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イエロージャーナリズム

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第三章

「一体」
「何でも日本人が来ると地価が下がるとか」
「そう言ってたのか」
「それで追い返したらしいのよ」
「日本人が来たらか」
「アジア人がね」
「ああ、最近アジア人嫌いな奴多いな」
 ヘストンは顔を顰めさせて言った。
「イエローモンキーとか言ってな」
「というかあなたがよ」
「俺がか」
「そう、黒人の人でもお肉売るでしょ」
「俺は別に誰が来てもマナーを守っていれば売るさ」
 店の肉をというのだ。
「そうしてるさ」
「そうなのね」
「ああ、俺はそういうのはこだわらないんだよ」
「そうした人の方が少ないから」
「そんなものか」
「教会でもアジア人来たら追い返す牧師さんがいるわよ」
 神に仕える者でもというのだ。
「黒人の教会に行けとか言ってね」
「別にどの人でもいいだろうにな」
「だからそうした考えの人の方が少ないのよ」
「またそう言うんだな」
「実際にそうだから」 
 妻は煮た野菜を食べながら夫に話した。
「日本人がこのカルフォルニアに攻め込んで来るって言う人もいるわよ」
「無茶苦茶な話だな」
「それで日本人が来ているのはね」
「そのはじまりか」
「そうも言われてるわよ」
「根拠はないだろ」
「新聞が書いてるのよ」 
 妻は根拠になりそうな話を出した。
「これがね」
「新聞がか」
「そう、それで言ってるのよ」
「その新聞が嘘書いてないか?」
 ヘストンは目を顰めさせてだ、フォークとナイフで豚肉を焼いたものを切りながら妻に問い返したのだった。
「それに騙されていないか?」
「新聞が嘘書くの?」
「誰だって嘘を言うだろ」
 夫は妻にこの世のことを話した。
「どんな立場の奴でもな」
「じゃあ新聞記者も」
「嘘吐きだっているだろうさ」
 こう妻に言うのだった。
「それこそな」
「だからなの」
「その新聞が嘘書いてることだってあるだろ」
「じゃあ」
「それに騙された馬鹿がな」
「騒いでいるっていうの」
「そうかも知れないだろ、特にな」
 ヘストンはオーフェンと話したことを思い出しながらだった。妻にその話もした。
「黄色い紙の新聞は注意しろよ」
「その新聞は嘘を書いているかも知れないの」
「ああ、結局売れればいいんだからな」
「新聞も」
「その為に嘘を書く奴もいるだろう」
「酷い話ね」
「だから日本人についてもな」
 その彼等への報道についてもというのだ。
「嘘を書いてる奴がいるかもな」
「新聞を売る為に」
「そんな奴もいるかもな」
 こう言ってだ、ヘストンはそのへの字の口で妻が作った夕食を食べながらもあらためて不機嫌な気持ちになった。
 その彼にだ、オーフェルがまた肉を買いに来た時にだった。彼にある新聞を手渡してからこうしたことを言った。 
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