魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico?幽霊の正体見たり枯れオババ
前書き
幽霊の正体見たり枯れオババ/意:恐怖心や猜疑心の気持ちがあると、何でもないものまで恐ろしいものに見えるというたとえのはずだが、実際にヤバいものが現れたという例え。
†††Sideイリス†††
海水浴の時間もとうとう終わっちゃって、その後の夕ご飯はバーベキュー大会。昼間の炊事場で、各班が自由に人数分の食材を焼いて食べる。もちろん各班と炊事場が隣接してるから、楽しくお喋りしながら作って食べる、ってことが出来る。そういうわけで、わたし達チーム海鳴+咲耶の8人は、「美味しい~♪」一緒に食べてる。
「なのは、あ~ん♪」
焼き担当を買って出たなのはに、わたしは自分の取り皿からお肉を箸で取って口の前に運んだ。なのはは「ありがとう、シャルちゃん。! あ~ん♪」パクっと食べてくれた。すると今度は「じゃあ、わたしがはやてにあげるよ! あ~ん♪」アリシアが、なのはと同じ焼き担当になったはやてにお肉を「あ~ん♪ うん、美味しい!」食べさせた。
「お前らな、肉ばかり食べるなよ! 野菜を食べろ、野菜を! あ、こら! 勝手にトウモロコシを網に置くな馬鹿!」
そんな怒声がわたし達のところに届いた。そこにはルシルを班長にした4班の亮介くん、天守くん、護くん、それに別の班の男子たち合わせての8人でバーベキューをしているんだけど、「大変そうやな~」はやての言うようにルシル1人で切り盛りしてるからかなり大変そう。
「なあ、ルシル君! わたし手伝おうか?」
孤軍奮闘中のルシルにそう声を掛けるはやて。するとルシルより早く「賛成!」とか「超歓迎!」とか「八神さん、おいでおいで!」とか「女の子に作ってもらう料理・・・良い・・・!」とか、はやてを大歓迎する男子たち。
「ふざけろ、お前ら。始めからお前らの誰かが手伝えば済む話なんだよ。はやて。こっちは大丈夫だから、コイツらに近付かないようにな」
「はあ? ルシル、一緒に住んでるからって八神さんを独り占めにする気か? 羨ましい奴め!」
「そういやアイリちゃんは元気してる? ・・・あ、なあ、ルシル君。お義兄さんって呼んでいい?」
「フェスティバ~をこの場でもう一度開こう・・・!」
「ねえねえ、八神さんが良いって言うんなら手伝ってもらおうよ!」
「横暴だ~!」
「はやてを巻き込むなって話なんだよ。あとアイリは好みにうるさいからフラれるのがオチだ、諦めろ」
「ルシル君。僕が手伝うよ。邪魔をしたくなくて言い出せなかったけど・・・」
「護は優しいな~! お前らも護を見習え」
ルシル達がぎゃあぎゃあ騒ぐ。だから「ちょっ、燃えてる燃えてる!」ルシル達が食材を焼いてる網に置かれたピーマンと玉ねぎがボッと燃えてた。ルシルは慌てることなくその2つを水道水で洗って火を消して「っと。ほい、亮介、大地、お前らにやる」びしょ濡れになったピーマンを亮介くんの取り皿に、玉ねぎはクラスメイトの内野大地くんの取り皿に乗せた。
「「要らねぇー!」」
「文句があるなら食べるなー」
「あ、ニンジン良い焼き具合だよ」
ルシルと護くんがのコンビネーションで食材を焼いてくんだけど、2人は焼くことに集中して全然食べれてない。わたしは「しょうがないな~。フェイト、交代」なのはに食べさせる役をフェイトに預けて、わたしはルシル達の元へ。
「なになに? フライハイトさんが焼いてくれるの!?」
「う~ん。焼くのはルシルと護くんがやってくれてるから、わたしはぁ~・・・」
網の上で良い具合に焼けてるお肉を箸で取って、ふーふー息を吹きかけてから「あーん、ルシル~♪」の口に持っていく。と、「ああああああ!!」亮介くんと護くん以外の男子が叫んだ。ルシルは「あぁ、ありがとうシャル」素直にお礼を言ってお肉を食べてくれた。
「護くんにも食べさせてあげたいけど、それはわたしじゃない方が良いみたいだし、ね」
