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真田十勇士

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巻ノ三十 昌幸の智略その十

「強い者を一度に多く出すぞ」
「敵に襲われてもやられぬ様に」
「その為に」
「うむ、そして今以上に慎重に進め」
「ですな、そして上田城まで行き」
「あの城を囲みましょうぞ」
「攻め落とすことはない」
 ここでだ、鳥居は上田城を無理に攻めぬとも言った。
「囲みそしてな」
「城下の盟を誓わせる」
「そうしますか」
「殿は真田家を滅ぼすお考えではない」
 家康、彼はというのだ。
「上田を領地にされてな」
「そして真田家も入れる」
「家中に」
「万石でな。だからじゃ」
「無理に城は攻めずに」
「降すのですな」
「城を攻めていいことはない」
 鳥居はこの言葉は顔を曇らせて述べた。
「兵達を多く失いかねん、それよりもな」
「降しそして」
「入れる方がいいですな」
「殿のお考えでわしもそう思う」
 武辺であるが決して武をみだりにる使ったりはしない、鳥居は徳川家のそうした考えも言葉に出した。
 そしてだ、こう言ったのだった。
「では上田まで行くぞ」
「慎重にですな」
「警戒をしつつ」
「やはり強いわ」
 鳥居は顔を顰めさせて言った。
「真田昌幸殿は智将じゃな」
「ですな、二人のご子息も」
「相当ということですし」
「全くじゃ、では先に進むぞ」
 鳥居は真田の攻めに苦しみながらもだった、兵達を先に進ませた。兵糧や具足は特に強く守りながら。
 その兵糧を守っているのを山の中から見てだ、幸村は家臣達に言った。
「あれではじゃ」
「はい、敵の兵糧や具足を襲うことはです」
「難しいですな」
「敵もわかっていますな」
「兵糧や具足を狙われるということが」
「戦の基本じゃ」
 兵糧や具足を狙うことはとだ、幸村も述べた。
「それを奪うなり焼くなりすればそれだけで戦が決まる」
「だからこそですか」
「我等の襲撃を受けてですな」
「徳川家の方もそれを察して」
「守りを固めましたか」
「そうじゃ、やはり鳥居殿はわかっておられる」
 幸村は敵将である彼のことも言った。
「戦のことがな」
「伊達に徳川十六神将の一人ではない」
「そういうことですか」
「そうじゃ、では輜重は攻めぬ」
 兵糧、そして具足はというのだ。
「それはな、そして斥候や物見に出る兵達が増えた」
「大人数で出し」
「襲われても撃退出来る様にしましたか」
「うむ、このことについてはな」
 幸村はさらに言った。
「やり方がある」
「ではそのやり方は」
「一体」
「これまでの様にその場で一気に攻めることは止めよ」
 こう言うのだった。 
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