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破壊ノ魔王

作者:紅蓮刃
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一章
  13

それからゼロは近くの宿をとらせ、日が出てる間はずっとずっと寝ていた。随分無防備だなーって思ってソロソロっと近づくと、ものすごい目付きで睨まれた

めちゃめちゃ怖かったです

ゼロのこと、まだ何も知らないぼくだけど、音をたてずに近づいたのにこうやって目を覚ますし、あれだけの軍に追われていて……きっと簡単には生きていないのだと思う。だからなのかな。ゼロの言葉には重みがあった


「ぼくも同じ、か……」


それでも構わないって本当に思った。ゼロが殺した人はぼくが恨んでるひとでもなければ、名前も顔も知らない。きっとどこかに家族がいて、ぼくみたいにやりとげたいこともあって、大切なものがいっぱいあるんだ

それを奪う
嫌だ。嫌なのは、嫌だ

でもだからって目的を捨てたくはない

昔あった死体の山は雫神だったんだから
死体さえ残させてもらえずに滅んだ一族もたくさんあるんだから

八つ当たりにもならないし、敵討ちにもならない
だってぼくはやられてないし、やった人はいないし、やったことさえ知らない人が死ぬんだろうから

…………なんだか
うまくいかないな


「なんだ。悩んでんのか」

「……迷ってはないんだけどさ。……ぼくはみんなを助けたいだけで、他の誰かを殺したいんじゃない。目的達成までの道のりが……やりたくないことだから困る」


ただ、閉じ込められてるみんなを助けてニセモノの雫神を追い出せたらそれでいいのに


「不可能」


はっきりいいますね


「どっちもとろうとするな。天秤にかけろ。どっちがお前にとって都合がよくて好ましいか。それだけ」

「そんなうまいこといかないよ」

「殺されるくらいなら殺す。望みを果たせないまま生きるくらいなら望みを叶えて死ぬ。選べばいいだけだ。簡単だろ?」


簡単に言うけど
それは相当割りきってるからだ

ゼロはやっぱり普通と違う


「…………当たり前だろ。俺は普通を生きたことはないからな」


あれ?心読まれました?


「さて、交渉を始めようか。ガキ。お前は重要な点を忘れてる」

「重要な……?」

「手伝え、契約しろとお前はいった。だけどな、俺がそんな頼みの言葉で動くやつに見えるか?」


………………いえ、まったく

ゼロはベッドから起き上がり、にやりと笑って、さも愉快そうにぼくを見下ろした


「さて、契約者さまは俺に何をしてくれる?」


血の気が引いた

どうしよう
そういえば、なにも……わかんない
なにをしてほしいんだろう……


「……か、肩たたきます…」

「殺す」

「はい、ごめんなさい。えーと……」


ぼくは悩んだ。悩んで悩んで悩んだけどわからない。そのぼくをみていじわるに笑うゼロ

くそぅ!わかるかって!!


「なにしてほしい!?命?魔法?なに!!」


若干逆ギレ気味なのは了承ずみです


「命はいらねぇ。何の価値もない。魔法もいらねぇ。弱い」


……そうでしょーけど、それを言っちゃいますか…


「ほら、はやくしろ」


ど、どうしよう……


「ねぇなら契約もなんもねぇよな?」


どうしよう!!!


「じゃあ好きなもの…………」

「へぇ?」


…………ん?


「好きなもの、か。望み通りってことだな」


…………やばいやばいやばい!

あぁ、ゼロがにやついてる
まずいよ、まずいよー!!!


「……よし、じゃあ決まりだ」

「まってまってまって!なにが……なにが決まっちゃったのさ?」

「契約内容」


わーお
好きなもの、の一言で契約内容まで決めちゃうの


「俺は力と知恵を貸す。お前は知識と労力を渡せ。お前の目的を手伝えというなら俺の目的も手伝え。これで対等。……だろ?」


おお
思ったより普通
というか、優しい……!??


「知識と労力?あと目的って……」

「俺の知らないこと全ての知識、俺にできない仕事、目的はおいおい話す」


んー……
問題なさすぎてこまる


「その目的ってやっぱり悪いこと?」

「さあな。それよりもっと大事な条件がある」


……ほ、ほう?


「はっきりいって、俺はお前の存在が邪魔だ。それでも殺さないのは利用価値があるから。わかるな?」

「は……はい」


邪魔……っすか


「お互い浅い付き合いにしよう。俺はいつでも要らなくなればお前を斬り捨てる。お前もそうすればいい。契約を結んだからとかなんとかいって俺を縛るな。いいな」


なんとも真っ当
悪い条件じゃ無さすぎて怖い

唯一不安要素としては、ゼロの目的


「……わかった」


ぼくはそう言った。たとえ不安でも、力もなにもないぼくには、やっぱりゼロの力が必要だ
ぼくに力がついて、ゼロといるほうが良くないと思えば……切り捨てればいい。それでいいってゼロが言ったんだから


「じゃ契約成立だ」


ゼロは悪い笑顔を浮かべて、すっくと立ち上がった


「準備しろ。いくぞ」

「ど、どこに??」

「聞いてもわかんねぇだろ。黙ってついてこい」


うん、まぁたしかに
ここの知識の欠片もないさ。ぼくには


「じゃ何するかだけでも教えてよ!」

「あ?めんどくせぇな……」


ゼロはほんとにめんどくさそうにため息をついて、こっちを見ずにそのまま言った


「お前を買いにいく」


…………はい?







 
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