇らせて言った。
「奴婢にしておるとか」
「それはまことでありますか」 
 家久は元親のその話に驚いて問い返した、顔にもその驚きが出ている。
「奴婢なぞ今更」
「それが南蛮にはおってな」
「紅毛の者以外の人はですな」
「その呂宋の民もな」
「奴婢として扱ってか」
「恐ろしく粗末に扱っておるそうじゃ」
「それどころかじゃ」
 ここで歳久は弟に言った。
「本朝の民もじゃ」
「まさか」
「勝手に連れて行ってな」
「奴婢にしておるのか」
「その様じゃ」
「そんなことがあってはなりませぬぞ」
 家久は激昂し今にも立ち上がり刀を抜かんばかりだった、そうした顔にもなっていた。 
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