チラッと別のかまどの方に目をやると、護くんの幼馴染・火照 耀がじーっとわたし達を見てるのが判った。わたしがちょいちょいっと手招きすると、「しょ、しょうがない、うん、しょうがない」ブツブツ言い訳じみたことを言いながらやって来て、網の上からお肉を取って「あ、あーん・・・」護くんの口に差し出した。
「えっと・・・あ、あーん・・・」
ツンばかりでなかなかデレないあの耀が「よしっ!」笑顔を浮かべた。わたしと耀で、ルシルと護くんにお肉や野菜を食べさせてあげていると、他の男子たちが「ルシル、交代してやるよ!」とか「いやいや、僕が代わるよ!」って、わたしからあーんしてもらいたいって考えが丸見えなことを言い始めた。まぁ、その前に・・・
「ありがとう、シャル。あとは焼きおにぎりだけだから、もういいよ」
ルシルが食べ終えちゃった。わたしは「どういたしまして♪」応えて、うなだれた男子たちに「残念だったね~」ウィンクしてから、なのは達のところへ戻る。背中で「耀。僕ももういいよ。ありがとう」護くんと、「そ、そう。どういたしまして」耀のやり取りを聞きながら「たっだいま~!」なのは達に挨拶。みんなからの「おかえりー!」と一緒に焼きおにぎり3個が載ったお皿を受け取った。
「やっぱ締めは焼きおにぎりでしょ♪」
中には焼きそばだとかチャーハンだとかバウムクーヘンを作って食べるって人も居るけど、わたしはこの国で学んだ焼きおにぎりを推すね。醤油だったり味噌だったりと気分で違うけど、どっちも美味しいんだよね。わたしの分として残されてたお肉や野菜と一緒に焼きおにぎりを食べて、「満腹~、満足じゃ~♪」ごちそうさまをした。
「この後は肝試しだったよね」
「うん。男女一組のペアで・・・」
「本音を言えば、このメンバーで行きたかったよね」
「まぁ、相手の男の子はクラスの子だからそんなに緊張することないよ」
食器などの片付けを終えて、コテージに戻りながらそんな話をする。肝試しは大歓迎なんだけど出発前にくじ引きで決めるって話だし、ペアの相手を選べないのが残念ルール。これでルシルとペアになる可能性が限りなく低くなったわけ。次点でなのはだったけど、女子同士のペアは作られないからこれもアウト。一体どうしろと?
「ま、とにかく楽しんだもの勝ちってことでしょ」
「ですわね。肝試し・・・。心霊系はわたくしの姉の所為で耐性がありますから、結構楽しみですわ」
「あー、結さんかぁ~。わたしも通院してた頃に何度かそうゆう系の話聞かされたな~」
「嫌な思いをさせてしまっていたのであれば、姉に代わって謝りますわ」
「別に嫌ってわけやなかったよ? あの頃はルシル君に会ってもなくて、進んで治療しようって気持ちもあらへんかった。死ぬんなら別にそれでも構わへんなんて思うてたくらいや。結さんは、そんなわたしに死ぬことの怖さと悲しさを教えてくれてたんやな、ってルシル君に会ってから解ったんよ。そやから嫌でもなかったし迷惑でもなかったよ」
そう言って笑うはやて。ルシルやシグナム達と出会う前は生きることに無気力だったって聞いてはいた。けど初めて聞かされた咲耶は「死だなんてそんな・・・!」軽くショックを受けてるみたい。
「もちろん今はそんなこと考えてへんよ。みんなとこうしておられることが幸せやからな♪」
「それは結構ですわ♪」
そしてわたし達はそれぞれのコテージに帰る。海水浴前に先生に預けてた鍵を使って屋内に入ったんだけど、「あれ? こんな紙あったっかな?」すずかががキッチンから1枚のプリントを持って来た。ソファに座ってるわたしとフェイトとはやての間にある脚長丸テーブルの上に置いた。
「怪談が書かれてるんやね。・・・この付近は昔、古戦場やってらしくて・・・出るんやって~、お~ば~け~♪」
はやてが幽霊の真似をしたから「きゃぁぁぁ~~~♪」わたしとすずかとフェイトは悲鳴を上げた。フェイトが「先生が肝試しの為の前準備で用意したのかな?」そう言ってプリントに書かれた怪談を読み始めた。海水浴中、先生が鍵を持ってたし、コテージに入れるのは先生くらいだ。
「雰囲気作りってわけやね」
「なのは、大丈夫かな・・・?」
「あー、なのはってまだ幽霊ダメなんだっけ・・・?」
