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IS〈インフィニット・ストラトス〉駆け抜ける者

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第1話

「…此処は…?」

『俺』は死んだ、死んだ筈だ。

わき見運転で跳ねられそうになっていた異国の幼い少女を、身代わりになって突き飛ばして助けようとしたから。

ダンプカーに衝突されたのだ、万に一つも助かるわけがない。

しかし、目に入るのはよく見知った天井。

ゆっくりと起き上がり、周りを見てみる。

お気に入りの本が種類別に整頓された本棚、やりっぱなしで片づけ忘れていたゲーム機、少し年季の入った勉強机…。

見間違えるはずがない、まごうことなき俺の部屋。

よくよく自分を見てみれば、ベットの上にいた。

時刻は夕暮れ、窓から西日が差し込め、部屋に影を作る。

「…夢、だったのか?」

変わりない自分の体を触って確かめながら、一人呟く。

「やあ、おはよう」
「!!?!?」
「ああ、そりゃ驚くよね。まあ、気にしないでよ」

ついさっきまで俺以外誰もいなかったこの部屋に、勉強机の椅子に座っている『誰か』がいた。

西日が逆光となっているので、正体は分からない。

「あんたは何だ?そして…、これは夢なのか?」
「『僕』が何か、と言われてもね。答えるならば、僕は僕で、ここは夢だね」

僕と名乗るソイツは、答えになってないような答えをくれた。

ここは夢…。ならば、

「やはり、俺は死んだのか?」
「…まあ、今はその話は置いといて。それより、僕と話してくれないかな?」
「…いいだろう」

確かに、死んだ後の事は後でいくらでも考えられる。

どうせ死ぬ間際に見ている長くて短い夢なのだ、少しぐらい付き合ったって構わないだろう。

そう思い、名も知らぬソイツと四方山話に興じるのだった。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

話していると、驚くほど奴と俺は話が合う。

意外にサブカルチャーにうるさく、アニメの作りの不満など少しついて行けない内容はあったが、基本的には意見は一致していた。

「…だったらさ、『IS』についてどう思う?」
「…いやぁ、ハーレムしてるな、としか」
「だよねぇ。女しか使えない超兵器、その真っ只中に現れた男…、突拍子も無いよねぇ…」
「…つまり何が言いたいんだ?」

訂正しとくと、ISはパワードスーツだぞ、建前上は。

「だからさ、他に男が使うISが有ったら、面白いと思わない?」
「超展開にはなるだろうな、間違い無く」

居たら居たで面白いかも知れないが、それは客観的な話であって、当事者ともなれば、とても笑っていられる事態では無いに違いない。

「まあまあ、もし仮に、だ。そんな事になったらその人のISがどんな物になるか、考えてみない?」
「どんな物、ねぇ…。まあ、常識から外れた代物じゃないか?」

全身装甲だったり、歩く武器庫だったり。

「因みに、君ならどうする?」
「俺?…俺だったら…、機動力重視かな」

どれだけ火力を高めようと、命中しなければ意味がない。

故に、重視すべきは、縦横無尽の高い機動力とそれに耐えうる装甲強度であろう、と俺は思う。

「武器は?」
「あくまで俺が使役する前提なら、機体そのものに備え付けられてる物だな」

備え付けられてる武器なら、逐一変える手間が省け、狙いがつけやすい。

無論、攻撃が察知されやすい難点はあるだろうが、十分補える。

「例えば、両手の甲の球状の武器からエネルギー波を出してみたり」

その上で、左右で運用法を手数と破壊力で分けたり、直接拳や脚、全身に纏わせたり。

「それだけじゃ、少し弱くない?」
「前提として超機動力とその安定に重きを置いた仕様だからな」

繰り返すことになるが、当たらなければいいのだ。

「ふむふむ、中々凝ってるね…。でも、僕のアイデアも聞いてもらって良いかな?」

俺は、ソイツのアイデアに耳を傾ける。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ソイツのアイデアを、採用したり拒否したりした結果、こんな仕様になった。

・機動力及び機体強度重視。
・武器は両手の球、左が連射、右が収束弾。
・単一仕様にハイパーモード。一定時間能力を上昇。
・胸部と腰に装甲追加。
・機体色は濃紺。ハイパーモード時は金。

仕上がった内容を見てみれば、中々楽しそうな機能になっている。

「これなら、大半のISと互角以上に渡り合えるかもな」
「でしょー?…でさ、もしもの話なんだけどさ、この機体を持ってISの世界に転生出来るって言ったら…、行く?」

最初は得意気だったソイツは、神妙な態度で突拍子もない問いを出してきた。

「行く行かない以前に行けないだろうが。二次元の世界だぞ?」
「…行けるよ」

頭沸いたか?コイツ。

「ここに、二つ『カプセル』がある。赤いのと青いの。青いのを飲めば、何もかも全部忘れて、新しい人生を歩める」
「…赤い方は?」
「『君の知らないISの世界』へ。知識と動かし方と機体を持って」

差し出された二色のカプセルと水の入ったコップ。選ぶ前に、どうしても聞いておかねばならぬ単語が一つ。

「俺の知らないIS?」
「君が行くと物語にイレギュラーが生じる。それは、どうなるか、何が起こるのか誰にも予測できない」

もしも俺がISの世界に行けば、本来起こり得ない出来事が発生する、か。

「どちらにせよ、答えは出てたけど」

『青い』カプセルを手に取り、口に水と共に流し込む。

「悪いな、どうも俺にはその手の話に興味が出なくて…、な」
「大丈夫、分かっていたから」

カプセルの効果か、眠くなってきた。

「目が覚めたら、全部終わってるから。そうだ、最後に、名前、教えて?」
「…『丹下智春(タンゲトモハル)、…」

眠気に身を任せ、俺の意識は闇に落ちていった。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『…き…、…さ……』

眠い、ただただ眠い。

何か夢をみた気がするが、全く思い出せない。

『お…ろ、あ…だ…』

にしても何やら聞こえる。しかも我が身を揺さぶっている。

「…誰だよ?」
「お、起きたか?」

どうやら、誰かに起こされていたらしい。全く一体誰が…、…んんん?

妙だ、何かおかしい。

そもそも俺は、ダンプに跳ねられ死んだんだろ?それが何で何者かに起こされてるんだ?

「…おい、二度寝か?」
「…!い、イヤイヤ、今起きる」

そう、百聞は一見にしかず、だ。見ればわかるだろう。

むくりと身を起こし、目を開いて周りを見る。

広めのお部屋、ふかふかなベッド、

「珍しく目覚めが悪いな、何かあったのか?」

そして、こっちを見ている織斑一夏。

「!!!???」
「何だよ、その反応?」

思い出してきた、夢の内容。

騙された、と気付くも時遅し。俺は、ISの世界に転生してしまっていた。 
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