俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
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5.プリーズギブミーお小遣い
『告死天使』。
神がその仇名をつけたらまさかの本人が悪乗りしてアズライールと名乗った男。
『狂闘士』オーネストの相棒として名を馳せる彼にはとある悪癖があることが知られている。それは――誰彼かまわずポンとお金を渡してしまうことである。
「アズぅ、お願い!お小遣いチョーダイ!!」
「いいよー。はい、適当にポイっと」
「うわあぁぁぁぁぁ!?ちょっとアズ金貨をそんなに雑にっ!!」
適当に財布に手をつっこんで小銭をぺっと渡す。多分4万ヴァリスくらいだ。
渡してる相手は貧民街の方に住んでる知り合いの女の子。名前はたしかマリネッタだ。義理の弟や妹が山ほどいるので食べるのが大変らしい。だから募金感覚でホイホイあげている。ただ、昔これを利用して俺から金を受け取った奴が襲われる事件が起きたので、『契約の鎖』という『死望忌願』から作ったお守りの鎖を渡すようにしたらピッタリやんだ。
「おかしいなぁ……ただ『死望忌願』の鎖をブレスレットサイズまで縮めて、小遣い契約を阻む奴の首を絞めて失神させるだけの装備なんだけど」
「いやいやいや、皆そんなこと気付いてないよ。むしろこれ付けられたら魂の契約が完了して死後に連れて行かれるってもっぱらの噂だよ」
「マジか!!」
「マジマジ」
嘘ついてないだろうなぁ、とマリネッタまじまじ見つめてみたが、マジらしい。
しかも一部では「無利子無担保の金貸しだが、契約に際して変な条件を突きつけてくる男」とか、全然違う方向に話が飛んでしまっているようだ。俺はそんなに金が有り余った道楽者じゃあ………あるな、そういえば。
いや、オーネストがあんなんで潜る階層も深いもんだからけっこうな収入になるし、俺の武器は全部『死望忌願』のそれを何となーくダウンサイズした概念的マジックアイテムなので実体がない。よって俺は戦士の出費の半分以上を占める武器の金額消費がゼロなのだ。その上鎖があんなだから基本的にダメージ受けないし。たまの飯も半分以上はじゃが丸くんだし。趣味で商売してるし。
貯金が多分11億ヴァリスくらいあることを考えると、俺ってば二年でよく溜めたなぁ。
何が俺達に未来はいらねぇ、だ。これが貯金民族日本人の性なのか。
「でさぁ、この前偶然助けたった泥棒の子にその話したら『ウゾダドンドコドーン!!』って叫んで絶対信じてくれなかったんよ」
「絶対そんな叫び方しなかったと俺は思うんだが、そうか……まぁ冷静に考えればそんなの美味い話はないよなぁ……甘い言葉で惑わせてケツ毛までむしり取られるよなぁ……」
「で、悔しかったから『会わせてやるよ!』って言っちゃった。てへっ♪」
首をコテンとさせててへぺろ。こいつ、手慣れている。今までこの顔に何人の冒険者たちが落とされてきたのか……!!まぁ俺はそんなことをされても「もっと小遣い寄越せ」という催促が背後に見え隠れするのであげないけど。
「というわけで……こちらが冒険者大嫌い!リリルカ・アーデちゃんでぇぇ~~す!!」
「どうも!今日もニコニコ貴方の懐からお金をかすめ取るキューティサポーター!リリルカ・アーデで……………あ、『告死天使』………!!」
営業スマイルで毒を吐いた少女は見る見るうちに顔色が悪くなり、そのまま隣にいたマリネッタにしなだれかかって「きゅう」と意識を失った。
「いやぁ、驚かせようと思ってずっと黙ってたんだけど、ちょっとキツかったかぁ……」
「俺、そんなに怖いの?」
「年齢不詳、レベル不明、町で一番の危険人物を片手間で黙らせ、莫大な資金を持ち、死神みたいな気配を纏って、何の目的があるのか分からないのにいつもニコニコ笑ってる長身の男」
「何それ超怖い。俺は会いたくないなぁその人に」
「いやいや、アズのことだから。現実見ようね?アズ、知らない人からはそういう風に思われてるから」
……ごめん、知ってて現実逃避しました。
= =
リリは、それまで人生のどん底を生きてきた。
父親は借金だけを残して勝手に死に、母はおらず、同じファミリアからは良いようにこき使われ、挙句産まれ持った身体は戦いに向かぬ小人族。ファミリア内では邪魔者扱いの癖に利用される時だけは散々使われ、いざ抜けようと思うと手切れ金を払えと抜かす。
少しでも稼ぐためにと冒険者ヒエラルキーの最下位に属するサポーターをやっていると、戦闘力の低さと立場に弱さに付け込まれて取り分をゼロにされることも珍しくなかった。
冒険者たちに嘲りと蔑みを浴びせられ、彼女は冒険者という生き物を心底軽蔑した。
同時に、こんな境遇の人間を生み出すファミリアを作った神に理不尽を感じた。
いつか、絶対にこんな場所は出て行ってやる――!!
