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艦娘達の長い一日

作者:よろず屋
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追跡

川 上流
深海棲艦の群れが川の流れに逆らい上昇していた。
戦艦を旗艦とし、後に重巡、軽巡2隻が続く
海の海流とは別格の速い流れに、
4隻の進軍はゆっくりとしたものになっていた。

重巡リ級「オモッタヨリ、ナガレ、ハヤイ」
機嫌悪そうに舌打ちをする。
戦艦ル級「フフ、ヨイデハナイカ、ユルリトマイロウゾ」
優雅に進行する一際大きい深海棲艦
艦娘の間では、戦艦ル級と呼ばれている。
凛とした表情、死人の様な白い肌、
巨大な艤装とは対照的な細い身体はキュッと引き締まった服を纏い、
豊満な胸とスレンダーなボディを際立たせていた。

しかし、こいつに気を許してはならない。
人類と敵対する存在、深海棲艦
その白い腕には巨大で醜悪な砲門を携え、背には超火力の主砲、
数々の戦場で何人もの艦娘を葬って来た、憎むべき敵なのだ。
重巡リ級「シカシ、アマリユックリシテイルト、ジャマガハイルオソレガ、、」
戦艦ル級「ジャマダト?カンムスドモノ、キチニハ、ヨウドウタイガイル。
ソシテ、コノサクセンヲシル、テキハイナイ。
ツマリ、シッパイスル、ヨウインハ、ヒトツモナイ
アセルコトハナイ、ジキニヤツラヲ、キレイニナガシテヤレル
ククク、、メニウカブゾ
ヤツラガ、モガキクルシミ、シンデユクサマヲ、、」
戦艦ル級は顔を歪め、ニタニタと笑う。

ボスには逆らえない、震える手を抑え、
重巡リ級は軽巡ヘ級に聞いた。
重巡リ級「オイ、コウホウニイル、クチクカンドモヲ、ヨビモドセ
サクセンケッコウハ、チカイ」
軽巡へ級は困った顔をして答えた。
軽巡ヘ級「ダメデス、サッキカラ、ズットヨンデルノニ、オウトウシナクテ」
戦艦ル級「ヨイヨイ、アソバセテオケ、サクセンニ シショウハ ナイ」
軽巡へ級「ボス、ワタシタチ、センコウスル」
後ろに居た軽巡2隻は、戦艦、重巡の前に出てきて提案する。
軽巡ホ級「オソイノ タイクツ サキニイッテ ダムハカイスル」
余りにも遅い進軍に痺れを切らしているのだ。
重巡リ級は恐る恐る、戦艦ル級の顔を見る。
しかし、戦艦ル級の表情は柔らかい。
戦艦ル級「ヒトツ キイテイイカシラ?」
いつもと同じ声のトーン、雰囲気だが、、
戦艦ル級「アナタハ コノサクセンガ シッパイスルト オモッテイルノカシラ?」
軽巡へ級「オモッテ、、、ナイ」
戦艦ル級「デショウ?ワタシハ コノサクセンヲ タノシンデル」

戦艦ル級が、スーッと息を吸うと、
体から金色のオーラが溢れる。
鬼の形相になり、ドスの効いた低い声に変貌する。
戦艦ル級「コノワタシノ タノシミヲ ウバウトイウナラ
ソウオウノ タイカヲハラッテモラウ」
瞳が燃え、砲門が軽巡達に向けられた。
軽巡へ級「ヒ、ヒィィ」
軽巡ホ級「ス、スイマセン!」
軽巡は震え上がり、すごすごと後退した。
戦艦ル級「ハナウタデモウタイナガラ 、ユックリ ツイテキナサイ」
体にまとったオーラは消え、いつもの整った顔に戻った。
軽巡へ級「マッタク ボスハ イツモ コレダ
軽巡ホ級「ホントウニ イヤ」
軽巡達は鼻歌ではなく、愚痴を垂れながらチンタラ続いた。
しかし、軽巡達は
後方から高速接近する者に気がつかなかった。

