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ミンホタ

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第一章

                 ミンホタ
 ポルトガルは大航海時代の歴史で世界に知られている、しかしその他のことではというと。
「スペインにl比べて」
「あっちも大航海時代の国だろ」
 ポルトガル北部のミーニョ地方に高校に通うジュゼッペ=ファナゴにだ、教室で友人のロベルト=アラゴサが言った。
「それ言ったら」
「いや、あっちはもうな」
「経済的にやばいのも同じだろ」
「それ言ったら言葉も人種もだろ」
 ジュゼッペはロベルトに口を尖らせて言い返した、二人共ラテン系の黒い縮れた髪と黒の睫毛が長い瞳を持っている。浅黒い肌も同じだがジュゼッペはすらりとした中背でロベルトは巨漢そのものの身体だ。ジュゼッペの顔は彫があり鼻が高いがロベルトは顔も丸々としている。
「一緒だろ」
「スペイン語とポルトガル語って変わらないからな」
「イタリア語ともな」
「同じラテン系でな」
「併合されたこともあったしな」
 その大航海時代にだ、スペイン王フェリペ二世がポルトガル王を兼ねたことがある。
「一緒だろ」
「だからな」
「比べるなっていうんだな」
「そうだろ」
「違う、向こうはあれだろ」
 隣国のスペイン、その国はというと。
「人は多い、闘牛士がいて料理も有名でサクラダ=ファミリアもある」
「メジャーだっていうんだな」
「何だかんだで欧州で大国だろ」
 独仏英伊に次いで五番目とされている、EUでの議員の数も四国に次いでいる。
「それに対してな」
「我が国はか」
「大航海時代だけだな」
「ワインあるぞ」
「他には?」
 ジュゼッペはロベルトに問い返した。
「あるか?」
「あるんじゃないのか?」
 これがロベルトの返事だった、実にあっさりとしている。
「探せばな」
「何だよその適当な返事は」
「だってな」
 ロベルトはその太った身体を動かさず適当な感じでジュゼッペに返答した。
「俺そういうことはあまり興味がないんだよ」
「ワインには興味があってもか」
「ポルトーワインな」
「ポルトガル名物のそのワインだ」
「料理もな」
「ポルトガル料理でいいんだな」
「スペイン料理の亜流みたいに思われてもな」
 他の国からである。
「美味ければいいだろ」
「そんなものか」
「ああ、俺はな」
「何か欲がないな」
「欲って何だよ」
「自国の、あと自分の住んでる地域でいいものを探そうとかな」
「だからワインと料理だよ」
 この二つがという返事だった。
「いいからもうな」
「満足か」
「俺はな」
「サッカーもか」
 スペインはサッカーでも世界的に有名だが、というのだ。
「オペラ歌手で世界的スターが多くてもか」
「ドミンゴ、カレーラス、クラウス、アラガル、カバリエ、ベルガンサ、ポンスってな」
「詳しいな」
「好きだからな」
「それでもポルトガルの歌手がいなくてもか」
「いい舞台や演奏だったらな」
 それで、と答えたロベルトだった。
「俺は別にいいさ」
「自国愛、地域愛はか」
「普通にあるつもりだけれど御前みたいに躍起になってないな」
「俺躍起になってるか?」
「俺からみればな」
 そうだというのだ。 
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