そのために必要な時は他人にこびへつらって「か弱い子供」を演じながら、虎視眈々と金目のものを盗んで逃走する瞬間を伺った。自身の魔法「シンダー・エラ」で性別や種族を偽って目を欺き、コツコツと資金を溜めてきた。何度殴られ、何度蹴られ、何度刃を向けられたか分からない。
そんな折だ。偶然知り合った貧民街の子供に、「無償で金を渡す男」の話を聞いた。
何を馬鹿な、そんな殊勝な人間がこのオラリオにいる筈がない。ここは金と欲望の街だ。求めるものを好き好んで搾取される側の弱者に渡す馬鹿がどこにいる。そう言って鼻で笑ってやった。
よしんば金を貰ったとしても、あとで与えた以上の見返りを要求するに決まっている。そうして力ある者は奪い、求め、その為に人を裏切る存在なのだ。
しかし、子供は決してそれを認めなかった。
「そんなことない!!アズは絶対そんな人じゃないもん!!困った人は助けてくれるし、悪い人から身を守るためにってすごいアイテムやポーションだってくれるもん!!」
「だーかーらー……それが騙されてるんですよ!!どうせ裏で誰かが手を引いてるに違いないし、そうでなけりゃそのうち懐いた貴方を人身売買でもして金を手に入れる気なんですよ!!」
「~~~ッ、この分からず屋!!アズは誰かの言いなりになるような弱い人じゃないし、お金に興味なんかないもん!!困ってる人は放っておけない正義の天使だもん!!」
「ハッ、何が天使ですか!!もしそうなら何でこんなに不幸な私は救われてないんですかねぇ?」
「ふんだっ!リリの不幸なんかアズに頼めばイチコロよっ!なんなら明日紹介してやってもいいわよ!?」
「へぇ~……ふぅ~ん……上等じゃないですか。なら、このリリがその男の化けの皮を目の前で剥いでやりましょう!!」
「へんだ!アズの面の皮を剥いだって奥から同じ皮が出てくるだけだし!!」
出て来ねーよどっかの大怪盗じゃあるまいし、と思いながらリリは今日に挑んだのだ。
そもそも、それで人間が救われるのなら、それはものすごく理不尽な話ではないか。自分はこんなにも苦しみながら必死にお金をためてきたのに、「助けてあげる」の一言で助かるのでは自分の努力は一体何なのだという話だ。自分以外の不幸な人間は何なのだ。
世界はそんなに都合よく出来てはいないのだ。
――そう、きっと騙されたのだ。
助けてくれる人がいるなどとうそぶいて、本当は生贄を探していたのだ。
リリは知っている、この男を。
遠目に見ただけで感じる、腹の底が冷えるような冷気。
『告死天使』――オラリオに存在する明確な『危険』。
こんな些細な言い争いで相手の話に乗ったばかりに、こんな状況に陥るなんて。
あんまりじゃないか。
ひどいじゃないか。
待っていろなんて言っておいて、この場に留めていおいて、アズなんてわかりにくい愛称まで使って人に隠して、無防備になった所を差し出すなんて。
ああ、もう私は二度と目を覚ますことはないのだろうか。
結局このオラリオという名の牢獄に囚われたまま、唯の一瞬も輝けずに。
嫌だな。折角脱却金の為にあんなにも駆けずり回ってお金を稼いだのに。
全部無駄か。全部無意味か。何と残酷であっけなく、そして虚しい。
今まで何のために食事をとり、何のために眠り、何のために喋り、何のために痛みを耐えて。
何のために――何のために――幾度となく自問しても、納得など出来ず。
ただ、自分の命には価値が無かったのだと、静かにそう告げられた気がした。
自分の顔をした、めそめそと泣きわめく女に、そう告げられた気がした。
――ゆっくりと、意識が浮上する。