叢雲「見つけたわ!」
足の魚雷を構え、狙いを定める。
叢雲「そこよ、食らいなさい!」
射出された数本の魚雷は水中を泳ぎ、軽巡目掛け加速する。
彼女らが気付いたのは、着弾してからだった。
激しい炸裂音と共に、軽巡へ級の右弦の砲門が吹き飛んだ。

軽巡へ級「グワー!?」
何が起こったのか、数秒の時間を要した。
軽巡ホ級「テ、テキシュウ!?
ゼンインニ ツウタツ、コウホウヨリ テキシュウ!」
叫ぶ様な声で通信を入れる。
叢雲「一撃で仕留められなかった、、!?」
手に持つ、連装砲を構えると、
高速接近しつつ、砲撃態勢に入る。
叢雲「くっ、手が震える、、
疲労が溜まって照準が甘くなっている」
片手で持っていた連装砲を両手で持ち直し、砲撃した。

軽巡ホ級「ヨケロ!」
横に飛んだ軽巡へ級は、着弾を免れ、
水飛沫を被る。
叢雲「外した、、!なら接近して!」
軽巡ホ級は、軽巡へ級の前に立ち、
叢雲に対して、次々と砲撃をする。
軽巡へ級も態勢を持ち直し、攻撃に参加する。
叢雲はジグザグに進み、砲弾を避けながら、近づいてくる。
軽巡ホ級「ハヤイ!クソッ、アタレ!アタレ!」
軽巡へ級「シネ!」
叢雲の周りに水柱が上がる、
それらをかき分け、叢雲は進む
叢雲「この距離なら外しはしない!」
再び構えた連装砲が火を吹く。
砲弾は軽巡ホ級の肩をかすめ、
軽巡へ級の脳天に直撃!
軽巡へ級「グワー!!」
重い炸裂音と共に軽巡へ級の部品が吹き飛び
本体は川に沈んで行った。
軽巡ホ級「オイ!シッカリシロ!」
軽巡へ級の手を掴み引揚げようとするが、その腕に再び力が入る事は無かった。
叢雲「やったわ、あと1隻!、、、っ!?」
もう一隻に照準を合わせた所で、
叢雲は動きを止めた。

戦艦ル級「タノシソウネ ワタシモマゼテ」
先行していた戦艦ル級、重巡リ級が、
無線を聞きつけ、戻ってきたのだ。
3対1、、
叢雲は冷や汗をかく。
重巡リ級は砲門を構えると、
戦艦ル級が手を出し、制止した。
戦艦ル級「セッカクノ オキャクサンヨ、タノシマナクチャ
ソコノカンムス、チャンスヲヤル。
ワタシヲ ウチナサイ」
戦艦ル級は無防備に、両手を広げてみせる。

重巡リ級「テキガキタトイウコトハ、
サクセンガバレテルト イウコト、
ハヤクタオシテ サクセンケッコウヲ!」
戦艦ル級が焦りながら進言する重巡リ級を睨み付けると、
重巡リ級は大人しくなった。
戦艦ル級「イッタハズ、ワタシハコノサクセンヲタノシンデイル、ト。
ジャマヲスルナ」
フフフと笑うと叢雲に向き直る
叢雲「何を考えているの?」
敵の不可解な行動に不安がよぎる。

戦艦ル級は薄笑いを浮かべ
攻撃を待っている。
それがより不気味さを増していた。
叢雲は不穏な気持ちを振り払うように、武器を構えた。
叢雲「私に隙を見せた事、後悔しなさい!」
ありったけの魚雷と連装砲を戦艦ル級目掛け、放つ。
水柱と爆炎が戦艦ル級を包む
彼女は表情一つ変えず攻撃を受ける。
心配そうに重巡リ級、軽巡ホ級は様子を見守る。

軽巡ホ級「ボ、ボス、、!」
重巡リ級「マテ、ボスニハサカラエナイ」
止めようとする軽巡ホ級を重巡リ級は抑えた。
攻撃が終わり、叢雲は髪を払う。
叢雲「、、、さぁ、次は誰から沈みたいの?」


