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真似と開閉と世界旅行

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圏内事件〜

 
前書き
明日からは期末テストだー・・・アハハーー・・・はぁ・・・ではどうぞ。 

 
咲~

「・・・いない」

俺は頭を抱える。・・・何故か?今日は迷宮区を攻略するとアスナに言われたのに・・・そのご本人がまったく集合場所に来ない。

「・・・リパル、アスナは?」

『一応、反応はあるッスから街にはいるかと・・・』

『・・・それでかれこれ一時間経ってるわね』

「・・・よし、捜そう。詠、念のため残ってくれるか?」

『・・・仕方ないわね』

周りに誰もいないのを確認してから、詠は具現化する。

「・・・っと。ほら、行ってきなさい。こっちに来たらメッセージ送るわ」

「ああ、頼む」

・・・実は俺はちょいとズルをしていて、リパルにマップデータ及びプレイヤーの位置データを担当してもらっている。・・・ただ、下手するとサーバーにイレギュラーと判断されてリパル自身が危ないが、そこら辺は既に相互理解済みなので問題なし。

「・・・まったく、何処にいるんだか・・・」

『・・・反応は転移門周辺にあるッス。そこから動いてないッスね・・・』



「もしかしたら、タチの悪いナンパに・・・いや、KoBの副団長をナンパするなんて度胸のある奴はいないか」

『あはは・・・もう少しで到着ッスね』

「ああ・・・?」

なんか人がざわついている気がする。それに釣られてそちらを見ると・・・

「・・・っ!?アスナ!?」

遠くてよく解らないが、見慣れた紅白の制服を来た女性・・・多分アスナが横たわっているのが見える。近くには黒いコートを来た誰か・・・俺は方天画戟を手に取り、走る。

「・・・そこのお前!」


「へ・・・!?」

方天画戟を突き付けられ、男は慌て・・・って。

「お前、キリト・・・!?」

「・・・サキ・・・だったか?」

キリトは俺を見て一歩下がる。

「アスナに何をした。事と場合によっては・・・!」

『咲さん、咲さん』


「まさかコウハの兄貴がこういった奴なんてな。人は見かけに・・・」

『咲さーん』

「(んだよ!さっきから!)」


『アスナさん、寝てるだけッス』

「・・・え?」

ここで初めてアスナに目を向け・・・


「・・・むにゃ・・・」


・・・熟睡してる副団長さんを見たーーーーーーーーー












































「・・・で、軽はずみに昼寝に誘ったらガチ寝したと」

「まあ、そういうことになるかな」


「~~~~っ!!」

顔を覆い、呆れる。・・・まあ、最近アスナは不眠気味だったから分からなくもないのだが・・・

「(・・・取りあえず、詠にメッセージを飛ばすか・・・)」

一応詠や亞莎も通常プレイヤーに近いメニューを使用出きる。とにかく、起こしてもよかったが・・・あえて寝かせる。これを期に少し休めばいいのだ。・・・そんなこんなで六時間後・・・

「・・・うにゅ・・・」


アスナが謎の言語を発し、目を開いて数回瞬きをして・・・あちらこちらを見渡して、顔を瞬時に様々な色を変え・・・

「な・・・アン・・・どう・・・」

おそらく“なんでアンタがどうして”辺りを言いたかったのだろう。次の瞬間にはアスナはキリトを睨み、細剣に手をかけるが・・・ゆっくりと息を吐き、手を引く。ちなみに俺は離れた位置にいたため、アスナの視界に入っていない。