ここは、地獄だろうか。それにしては暖かい。気が付くと大人用のコートが体にかけられていた。匂いを嗅ぐと、なんだかほっとするような不思議な匂いがする。なんとなくそれを羽織ったまま、ゆっくりと立ち上がる。
そこは古びた家だった。奥の方からは何やら騒がしい声が聞こえる。
「やっと目覚めたのか。よろしくリリちゃん!俺、アズ――」
「ひっ!?」
一瞬反応が遅れたせいでその場を飛び退る。そこには――紛れもない、『告死天使』がいた。
心臓が飛び上がる。と同時に、まだ心臓が動いていることも自分の持ち物が盗られていないことも認識し、まだ生きている!と心の中で叫ぶ。
しかし、相手は目の前だ。
人の魂を選定し、刈り取る者。『死』を纏う秩序なき天使。
オラリオで触れてはいけない、目に見えた『危険』。
あの手がこちらに翳された瞬間、非力な自分は喉を掴まれ手首をへし折られるかもしれない。
まずいまずいまずい殺される殺される殺される――逃げなくては――強くそう思った。咄嗟に窓から逃げようと飛び出したが、身体ががくんと沈む。
慌てて後ろを見ると、自分の細い足に鎖が巻き付いて身体を捕えていた。鎖の繋がる先が長身の男の手の上に到ったところで、やっとその正体を知る。
「『選定の鎖』……!!」
「や、別に固有名ないんだけど」
「嘘だ!!一度掴まれたら足が千切れても魂を拘束する『告死天使』の必殺技だって誰もかれもが噂してる!!」
「噂してるだけだから!別にそんな怖い鎖では………あ、そういえばこの鎖に巻かれて自力で逃げられた奴一人もいないっけ?」
何でもないように告げられたそれは、噂の真実にして事実上の死刑宣告だった。
「いやぁあぁぁぁぁぁぁぁッ!!離して……離せぇっ!!」
鎖の冷たさが、まるで足を凍らせているかのように生気を奪っていく。段々と足が凍りつくような、今までに一度も体験したこともない死への恐怖がこみ上げる。怖い、怖い怖い怖い怖い怖い逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては。
(例え、この足を犠牲にしてでも――!!)
普段ならばそんなこと、思いつきもしなかったろう。
だが、噂の『告死天使』に生殺与奪権を握られているという思い込みと恐怖が、狂気の行動を選択する。私は咄嗟に、蜥蜴の尻尾という言葉を思い浮かべて腰にある護身用のナイフを抜き取った。
この足を斬り落としてでも。
私は、生きたい。
「あああああああああああああッ!!!」
「あ、やばっ――」
衝撃――遅れて、鮮血。
刃は深く柔らかい肉に食い込み、暖かく粘性のある血が噴出して足を濡らした。
「――っとと。そんなに焦らなくても要件聞いたら外すってば」
「え……あ………」
その血はナイフと私の足の間に滑りこむように翳された、アズライールの手に深く突き刺さっていた。掌から滴る鮮血はとても暖かくて、真っ赤で、それは紛れもなく「人間の血」だった。神にさえ恐れられる男の手から溢れる、ごくありふれた血だった。
「血、暖かい………」
「そりゃ暖かいでしょ。俺だって死神とか冷血とか言われちゃいるけどれっきとした人間なんだからさ。――さてと、取り敢えずナイフは没収するとして………いてて。手の甲って神経が集まってるから結構痛むなぁ」
自分が足を切断しようとしていると瞬時に察して、鎖ではなく咄嗟に手で受けとめたのだと、遅れて理解した。レベル1の小人族の腕で振るわれた安物のナイフ。それが簡単に突き刺さる光景を見て、リリはアズライールを化物のように扱っていた己を深く悔いた。
身を挺して他人の身体を護ろうと咄嗟に動ける存在が自分に死を告げるなんて、最初からありえなかったんだ。
