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ミンホタ

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第三章

「刺繍も有名なのじゃ」
「そういえばこのお店も」
「ハンドクラフトの店じゃろ」
「はい」
「牧羊からな」
「毛とか糸を手に入れて」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「刺繍もやっておるのじゃ、服も作ってな」
「羊は偉大ですね」
「そしてそこから出来た産業もな」
「いいんですね」
「ポルトガルの誇りでもあるぞ」
 この国のそれでもあるというのだ。
「そしてこのミーニョのな」
「誇りでもあるんですね」
「服もあるぞ」
「今言ってくれた」
「そうじゃ、御前さん彼女はいるか」
「今喧嘩中です」
 正直にだ、ジュゼッペはお婆さんに答えた。
「この前ちょっとしたことで揉めました」
「それでもおるのじゃな」
「はい、数日会ってないですが」
 喧嘩をして、というのだ。
「それでもいることはいます」
「そして金はあるか」
「最近近所の酒屋でアルバイトしてて」
「あるのじゃな」
「身体も鍛えられています」
 その酒屋のアルバイトでというのだ。
「お金貰って」
「いいことじゃな、やはり人間働かないとな」
「働けるだけいいですね」
「今何かと大変じゃからな」
 お婆さんもこのことは知っていた、ポルトガルの経済状況は。
「アルバイトでも働ければな」
「いいですね」
「失業率高いのう」
「親父も兄貴も働いてて神様に感謝してます」
「全くじゃ、感謝せんとな」
 働けることを神にとだ、お婆さんも言う。
「いつもながらな」
「そうですよね」
「とにかく働いていてじゃな」
「ある程度あります」
 金もというのだ。
「一応は」
「なら御前さんにミーニョのいいものを紹介しよう」
「いいものですか」
「我が国、そしてこのミーニョのいいものもな」
「それもですか」
「紹介しよう、そしてな」
 さらに言うお婆さんだった。
「彼女とも仲直り出来るぞ」
「いいこと尽くめなんですね」
「うむ、どうじゃ」
「お願いします」
 ジュゼッペはお婆さんに即答した。
「それを」
「よし、わかった」
 お婆さんもジュゼッペに笑顔で応えた、そしてだった。
 彼にそれを紹介した、それは一つのセットである。ジュゼッペはそのセットを見て言った。
「これはまた」
「どうじゃ」
「はい、いいですね」
「御前さん見る目があるのう」
「働き口と服と女の子については」
「その三つがわかればよい」
 人生においてもというのだ。
「ではな」
「買わせてもらいます」
 すぐにだ、ジュゼッペは答えてだった。まさに即断即決でお婆さんが出したそのセットを買った。そのうえで。 
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