重巡リ級「フフフ、、クク、ハハハハ」
重巡リ級は実に楽しそうに笑った。
叢雲「っ?何がおかしいの!?」
異常な事態に動揺を隠せない。
まさか、あれだけの攻撃を加えたのに、、
叢雲「あんた達の大将は沈めたわ!気でも触れたの!?」
軽巡ホ級「シズメタ?ヨクミテミロ」
先程、攻撃していた戦艦ル級の爆煙が徐々に晴れる。
そこから無傷の戦艦ル級が顔を出した。
その表情はひどく退屈そうであった。

戦艦ル級「ツマラナイ、ヨワスギル
ココマデコレタカラ、スコシハキタイシタケド、
ショセン、クチクカン、カ」
叢雲「なんですって!?」
ありったけの攻撃をぶち込んだ。
手ごたえもあった。
自分の全力で戦った。
叢雲「あ、、」
自分が震えている事が分かった。
勝てない、圧倒的過ぎる。
感覚が、体が、理解しているのだ。
叢雲は戦艦の砲門の一つが自分の方を向いているのに気付かなかった。
砲撃音を聞いてから、ようやく自分が狙われていた事に気付く。
叢雲「ガハァ!?」
回避行動の反応が遅れ、艤装に被弾した。
重い弾頭が背負う煙突にモロに直撃、
煙突は潰れ弾頭が爆発する、
衝撃で水面に叩きつけられた。
持っていた連装砲も手放してしまい、
何処かへ吹き飛んで行く。

戦艦ル級「ザコガ、チョウシヅイテ、、」
期待外れの艦娘に、不機嫌になった戦艦ル級は立ち去った。
叢雲「、、ま、ちなさい、よ」
火花を散らす艤装、流れ出すオイル
爆発こそしなかったものの
艤装は大破、叢雲自体も瀕死の重傷だ。
身体中の骨が砕けているらしい。
激しい痛みが襲い、立っているのさえ辛い
セーラー服は破けあちらこちらから血が出ている
戦う事はおろか、移動すらままならない。

重巡リ級「フフフ、、」
構えもせずに重巡リ級は叢雲に近づく。
叢雲はよろよろと魚雷を構える、が、
重巡リ級にむしり取られる。
戦う為の武装を全て失った叢雲
重巡リ級は叢雲の首を掴み、持ち上げた。
重巡リ級「ククク、ブザマナカッコウ、コノママ シメコロシテ アゲヨウカシラ?」
ニヤニヤ笑いながら、ゆっくりと手に力を込める。
叢雲「ううっ、、」
苦しそうに表情を歪める叢雲を楽しそうに眺める。
軽巡ホ級「トドメハ ワタシニ マカセテイタダケナイデショウカ
ワタシハ ドウリョウヲ コノカンムスニ」
憎悪に満ちた顔で叢雲を睨む。
重巡リ級「、、ソウダッタナ ワタシハ サクセンケッコウヲ
サイユウセンニ カンガエテイル
アトハ オマエニ マカセル」
重巡リ級は叢雲の顔にツバを吐き掛けると、川に叩きつけた。
叢雲「ぎゃぁ、、」
そして、頭を足で踏みにじった後、川を上りはじめた。
叢雲「ゲホッ、ゲホッ!アガァッ!」
蒸せ返る間も無く、軽巡ホ級に蹴り飛ばされ、川縁に倒れこむ。
叢雲「、、、やられたわ、、軽巡1、は沈めたけど、ボスの戦艦には、、まるで歯が立たなかった、最後まで抵抗するけど、いつまでもつか、、
ぎゃぁん、ゔがぁぁ」
踏みつけられる。
軽巡ホ級「ナニヲボソボソト、ハナシテイル? イノチゴイデモ、スルカ?」
ニヤニヤ笑いながら、叢雲のアゴを持ち上げる。
叢雲「ぺっ!誰が、、するもん、か」
軽巡ホ級にツバを吐く。
軽巡ホ級「ジブンノ タチバガ ワカッテナイ!」
叢雲「グハッ!ガハッ!」
軽巡ホ級は何度も何度も叢雲の腹を殴った。

軽巡ホ級「マダ、ヤリタリナイ
モットイタブッテカラ、コロシテヤル」
軽巡ホ級は叢雲を鎖で締め上げ、
岩に縛り付けた。
そんな状況でも、叢雲は敵を睨みつけていた。
 
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