「幽霊に関しては克服してきてるみたいだけど、突然驚かされたりするのはまだダメみたい」
「なのはちゃんとペアになる子も怖がりだったら大変なことになりそうだよね」
そんな笑い話をして、時間になったことで集合場所であるコテージ村の中央にある広場に集まる。そしてくじ引きでペアを決めるんだけど・・・
「ルシルかよ!!」
「???」
その結果、なのはのペアはなんとルシルになっちゃうのだった。なにこれ・・・。ちなみにわたしのペアは、通称メガネ君の金山夏彦くんだった。
†††Sideイリス⇒ルシリオン†††
臨海学校初日のイベント夜の部・肝試し。俺はなのはとペアを組むことになったわけだが。はやてはともかくとしてシャルからの視線が少し痛い。
「ルシル君。よろしくね」
「ああ、よろしく頼むよ。コースを確認しておこうか」
「うんっ」
肝試しは男女ペアで行う。渡されたのは懐中電灯1つとコースが記されたプリント1枚、そして目的地に置いて来るための数字が書かれたメダル1枚。林道を通り、祠にメダルを置いて、代わりにメダルと同じ数字が書かれた札を持って帰って来る、というルールだ。
それから行く順番を決め、俺となのはは12番目にスタートすることになった。はやて達が次々とスタートし、チーム海鳴では最後の俺たちが「はーい、スタート~!」先生の合図でスタートする。
「行こう、なのは」
「う、うん。行こう」
俺を先頭に歩き出す。林道は整備されているおかげで転ぶようなことはないのは救いだ。なのはは少し怯えながら「大丈夫、ルシル君が居るし、大丈夫」お経のようにそう唱えながらついて来る。
「そう怯えることはないよ。肝試しと言っても脅かし役は居ないんだから、そう気を張らずに――・・・っ!?」
視線を感じたため、話を切って周囲を見回すと「え? え、なに・・・?」なのはがオドオドして同じように周囲を見回す。
「ねえ、ルシル君・・・?」
「あぁ、いや、誰かに見られていたような気がして・・・」
「にゃっ!? そ、そういうのは無しだよルシル君!」
本格的に怯えて始めてしまったなのは。俺は「君ほどの魔導師がどうしてそんなに幽霊とかに怖れを抱くんだ・・・?」なのはの怖がりように少し呆れる。彼女が怖がりだというのは先の次元世界から知っているが、常々それが不思議でならなかった。一線級の砲撃魔導師としての実力、意識、精神。どれをとっても優秀なのに。
「ロストロギアや神器の方がよっぽど得体の知れない存在だと言うに」
「ロストロギアや神器は魔法でバーン!出来るけど、幽霊やお化けはどうすることも出来ないからだよ!」
そう力説するなのはがちょっと可愛いと思ったのは秘密だ。そんななのはに「そういう複製術式もあることはあるんだがな」そう伝える。プレンセレリウス――レンの霊媒能力はもちろん、これまでの契約の中で何度もそう言った場面に出くわし、複製してきた。
「じゃあ!・・・・あ」
「ごめんな。今の俺には複製能力は使えないから」
未だに創世結界も使えないし、左目の視力の回復の兆しも一向に見えないという、とんでもないポンコツっぷりだ。ただ「なのはもそうだが、仲間は何があっても守り抜く」そう言って微笑みかける。
「ま、そういうわけでポンコツなりにも頑張ってお守りするので、ある程度はご安心を♪」
「にゃはは。ポンコツだなんて思ってないよ。だからお願いします♪」
俺となのはは改めて林道を進み、目的の祠を目指すんだが「っ!」また視線を感じた。今度は「ルシル君、今・・・!」なのはも感じたようだ。そしてそれは起こった。付近一帯に「結界が・・・!」が張られたのが。
「ルシル君! これアリサちゃん達が・・・!?」
「いや、違う! この魔力は彼女たちのものじゃない、第三者にものだ!」
知らない魔力による結界。神秘は感じないため神器によるものでもない。さらに言えばミッド式でもベルカ式でもない結界だ。俺は「なのは!」の名を呼び、“エヴェストルム”を起動させて防護服へと変身する。なのはも「うん! レイジングハート、セットアップ!」防護服姿へと変身した。
『こちらアリサ! この結界張ったの誰よ!』
