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アインクラッド篇
断章 南十字の追憶
破局
二本の槍が交錯する。火花が弾け、双方の体にダメージエフェクトが刻まれる。
「………お姉様、案外やりますね?」
「当然よ。伊達にアンタより4年長く生きてないんだから。」
既に十分以上経過している。正直俺もここまでやるとは思っていなかった。既に痛みは引き、一緒に攻撃に加わるべきなのだろうが、完全に入るタイミングを見失っていた。
「さてと、埒が開かないわね?真奈。」
「ええ、そうですね。琴音お姉様?」
互いに削りダメでHPが減っているが、未だ六割を保っている。だが……
「姉貴!、真奈!」
「城介!アンタは黙ってなさい。」
「けど………、」
正直この二人が本当に本気を出したら、恐らく六割のHPなど一瞬で消し飛びかねない。
「どっちか死ぬぞ!!」
「アンタが入ったって同じよ!」
「お兄様、一対一に水を差すのは無粋ですよ?」
そう言うと二人は、俺を無視して構え直した。ああ、もう、勝手にしろ!って叫びたいところだがそうもいかない。が、言っても聞くような二人ではない。
「………分かったよ。」
引き下がった振りをして、後ろ手であるものを引き抜く。レベル6麻痺毒を塗った投剣だ。念のために二本常備している。
「フフフフフフ」
「ハアァァァ!」
両手槍ソードスキル《コメットストライク》、愚直ですらある単発重攻撃。白い尾を引き、全くの同軸直線上を二つの彗星が疾る。こうなれば、勝負を決めるのは技の速度だ。その為、二人とも互いのみに集中している。
今ならーーー
「………シッ!」
投剣スキル《ゲイルスロー》空色のエフェクトを纏った二本のナイフが二人に向かう。後で無茶苦茶怒られるだろうが知ったことではない。
「boorishだぜ?投げナイフなんて。」
「!?」
何者かに、背後から恐ろしい速度で追い抜かれた。黒いフード付きのポンチョを被ったその男は、手にした大振りのダガーで、俺が投げたナイフを落とした。二人の技は止まらない、そしてーーーーー
アマネの槍が、アマナの胸アーマーを捉えた。
アマナの槍が、アマネの腹を深々と刺し貫いた。
「姉貴!!?」
「おっとっと、行かせないぜ?兄弟。」
駆け寄ろうとするも、謎のダガー使いに阻まれる。
「邪魔だぁぁぁ!!」
「!……shit.」
両手剣を叩き付けると同時に手放し、腰に戻してあった片手剣を抜き打ちする。当たりこそしなかったが退かせる事は出来た。その隙に脇を抜け、姉に駆け寄る。
「姉貴!」
「っ痛~~~………。」
HPはみるみる減少していく。バッドステータスの一つ、出血だ。持続時間は短いが、ダメージ量が多く、さらに効果時間中はポーションや結晶といった回復アイテムは使えない。だが、これはフロアボスクラスのモンスターしか使えない筈だ………
「無駄ですよ?《死神》スキルのmod、《出血付与》です。お姉様の死は絶対です。」
「………みたいね。」
「姉貴………?」
「城介、アンタがアマナを止めなさい。真奈、今日は退きなさい。」
「おいおい、お姉さん。虫がよすぎな………」
「分かりましたわ。」
「What's!?本気か!?」
「ええ。というか、貴方はどなたですか?」
「っと……自己紹介はまた今度だな。」
「?」
「攻略組の連中だ。流石に二十人はキツい。」
ああ、と無感動な返事だけ残してアマナは身を翻した。
「御免ね、城介。アンタには面倒ばっかりで。」
「んなこたどうでもいい!死ぬな!!」
「………フフフ♪大丈夫よ。自分で選んだ結果だもの。死んでも文句は言えないわ。」
「………」
「いい?城介。真奈を止めて。そして生きて。自殺なんて選択肢はあげないからね?」
「……姉貴はいつも、勝手だな。」
「ええ、アンタに拒否権はないわ。昔からでしょ?」
「…………」
HPが1割を切り、ゼロへと向かう。
「………そろそろね、多分ホントに死ぬんだろうなぁ~。」
「……………」
「フフ♪じゃあね、城介。」
「………ああ、またな、琴音姉さん。」
そして俺の姉、アマネーー天川琴音は、その体を無数の青い欠片に変えた。
後書き
シリアス無理~~~~~~
アマギ「ひでぇ出来だな。」
勘弁して。これ以上は無理。これでも三日間悩んだんだよ?
アマギ「にしてもこれは………」
アマネ「ないわー。」
アマナ「ないですわ。」
きょうだい揃って………ぐすっ
アマギ「そう言えば、今回で俺らの本名出てきたな。」
アマネ「そうね。一回自己紹介しとこっか♪」
アマナ「賛成ですわ。」
アマギー天川城介「俺が天川城介。長男だ。」
アマネー天川琴音「私が琴音。長女よ。一番上よ。」
アマナー天川真奈「次女の真奈です。よろしくお願いいたします。」
最後に、読者の皆様お気付きでしょうが、某包丁使いの殺人鬼もこの事件に絡んでます。『南十字の追憶』次回完結です。
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