「・・・ゴハン一回」

「は?」

「ゴハン、何でも幾らでも一回奢る。それでチャラ。どう」

それを聞いてキリトがニヤッ、と笑う。

「57層の主街区に、NPCレストランにしてはイケる店があるから、そこ行こうぜ」

「・・・いいわ。・・・今、少しメッセージを・・・」

「それを送る相手はこっちにいるよ」

アスナが俺を見て目を見開く。

「サキ・・・!?ちょ、ちょっと!起こしてくれても・・・!」

「人との約束すっぽかして爆睡してたのは誰でしょうかね?」

「う・・・ごめん」

「ま、いいけど。・・・俺も着いていくよ。・・・コイツと二人きりにさせるの何か危ないし」


「え・・・でも」

「本人がいるのに何だけど、俺はコイツをまだ信用していない。アスナを守るフリをして睡眠PKする気だったのかもしれないしな」


「・・・俺は構わないぜ。言いたい事は理解できるからな」



睡眠PK・・・要するに“圏内”に置けるルールを破る方法。まず第一にプレイヤーが熟睡している場合。現実と違い、一定の刺激を与えなければ起きることはない(もしくは自然に起きるか)そこでその熟睡してる相手にデュエル・・・これも種類があるが、その内の一つ《完全決着モード》を申し込み、相手の指を使ってOKボタンを押させ・・・後の説明は不要だろう。更に圏外まで運び出す方法も存在する。基本プレイヤーはシステムコードによって他者が強引に動かすことは出来ない。しかし担架(ストレッチャー)系のアイテムに乗せてしまえば後は・・・・・・これらは全て犯罪者・・・殺人者(レッド)プレイヤーによって起こされた事実であり、今では殆どのプレイヤーが鍵をロック出来るプレイヤーホームや宿屋で寝るのが当たり前だ。・・・ただ亮はピッキングスキルが存在するかもしれないと思い・・・サチという少女の看護兼護衛で亞莎を自宅に残しているらしい。・・・そしてアスナの睡魔を誘発させたこの男は寝転ぶ前に索敵スキルを使い、接近警報をセットしてうたた寝程度に止めていたらしい。・・・何はともあれ、俺達は第57層主街区《マーテン》に到着する。・・・ここ最近、プレイヤーもこのゲーム本来の楽しみ方を知ったのか、結構プレイヤー達は戦闘ではなく生活を楽しむことが多くなった。それが街の人並みに反映され・・・街中は人でごった返している。アスナと共にキリトが歩いてるのを見て驚くプレイヤーが何人かいた。・・・アスナはファンクラブが存在すると噂まである名花・・・その隣にラフレシアが並んでいたらみんな驚くだろう。

『キリトさんへの態度悪くないッスか?』

うるせぇ。

「ここ?」

人に注目されるのが嫌だったのか、アスナがほっとしながらキリトに聞く。

「そ。お勧めは肉より魚」

スイングドアを開けて俺達は店に入る。取りあえず席について注文する。

「・・・」

アスナがゆっくりと囁く。

「ま・・・なんていうか、今日は・・・ありがと」

「へっ!?」

「ありがとう、って言ったの。ガードしてくれて」

「あ・・・いや、まあ、その、ど、どういたしまして」

俺は会話に口を挟まずに届いたフルートグラスに口を付ける。


「なんだか・・・あんなにたっぷり寝たの、ここに来て初めてかもしれない・・・」

「そ・・・そりゃいくらなんでも大袈裟じゃないのか」

「・・・嘘はついてないよ。・・・アスナは長くても三時間位しか寝ないからな」

「それは目覚まし(アラーム)で起きてるんじゃなくて?」

「・・・じゃなくて」

「不眠症って程じゃないけど・・・怖い夢見て、飛び起きたりしちゃうの」

「・・・そっか」

一瞬キリトが視線を落としてから、口を開く。

「えー・・・あーっと・・・なんだ、その、また外で昼寝したくなったら言えよ」

「流石に今度は俺が見てるけどな」

「そうね。また同じくらい最高の天候設定の日がきたら、お願いするわ」

アスナが微笑みながら言うとキリトが絶句する。・・・ちなみに、この世界にも気候が存在する。しかも馬鹿正直なコンピュータなので、冬は寒いし夏は暑い。大体がバランスを取られていてほぼ全ての天候が好条件になる日は少ない。・・・そこもまたアスナが爆睡した理由だろう。その時にNPCがサラダを持ってきてくれたので、俺達はそれを食べる。

