一応は別人
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2部分:第二章
第二章
そのゲームに出ている他の声優の多くも彼がよく知っている声優ばかりだった。普段は喘ぎ声とは無縁で小さな子供が観るアニメにも出ている声優がだ。そこではとびきりの淫乱になってしまっていた。
そしてアニメの方もだ。同じだった。まさに声でわかることだった。
一通りプレイして鑑賞してだ。そのうえでだ。彼がわかったことは。
彼がこれまで観ていた、聴いていた声優の世界は一部でしかなかったのだ。そうした世界にもだ。しっかりと存在していたのである。
最初は衝撃だった。しかしだ。彼はここにもう一つの楽しみを見出したのである。
そうしたゲームやアニメに自ら手を出してだ。そのうえで声優をチェックしていくのだった。
チェックしていけばだ。さらに面白いことがわかったのだ。
どう聴いても同一人物だというのにゲームやアニメによって名前が違う。そうした声優が多いのだ。中にはそちらの世界では二十位名前を持っている声優もいる。
そちらの世界のどの声優が本当の芸名はどれなのか、それを検証して当てる楽しみも見出したのだ。そしてその彼がだ。友人に対して言った言葉は。
「大変だよ。あの役をやっていた可憐な人が違う名前でエロゲに出ていたよ」
「それ、調べたら凄いことがわかるよな」
「ああ、全くだよ」
笑いながらこう話すのだった。まさに彼にとってはだ。新しく知った、そして病み付きになる趣味だった。アニメやゲームのもう一つの楽しみ方であった。あちらの世界も含めて。その彼がネットの掲示板でよく貼るアスキーアートの言葉はこれになっていた。
「た、大変だお。母ちゃんが違う名前でエロゲに出てるお!」
「御前もな」
これもまた現実であるところが世の中の面白いところであろうか。
一応は別人 完
2011・3・21
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