『こちらすずか! 私じゃないよ!』
『わたしとフェイトも同じく!』
『わたしもや!』
『わたしも!』
アリサ達から念話が入り、『こちらなのは! ルシル君によると第三者によるものだって!』それになのはが応じ、俺も『ミッド式でもベルカ式でもない。警戒!』みんなに警告する。はやてからの『神器なんか!?』の問いに『いや違うな、神秘を感じない』その可能性を否定した。
『とにかく元凶を抑えよう。先程から俺もなのはも視線を感じている。人の目によるものじゃないからおそらくサーチャーだ』
『違法魔導師ってわけね』
『オッケー!』
『索敵に入るね! スノーホワイト、お願い!』
すずかが索敵に入ろうとしたところで「『にゃぁぁぁぁ!』」なのはの悲鳴が頭の中を貫いて行った。しかも俺だけなのはの口頭での悲鳴も追加されていることもあってキィーンと耳鳴りがする。
「いっつ・・・。どうした、なのは!」
「あ、あれ・・・!」
なのはの指差す方には、何とたとえれば良いのか・・・そう、スーパーマ○オに登場するテレサのような奴が3体と宙に浮いていた。テレサとの違いは、単眼で、口も手もないことだ。それがなのはの恐怖心に触れてしまったようだ。
『ちょっ、何があったのよ!』
『『なのは!?』』
『な、なにか出た! テレサ、一つ目のテレサみたいなのが!』
アリサとフェイトとアリシアに答えるより先に、シャルから俺たちの前に現れたテレサもどきと同じ奴が現れたと念話が入った。さらに『わたしのところにもや!』はやての方にも現れたらしい。
『こちらも同じだ。・・・まずは、変に攻撃をせずに合流することを優先しよう。信号弾を上げるからそれを目印に集まってくれ』
『『『『うん!』』』』『ええ!』
なのはの前に躍り出ながら魔力球を1基作り出し、空に向かって放り投げる。そして魔力球が木々の上に到着したのを見計らって炸裂させる。それを見上げていると、「ルシル君、来た!」テレサもどきがこちらに向かって飛んで来た。
「空に上がるぞ!」
――我を運べ、汝の蒼翼――
「あ、うん!」
俺は背より12枚の剣翼を展開させ、地を蹴って空に上がる。なのはも続けて空に上がると、テレサもどきは俺たちを追って来たのを確認すると、「なのは、ルシル!」アリサ達の姿を視認し、無事に合流。それとはやてとシャルの元にも出現したというテレサもどき、計6体も視認。
≪マスター! 一般市民が居ます!≫
≪おい、6人も居るぞ!≫
“レイジングハート”と“フレイムアイズ”からの報告に、「え・・・!?」はやて達みんなが耳を疑った。その中で俺はデジャヴを感じていた。そう。先の次元世界での“闇の書”事件においてのアリサとすずか。
「あっ、テレサ3体が降下!」
「ルシル!」
「仕方ない! 攻撃開始だ! なのはとアリサは降下中の3体を! フェイトとアリシアは俺と一緒にこちらに向かって来る6体を!」
正体が判らない今、下手に戦闘を仕掛けて痛いしっぺ返しを食らうのは避けたいんだが。ここで見逃すのはさすがに悪手だろう。
「行くわよ、フレイムアイズ! バヨネットフォーム!」
≪おっしゃ! フレイムバレット!≫
「バルディッシュ! プラズマランサー!」
≪Fire !≫
「フォーチュンドロップ、ラッキーシューターでよろしく♪」
≪シュートバレット・・・発射~~!≫
「レイジングハート! 久しぶりの実戦! 頑張ろうね!」
≪はい! アクセルシューター!≫
「はやてとすずかはサポートを頼む!」
「了解や!」「うんっ!」
射線上にクラスメイトが居ないことを確認したうえで一斉に攻撃開始。まずは近接攻撃ではなく射撃系で様子見だ。テレサもどきは素早い動きでなのは達の攻撃を回避した。
「舞い降るは、汝の煌閃・・・!」
「ブリューナク!」
「フローズンバレット!」
光槍20本を展開、そして「ジャッジメント!」一斉射出。はやてとすずかも即座に魔力弾と氷結弾を発射。なのは達の攻撃を避けきった直後での追撃だ。テレサもどきも今度は避けきれずに直撃・・・しなかった。何故なら「すり抜けた!?」からだ。
「幻術・・・!?」
