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やはり俺の青春ラブコメは。

作者:panda
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一色いろはは祝ってもらいたい。①

「あ、ひっきー。やっはろー」
ドアを開けると同時に飛んできたのは由比ケ浜の挨拶。こいつはいつまでこの挨拶を続けるのだろうか。流石に慣れたのでもう何も突っ込まない。しかし国語学年三位の俺がこれを挨拶と認めたら、日本語という文化が終わりを迎えるだろう。なので一応無視する。
「あら比企谷くん。こんにちは。」
「おう。」
雪の下の無毒な挨拶に少し驚きつつもいつもの場所に座る。明日の天気は隕石だろうか。洗濯物かわくかな。
「ひっきーなんで私のは無視すんの⁉︎ひどくない⁉︎」
「なに言ってんだお前。そうやすやすと日本語を滅させてたまるか。言っとくが構図的に俺アンパンマンだからな。」
由比ケ浜の目から「なにコイツキモ、あんたがアンパンマンだったら私これからホラーマン応援する。」という声が聞こえる。これは俺が幼稚園のごっこ遊びでアンパンマン役をした時に、初恋の相手から言われた言葉などでは決してない。てかホラーマン別に悪者じゃないから。見た目で判断するのはよくないとおもいます。to初恋の君へ
俺が恋文をしたためそれをどうやってあの子へ届けようか考えていると、コツコツと廊下を歩く音が聞こえて来る。久しぶりの依頼だろうか。そして足音は奉仕部の前で止まり、ドアが二回ノックされた。ここはトイレじゃないのだが。いや待て俺、ここはアメリカじゃないのだが。口に出さなくて良かったと安心する間も無く、次の不安が舞い込んできた。
「こんにちは〜❤️」
ドアから顔を覗かせているのは一色いろは。てかなんでこいつの語尾ハートついてんの?どうやんのこれ?家に帰ってからやってみよう。
「せーんぱいっ、ちょっといいですか?」

なぜか俺一人だけが部屋の外へと招かれ、不安は膨らんだ。と脳みそには書き記すが、ちょっとだけ嬉しかったりする。ちょっとだけな。
「何の用だ?」
できるだけ低音を守り、めんどくさいオーラを纏い、目を殺し、完全武装で立ち向かう。
「来週の土曜なんですけど〜、先輩予定空いてたりします?」
なんだ、不意打ちか。一度自分の武装をチェックし直し綻びがないことを確認する。
「逆に聞くが土曜に用事があるってどんなリア充だよ。あるいは非ゆとりか?」
「あぁ、なんかすみません、ゴミ箱開けちゃいました…。」
何ゴミ箱って。俺の日常はゴミなのか?うん、正解だ、800点。
「まぁそれはともかく、生徒会室を大掃除するので手伝って欲しいのです!」
「はぁ?それなら生徒会でやればいいだろ…」
「それが来週の土曜私しか空いてなくてですね〜私一人じゃちょっと大変かな〜って。」
いや、掃除の日程変えればいいだろ、と言おうとするも一つの仮説がそれを妨げる。自分が⚪︎の日はその他大勢が×になる現象か?あ、逆もまた然り。
「だったら由比ケ浜たちにも声かければ良いんじゃないか?」
「それはダメですよ。土曜日に呼び出すなんて悪いです。」
俺ならいいのかよという心のつぶやき、そろそろ100回目くらいだろうか。今週で。
「じゃあ今からやるのはどうだ?まだ二時間くらいはあるし、四人でやれば片付くだろ。」
「えーっと…できれば来週の土曜がいいですね…。どうしても嫌なんだったら別に良いんですけど…」
珍しく俯きがちに、そして消え入りそうな声で一色が答える。
「ダメ…ですか?」
いつもなら上目遣いであざとく放つであろうセリフだが今回は違った。なんで泣きそうなんだこいつは…。
「嫌だ。」
恐らくこの返事とは違う結末に行き着くことになるだろう。しかし確認のためそう答える。念には念を、だ。
「そう……ですか。」
一色の表情に影がさす。
その刹那、とてつもない不安に襲われる。泣くのか?ボールは頂点で一瞬の制止を見せる。どちらへ転がるのか。あれ、今時間とまってね?

「…なら仕方ないですね!」
一色は笑った。いや、正確には笑おうとしていた。なんだよその表情。まるで雪女にでも心臓を掴まれたかのような痛みに耐え兼ね、口を開く。
「はぁ…じゃあ来週の土曜、昼の1時からな。」
「…へ?」
低気圧は一瞬で一色の頭上へと通過して行った。
 
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