隣は魔女
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第二章
「十字架を向けたのに」
「わしの宗教はカトリックじゃ」
「魔女がキリスト教徒!?」
「そうじゃが」
「そんな、嘘だ」
「嘘ではないぞ、わしはな」
それこそというのだ。
「神を深く信仰しておるつもりじゃ」
「魔女は悪魔の僕なんじゃ」
「ほっほっほ、それは童話の話じゃ」
「童話の?」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「魔女といっても悪魔を崇拝はせぬ」
「じゃあどうして魔法を」
「魔法は悪魔から授かるものではないのじゃ」
「じゃあ何なんだ」
「研究をして身に着けるものじゃ。占いや勉強と同じだ」
「そんな、勉強と一緒なんだ」
「一緒じゃよ、学ばなければ身に着かぬものじゃ」
魔法もというのだ。
「そうなのじゃ」
「それならこれを読めるか」
ヴォルフガングは今度は聖書を出して魔女に突き付けた。
「悪魔と契約しているのなら触ることも出来ないぞ」
「聖書か」
その聖書をだ、魔女はヴォルフガングから受け取ってだった。
開いてだ、今度はこう言った。
「やはり読むと心が洗われる、これでも毎朝読んでおる」
「嘘だ、手に持ってるどころか読むなんて」
「だから悪魔と契約はせずにじゃ」
「キリスト教徒で」
「魔法は勉強をして身に着けた」
そうだというのである。
「そうなのじゃよ」
「そんな、じゃあ魔女は」
「占い師や薬剤師と思ってくれ」
「薬屋さん?」
「薬の調合もしておるからな」
「イモリや赤ちゃんの死体を使って」
「そんな物騒なものは使わぬ」
薬の素材にというのだ。
「あとお金は貰うが魂も貰わぬ」
「お金だけ?」
「そうじゃ、わしの使う薬もじゃ」
それもというのだ。
「れっきとした法律に従ったものじゃよ」
「魔女が法律を守るなんて」
「法律を守らないと捕まるわ」
「魔女は法律を無視するんじゃ」
「無視せんわ、まあ魔法で水に浮かぶことは出来るがな」
この言い伝えはその通りだというのだ。
「あと使い魔は黒猫がおるぞ」
「水に浮かんで使い魔がいても」
「キリスト教徒で法律は守っておるぞ」
「魔女でも」
「そのことはわかっておいてくれると嬉しい。とにかくお隣同士になったのじゃ」
それならとだ、魔女からヴォルフガングに話した。
「宜しくな」
「ううん、魔女なのに」
「これ、何をやってるんだ」
「騒がしいと思ったら」
ここで両親が来てヴォルフガングを叱った。
「来られたと思ったら」
「あんたが騒いで」
「魔女がどうとか言って」
「前に注意したのに」
「いやいや、心配は無用ですじゃ」
魔女はヴォルフガングを叱る両親にも飄々と笑って返した。
「こうした風に言われることがまた楽しみなので」
「魔女だからですか」
「ヴォルフガングみたいに言われることが」
「これがまた楽しみというか実は何十年振りかですじゃ」
ヴォルフガングの様に言う人間に会ったことはというのだ。
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