「サキ、食べ方が汚いわよ」

「ええー?別に汚れる訳じゃないし、いいだろ」

「考えてみれば、栄養とか関係ないのに、なんで生野菜なんか食べてるんだろうな」

「えー、美味しいじゃない」

レタス(っぽいもの)を咀嚼してからアスナが答える。

「まずいとは言わんけどさぁ・・・せめて、マヨネーズくらいあればなあー」

さすがにそれは同意だ。

「他にはソースとか・・・」

「ケチャップ、それに・・・」

「「「醤油!」」」

日本人なら誰でも思い付く調味料。思わず答えが揃って俺達は吹き出した・・・瞬間だった。

「・・・きゃああああ!!」

「・・・悲鳴!?」

二人が立ち上がる時には・・・俺は駆け出していた。

「サキ!?」

悲鳴は外から聞こえた。更にもう一度聞こえた悲鳴に向かって走り出すが・・・すぐに二人に追い付かれた。

「く・・・」

「お前、筋力値に振ってるのか?」

「・・・そんなとこかな!」

「わたし達は先に行きましょう!」


若干遅れる形になり・・・円形広場に到着した時、信じられない光景があった。

「な・・・っ!?」


広場には教会らしい建物があり、そこの二階の飾り窓から一本のロープが垂れ、その先端に、男がぶら下がっていた。分厚いフルプレート・アーマーに大型のヘルメットを被っている。この世界に窒息死はないので・・・プレイヤー達が悲鳴を上げている理由は別にあった。


「あれは・・・」

男の胸を貫いている・・・黒い短槍(ショートスピア)・・・その貫かれている部分からは赤いエフェクト光が吹き出している。アレはダメージを受けている証だ・・・となると、あの男は圏内にいながらダメージを受けていることになる。

「早く抜け!!」

キリトの叫ぶ声が聞こえる。俺は一気に踏み込み、跳ぶ。

「キリト、肩貸せ!」

「え、うおわっ!?」

キリトの肩を踏み台に更に跳ぶ。・・・微妙に距離が届かないので、教会の壁に足を付け・・・

「・・・ふっ!」

力強く蹴り、男がぶら下がっているロープを掴む。

「・・・今すぐに切り・・・」

ロープを掴むと同時にマントの懐を漁る。男のHPを見てる余裕はない。亮から貰ったクナイを・・・

ドン!

「・・・なっ・・・!?」

いきなり男が暴れだし、俺は蹴り飛ばされ・・・地面に落下する。

「ぐっ・・・!!」

痛みはないが、衝撃が体を駆け抜ける。

「サキ!」

「俺はいいから!」

アスナは頷き、走りながらキリトに言う。

「きみは下で受け止めて!」

「わかった!」

改めて俺は男を見る。どうやら混乱からか自力で槍を抜く行動が上手く行かずに槍は全然動いていない。・・・ちなみに、あれは貫通系武器にだけ存在する継続ダメージを与える槍らしい。

「ちっ・・・もう一回・・・」


俺が上を見上げたその時・・・男の視線が一ヶ所に留まった。あの位置はHPゲージがある筈・・・


ガシャアアン!!

「・・・あ」

一瞬男が硬直し・・・次の瞬間、破砕音を経てて・・・男は散った。


「・・・!」

そして自らが支えていた物を失ったロープが壁面にぶつかり、その後すぐに凶器である黒い短槍が音を立てて石畳に突き刺さる。それと同時に俺とキリトはすぐに辺りを見渡す。

「どこだ・・・」

俺達が探しているものは“デュエル勝利者宣言メッセージ”街中でプレイヤーが死ぬには完全決着モードのデュエルを承諾し、敗北すること以外あり得ない。どの形式のデュエルであれ、名前や試合時間が表示されるウィンドウが現れる筈だ。