アリサがそう言うが、直感的に俺はそうじゃないと判断した。それを確認するために“エヴェストルム”を二剣一対のゲブラーフォルムにして「どれ・・!」迫り来ていたテレサもどきに突っ込み、右の“エヴェストルム”の斬撃をお見舞いする。回避行動を取られたが、その先を予測して左の一撃を打ち込んでやると・・・
「おっと・・・!」
「なっ・・・!」
「ルシル君!!」
「エヴェストルムが・・・」
「ひしゃげた・・・!?」
「触れたらアウトっぽいよ、コイツら!」
左手に携えていた“エヴェストルム”の穂がグシャっと、捻り潰されてしまった。ちょっぴり後悔。はやて達の元に戻ると“エヴェストルム”を待機モードの指環へ戻し、閃光系魔力で創り出した槍を両手に「物理攻撃は控えた方が良いな」そう伝える。俺たちに向かって来ているままのテレサもどきに触れないように散開した直後・・・
「うわぁぁぁぁぁ!」
「誰か、誰かぁぁぁーーーー!」
「きゃああああああ!」
「な、なんだよこいつら!!」
「どなたかいらっしゃいませんか!」
「やだ、やだ、やだぁぁぁぁ!
そんな悲鳴と共にバキバキと木々が大きな音を立てて倒れて行くのが見て取れた。どうやら「下にも・・・!」居るようだ。しかもすごい聞き憶えのあるクラスメイトの声に俺たちは顔を見合わせる。はやてが「ルシル君・・・!」俺の名を呼ぶと、他のみんなも俺を見る。
「まずは一般市民・・・というか、生徒たちの安全を最優先だ! テレサもどきは俺がなんとかする!」
魔力炉の稼働率を引き上げて魔術師化する。魔法じゃダメなら魔術でどうだ。
――舞い降るは、汝の煌閃――
両手に持つ魔力槍の他に周囲に18本と展開して「ジャッジメント!」段階的に射出する。緩やかな動きで回避するテレサもどきの回避先を予測したところに第二波を射出して直撃させる。すると今度は「よしっ!」掻き消すことが出来た。神器によるものじゃないが、神秘は通用する存在。
「(結構本気でオバケだったりするのか・・・?)俺とアリシアでテレサもどきを空から撃つ。はやて達は“ドラウプニル”を装着したうえで6人の保護を最優先!」
「「「「「「了解!」」」」」」
はやて達が6人のクラスメイトの方へ向かって急降下。6人、声からして咲耶と依姫と天音、それに亮介と天守と護で間違いない。この共通点はきっと俺か、シャルロッテの2人にしか解らないだろうな。昔の契約でこの6人の前世と出会い、共に高校生活を満喫し、そして神の使いと俺とシャルロッテの戦いを見られたことで、俺たちの正体を明かした数少ない親友だ。それが原因なのかは判らないが、おそらく・・・だ。
「アリシア、君もドラウプニルを装着してくれ!」
「ん! ブレイブスナイパー、用意!」
空色の輝くミッド魔法陣の足場フローターフィールドの立つアリシアは、2挺の小型拳銃を宝石のような待機モードに戻し、キャンディポット型のデバイス・“フォーチュンドロップ”に返還。そしてまた新たな待機モードのデバイスが口から飛び出し、それがシモノフPTRS1941をモデルにした“ブレイブスナイパー”へと変形。
「地上ターゲットよろしく!」
「了解! シューティングスター!」
そして俺は「お前らは俺が相手だ。アクセルシューター」複製ではなく俺の魔法として作り上げたシューターを発動。その証明として桜色ではなくサファイアブルーに輝いている。空に居る残りのテレサもどきに向かって「シュート!」50発の魔力弾を一斉発射。アリシアもスコープを覗き込みながら高速射撃弾を連射していく。俺は、回避すら意味のない飽和攻撃で殲滅してやった。
『こちらなのは! 護君と合流!』
『アリサよ。咲耶と合流したわ』
『すずかです。天守くんと合流したよ!』
『シャルだけど。亮介くんと合流!』
『こちらフェイト。依姫と合流!』
『こちらはやて! 天音ちゃんと合流や!』
『(やっぱりか)了解。そのまま合流してくれ。俺は原因を探る』
テレサもどきの発生地点を探って元凶を見つけないと終わらない。今も「うわ、うわ、わらわら湧いて来てるよ!」魔力弾を撃ち続けながらアリシアがそう言う。はやて達もそれぞれ迎撃していることで煙が上がっている。