= =
アズライールは、ちょっとだけ涙目で傷口にポーションをたらしながら「自分の事はアズと呼んでくれ」と告げた。もう、纏う『死』の気配に必要以上の恐れは抱かない。彼は『死』を抱えてはいるが、ごくありふれた人間――冒険者というより一般人に近い気質の人だと理解できたから。
「ったく、親から貰った体なんだから簡単に切り落とそうとしない!せめて状況をしっかり把握してからじゃないと傷が増えるだけだよ?」
「ごめんなさい……」
「それと、君の細腕とあのなまくらで足一本を斬り裂くのは限りなく難しいと思う。ま、だから切れ味のいい剣を持っておけって話じゃないけど………出来る事と出来ない事の区別もつかないんじゃ、本当の危機は乗り切れない。身体は熱く、心はクールに。これ、大事だよ」
「はい………」
「もっと命の使い方をちゃんと考える事!いい?」
「気を付けます……」
リリは困惑を隠せなかった。
何なのだろうか、この昨今オラリオ中を探しても早々お目にかかれない真っ当な人間は。
こちらのせいで自分の手に無駄な怪我を負ったというのに、その件に関してはまるでどうでもいい事のように説教してくる。床に飛び散る生々しい血痕と余りにも不釣り合いな光景だった。それとも、アズの神経が常軌を逸しているのだろうか。
「で?えっと……マリ――ああ、マリネッタの事だけど。彼女から聞いた話によると、俺が他人にポンポン金渡してるのが信じられないから真偽を確かめるために来たんだっけ?」
「え、ええ……マリネッタがあんまりにも貴方が良い人だと主張するので、そんな正義超人みたいな人間が本当にいるのかと」
「………んん?ちょっと待ってくれ、マリは一体俺の事をなんて説明したんだ?」
どうもアズの脳内のマリ好感度と現実のそれにズレを感じたらしい。
リリは過去のマリの興奮した様子を思い出しながら、その時のマリの会話を再現する。
「それは……飢え死にしそうなところに颯爽と現れてお金を恵んでくれて、悪を挫いて弱きを救う『聖者』だと大層陶酔してましたよ。挙句『アズは私の王子様』とか『おヨメにいくならあの人の――」
「だっしゃらあああああああああああ!!」
「うおおおおおッ!?窓から突然マリが!?」
「おヨメ」辺りを口にしたその瞬間、家の外の窓から顔を真っ赤にしたマリネッタが吶喊してアズに猛烈なタックルをかました。衝撃にのけぞるアズだが、マリネッタはそのままアズに馬乗りになって必死に釈明を開始した。
「アズ!!ちちち、違うから!いや違わないけど違うから!!リリなんてほら泥棒だから平気な顔して嘘つく子だから今の嘘ね!!」
「え?あ、うん。ぶっちゃけ『ハギオス』って何だろうって考え事してたからちょっと聞いてなかったんだけどね」
「ならよしっ!!」
ほっと一息ついたマリネッタはアズを離し、今度はリリを勢いよく捕まえて血眼で睨みつける。正直、キレた冒険者の眼の10倍は怖い気がする。というか鬼が憑依していらっしゃる。
(な、に、を!!さらっと乙女の純情バラそうとしてんのよ!!)
(え?え?だってあんなにべらべらしゃべっているものだから、てっきり本人の前でもあんな感じなのかと……)
(ンなわけあるかい!!私はアズの前ではちょっと小生意気な少女くらいで通ってるのよ!!)
どうも彼女は初恋をギリギリまで引っ張っていく気らしい。自分が貧民であることや家族の事を考えるとどうしても遠慮がちになってしまうが、それでも好きなので本人には恥じらいから悟られないようにしているようだ。
(意外としおらしいんですね………)
(うっさい。とにかく、あのことは私がイイっていうまで絶対秘密よ!)