「みんな!デュエルのウィナー表示を探してくれ!!」

キリトの意図をプレイヤー達は気づいたのか、すぐに辺りを見渡す。・・・だが、誰も見つけられない。その時、アスナが二階から身を乗り出した。

「アスナ!!ウィナー表示あったか!?」

「無いわ!システム窓もないし、中には誰もいない!!」

「中にある家具とかの中は!?」

俺は叫ぶが、アスナは首を横に振るだけだ。

「・・・だめだ、三十秒たった・・・」

プレイヤーの中からその声が聞こえた。・・・三十秒、それが本来ウィンドウが表示される時間だ。・・・取りあえず俺達は凶器を回収してアスナの元に行く。

「教会の中には、他には誰もいない」

どうやらキリトは索敵スキルを使用していたらしい。・・・俺も持ってはいるが・・・とある事情のせいで俺はスキルの上昇が上手く行かない。


隠蔽(ハイディング)アビリティつきのマントで隠れている可能性は?」

アスナが聞き返すが、キリトは首を振る。

「俺の索敵スキルを無効化するほどのアイテムは、最前線でもドロップしてないよ」

「しかも教会の入り口には目撃者全員に立ってもらってる。透明化も誰かに接触すれば解除される。・・・裏口もないし、逃げ道はないはずだ」

一応リパルにも索敵してもらったが効果はなかった。

「ん・・・解った。これを見て」

アスナが指差したものは“座標固定オブジェクト”・・・要するに動かせない物であるテーブルを指差す。その中の足にロープが結わえられていた。・・・これ自体は至って簡単でロープをポップアップしてからウィンドウをちょいと操作すれば簡単にロープを固定できる。後は荷重か刃物による攻撃でしかほどける事はない。

「うーん・・・どういうことだ、こりゃ?」

キリトが首を捻る。

「ま、普通に考えりゃ・・・槍を刺してからロープを首にかけて窓から落とした・・・ってことか」

「・・・なんでそんなこと・・・見せしめのつもり?」

「それ以前に謎なのはウィナー表示が無かったことだっつーの。デュエルの表示はすぐ近くになかった・・・くそっ、判断ミスった。槍を抜こうとすれば・・・」

「なんで彼処でロープ切ろうと思ったんだ?」

「あの位置じゃ体制悪いし、抜けなかったら不味いからな・・・下に降ろしてお前と引き抜くつもりだったんだよ。最悪抜けなくても回復アイテムを使おうとしたけど・・・」

「ううん、サキは悪くないわ。とにかく、このまま放置は出来ないわ。・・・もしデュエルではなく、“圏内PK技”みたいなものを誰かが発見したのだとすれば・・・」

「早めに仕組みを突き詰めて対抗手段を公表しないと被害者が増える・・・」

「・・・俺とあんた達の間じゃ珍しいけど、今回ばかりは無条件で同意する」

キリトはよく俺やアスナと攻略方針で揉めたりするので・・・確かに意見が一致するのは珍しい。アスナが手を出し、俺に視線を送る。

「・・・わかったよ」

俺はアスナの手に自分の手を重ねる。

「なら、解決までちゃんと協力してもらうわよ。言っとくけど、昼寝の時間はありませんから」

「してたのはそっちじゃないか・・・」

キリトはブツブツ言いながら手を重ねる。・・・さーて、探偵家業を始めるとしますか・・・

 
 

 
後書き

「やっと俺視点か・・・」


「出番少ないしな」


「うるせぇよ。そういや、亮はこのタイミングで何してるんだ?」


「え?ああ・・・その日はサチと亞莎といたかな・・・たまにサチに俺が体験した出来事を話したりしてあげるんだよ。・・・そうやって話しかけていれば、いつかきっと・・・」


「・・・そうか」


「お前こそ詠はどうしたんだよ?」


「この時期・・・つか基本俺は詠の存在を秘密にしてるから、今は俺のホームにいると思う。一応遅くなるから先に帰っててくれってメッセージ送ったし」


「ふーん。・・・それじゃ、ネクストコ○ンズヒント!」


「“死亡時刻”!」


「次回は迷探偵の出番だぜ!」


「漢字が違うぞ漢字が!」


「次回もお楽しみに!」


「・・・あれ?この流れって何処かで見たような・・・」

 
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