「これはもう亮介たちを誤魔化せないよな」
「あー、うん、これは無理かな~」
アリシアと一緒に苦笑する。それはともかく「見つけた!」テレサもどきが出現している場所を確認。アリシアに「行ってくる」断りを入れて、俺は元凶へ向かって急降下する。周囲にシューター20発を展開したまま突っ込んでいく。そして「あそこか・・・!」テレサもどきが出現したその瞬間を見届けた。どうやら亀裂の中から這い出て来ているようだ。
「ジャッジメント!」
シューター20発をテレサもどきに放って直撃させ、クリアになった穴の上へ。人ひとりがギリギリ入れる亀裂の中に侵入し「これが・・・元凶」を確認した。亀裂の底には白骨化している死体があり、ちょうど胸のところに1m半ほどの棒状の物が突き刺さっている。
「ん?・・・コレ、デバイスか・・・!?」
錆だらけで気付けなかったが、よく見れば杖型のデバイスだった。となればこの白骨死体は違法渡航者になるわけだ。ふと、肋骨の中に何かがキラリと光った。紫色の宝石が付いた指輪だ。その指輪からテレサもどきが生まれようとしている。
「これはあなたの無念によって生み出された物なんですか・・・?」
レンの霊媒能力があればこの亡骸の魂と会話できるんだが、生憎と今は使えない。ただ「もう大丈夫。あなたをちゃんと見つけました」そう伝える。すると生まれようとしていたテレサもどきが消失した。
『こちらルシル。テレサもどきの原因の視認と停止を確認』
『わたしらの目の前に居ったテレサもどきも消失したよ』
『結界も消失してく』
『ルシル。あたし達は防護服を解除して待つわ、あんたも急いで戻って来て』
『了解』
とりあえず指輪を回収する。創世結界にアクセス出来ないが、ロストロギアの情報は頭に叩き込んである。ゆえにこの指輪の正体もすぐに判った。ロストロギア・ヴィシャスリング。確か自分の思念を不干渉の力場に変える、というものだったか。レンの能力っぽいが、アイツの能力の効果を持った神器を造るのは結局不可能とされたんだよな。それを思えば、コイツはなかなかにすごいよな。まぁ、魔術師の敵ではなかったが。
「とにかく戻らないとな」
それにクロノにも連絡を入れておく必要がある。管理外世界での調査は基本的に執務官が担当することになっている。フェイトとアリシアは二度目の試験も落ちたし(これは先の次元世界と同じだな)、操作が可能なのは今のところクロノだけだ。
「さぁ、亮介たちにどう伝えようか」
それが悩みどころだった。まぁ、なんとかなるか。
ちなみにその後わかったことだが、死体の身元は8年前に行方不明になった2人一組の違法魔導師の片割れで、ロストロギアのバイヤーと言う女だった。輸送中のヴィシャシュリングを強奪した後、完全に行方をくらませたと言うらしいが・・・。ま、今となっては闇の中だ。
後書き
ヒューヴェーフォメンタ。ヒューヴェーパィヴェ。ヒューヴェーイルテ。
臨海学校編の後編をお送りしました。そう! これで終わりです! 半端です! どっかでやったぞ、このくだり!
咲耶たちに魔法を伝えるシーンは次話の神器回収編その4の前半に、誰かの回想として出しますことにしました。翌日の鮎の掴み取りや渓流下りはもうみなさんの想像にお任せします。それは楽しい楽しいものだった、ということだけが解って頂ければOKなのです。
さて。魔法がバレるわけですが、何故この話を書いたかというと・・・
「アニメA’sの13話では、なのはとフェイトとはやての授業ノートを取るのはアリサとすずかの役だった! しかしこの作品ではそんな2人も魔導師なのです! じゃあ、誰がノートを取るというの!?」
そういうわけで、ノートを取る役としてチーム海鳴と仲が良く、そして魔法を知る(今話で知った)咲耶たちにやらせようというわけです。ま、学校中等部編の話なんてやらないんで、前回のあとがきで書いたように1シーンのみの為の回というわけです、です。
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