閑話休題。結局マリネッタの話の肝心なところを聞き逃したアズは何事もなかったかのように話を続ける。
「あー……それで、リリちゃん。取り敢えず俺と君は出会った訳だけど、会って結局何する気だったの?」
「それは、その……そんな絵にかいたような善人居る訳ないと思って、化けの皮剥がしに来たんです、けど、その………」
「想像以上に大したこと無くて肩すかし喰らったかい?」
「い、いえいえいえいえ!!私の想像した以上にお優しい方で、疑った自分が恥ずかしくなったと言いますか!!」
「………俺、そんなに優しいかね?正直なんで自分が天使呼ばわりされてんのか分かんないし、むしろただ自分勝手なだけだと思うけど」
後ろ頭をぼりぼり掻いたアズは、居心地悪そうに貧乏ゆすりする。本当に自覚はまったくないのだろう、ふさがったナイフの刺し傷のことも頭からすっぽ抜けているようだ。
普通手を刺されたら悲鳴を上げて逃げるか激昂して反撃するかだ。痛みは死を連想させ、それは自身を守るための行動を誘発させる。逃げも反撃も、本質的には自己防衛本能だ。なのにアズはそのどちらも選ばなかった。
その時点で既に、彼はリリの想像を超えた人物だった。
「このたびは申し訳ありませんでした………」
「やい、いいよいいよ。どうせ今日は相棒がファイさんに捕まってて暇だったしね。ただ……正直俺の顔見て気絶されたのはショックだったな……」
ずーんと落ち込んで地面に「の」をたくさん書きはじめるアズの子供っぽい仕草に、いよいよリリは全ての警戒心を失った。本当に冒険者らしくない、普通の人だ。そう思うと、『告死天使』と怖がっていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
珍しく――カモや獲物を発見した笑みとも作り笑いとも違う自然な笑みが、漏れた。
「あ、そうだ。ついでだからリリちゃんにも小遣いあげとくか。はいこれ」
「え?あ、いいですよ別……………………に?」
イヤイヤ言いつつその瓶を受け取ったリリは、再びカチンと固まった。
その瓶がなんなのか、なかでチャポチャポ音を立てる液体が何なのか。
『ソーマ・ファミリア』のリリルカ・アーデにはハッキリと分かってしまったから。
「あの、つかぬことをお聞きしますが………これ、『神酒』ですよね………?」
「ああ、まぁね」
「あの市場にはロクに出回らなくて、バッカみたいに高くて、信じられないくらい貴重なものですよね?」
「ま、そうらしいね」
「あの……どこで手に入れたので?」
「ん?ああ、ソーマ・ファミリアの主神とは相棒がちょっとした知り合い(?)で、結構貰ってるんだよ。でも俺もそこまでガブガブ酒飲まないから余っちゃうんだよね。売ったらいい小遣いになると思うよ?」
「――――」
要するに、自分が必死こいて抜け出そうとしているファミリアの主神にこの人は伝手があって。
自分の除退金をゆうに超える値がつく酒を、主神はこの人にポンと渡していて。
それでいて、ひょっとして。
「あの、アズ様。その……主神ソーマに頼んでリリを脱退させるよう促すとか、出来ますか?」
「え、君ソーマ・ファミリアの子だったの?んー、まぁあの人は結構そういうの無関心だしイケると思うよ?」
「おお、なんだか分からないけど早速アズがリリの問題を解決したみたいね!どんなもんだい!!」
「いやいやマリは何もしてな………ん?どしたのリリちゃん固まっちゃって」
「………世間、狭すぎーーーーーーーッ!!!」
リリはこの日二度目の失神をする羽目に陥った。
どうしてだろう。自由になった筈なのに………お金も手元に残りそうなのに………達成感ゼロ。
後書き
リリの攻撃で血を流す程度の耐久力なので、当てれば勝てる(当たるとは言ってない)。
オリ主によるキャラ救済って、救われる側からしたらどうなんでしょうね。時々ですが、誰かが誰かを救うシーンを見ていると「お前は俺に守られてればいいんだよ」って態度に見えるのは、私が反逆者気質だからなんでしょうか。
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