ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~正式メンバー版
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一の刻・少年期編
第十話「ガイルと鍵の技法」
リュカ達は妖精の村を離れ、一路西の洞窟へと向かっている。
その洞窟の中で暮らしている、ガイルというドワーフに鍵の技法を授けてもらう為に。
「ふう、ようやく着いた」
「流石はレヌール城解放の勇者、中々の闘いぶりだったわね」
ドワーフのガイルが住むと言う洞窟の入口に辿り着いたリュカ達、当然此処に来るまでにはかなりの戦闘を繰り返した。
普段は地中に潜んでいるが、獲物が通りかかると集団で襲いかかって来る「つちわらし」
人面樹の果実で、自ら獲物を求めてさまよい歩く「ガップリン」
同様に、自ら動き回る食肉植物の「マッドプラント」
魔物化したサボテンの「サボテンドール」
ゴーストが、魔王の魔力を受けて進化したと言われる「魔法使い」
そんな中でも、リュカが驚いたのは二種類のスライム。
天敵から身を護る為に自らの体を毒化した「バブルスライム」
その強い毒のせいでその体は流体化している。
傷付いた体を癒す為に回復系魔力を身に付けた「ホイミスライム」
体の下部に幾つもの触手を持ち、どういう原理なのか空中に浮遊している。
スラリンに聞いた所、スライム族は自らの意思で進化の方向性を決める事が出来るとの事だ。
「なら、スラリン達も別のスライムになれるの?」
「そうだね、まだどんな進化をするかは決めてないけど」
「ピイピィ~~」
洞窟に入るとそれ程離れてない場所に簡素な扉があり、ノックをすると「どうぞ、お入りなさい」と返事があった為、リュカ達は扉を開いて入って行く。
「どなたかな?おお、ベラ殿ではないか。久しぶりじゃな」
「…久しぶりです、ガイルさん。あの時はかばって上げる事が出来ずにごめんなさい」
「もう過ぎた事じゃ、何とも思ってはおらぬよ。それよりも今日は…「わあっ!妖精と人間だ!」…人間?」
洞窟の中で共に暮らしているスライムが叫ぶ声に気付き、声の方に目を向けると其処にベビーパンサーのリンクスとスライムのピエール、スラリンを連れたリュカが腰を屈めてスライムを覗き込んでいた。
「ぼ、ボクじゃないよ。春風のフルートを盗んだのはボクじゃないよ!ザイルがやったんだ!…で、でも悪いのはガイルさんを村から追い出した妖精達だ!だからザイルはガイルさんの為に…」
「ダイルよ、其処までじゃ」
「でも!……はい、ガイルさん」
スライムのダイルは言葉を続けようとするが、止めろというガイルの目を見てそれ以上何も言えなくなった。
「じゃあガイルさん、やはりザイルがフルートを」
「うむ、あれはあれなりにワシの事を思うてやった事なのだろうが。まったく、ワシは先代への恨みなどとうの昔に捨てたというのに」
「ねえ、ベラ。どういう事なの?」
「さっきから気になっておったんじゃがその子は誰じゃ?何故妖精界に人間の子供がおるんじゃ?」
「ああ、この子はサンタローズのリュカ。春を呼び戻す手助けをしてもらうために来てもらったの。子供だけどかなりの力を持っているわ」
「ほう、そうか。…ならば」
ガイルはリュカに近づき、その肩に手を置くと申し訳なさそうに語り掛ける。
ガイルは言う、かつて自分は簡単な構造の鍵ならば直ぐに開けてしまう「鍵の技法」を編み出してしまった事を。
その事が厳格な性格だった先代の長の怒りに触れ、村を追放されてしまいこの洞窟に隠れ住む様になってしまった。
初めの内は先代への恨み事を言いながら過ごしていたが、じきに自分が編み出した鍵の技法の危険性に気付き、その怒りを収めて行った。
だが、祖父思いだった孫のザイルはその怒りを受け継いだまま育ち、今回の暴挙に出たという訳らしい。
「ザイルは一度此処に戻って来てワシに言いおった。『雪の女王の手助けで春風のフルートを盗み出せた。これであの村にひと泡吹かせられる』と。あの子は利用されておるだけなんじゃ、それがどの様な結果を招く事になるか気付きもせずに。じゃから頼む!あの子の目を覚まさせてやってくれ、あの子を助けてやってくれ!…お願いじゃ」
ガイルは涙ながらにリュカに頼む、そしてリュカは当然笑顔で頷きながらその願いを受け入れる。
「任せといて、おじいちゃん!僕とベラ、そしてリンクス達とでザイルを連れ戻して来てあげる」
「その意気よ、リュカ。ガイルさん、その為にも鍵の技法を私達に教えて」
「うむ、鍵の技法は悪用されぬ為に宝玉に込めて洞窟の奥に隠しておる。ワシは最近体の調子を壊しておるのでな、悪いが捜しに行っては貰えぬか」
「了解、じゃあリュカ、行きましょう」
「うん!行こう、リンクス、ピエール、スラリン」
「ガウッ!」
「ピイッ!」
「頑張ろう!」
―◇◆◇―
鍵の技法を手に入れる為に洞窟の中を進むリュカ達、魔物達はそんな彼らを引っ切り無しに襲って来る。
「スカンカー」が巻き上げる砂煙に視界を奪われるがリュカが放つバギによって砂煙は晴れ、その体はリンクス達に切り裂かれる。
メラを使って来る羽根と角を持つトカゲ型の魔物「メラリザード」
サンタローズの洞窟にも居たとげぼうずがより強くなった「スピニー」
赤い外皮に覆われた巨大な芋虫「ラーバキング」
中々の強敵ぞろいだったが、全員の協力プレイで危なげなく倒して行く。
そんな中、ベラは補助魔法で手助けをしたり、樫の杖でリュカに襲い掛かる敵を撃退したりしていた。
そして、それを羨ましげに見ているのがピエール。
自分もあの様に闘えたら、自分にも手足が有ったら。
もっと、もっと、リュカの役に立てるのに。
彼は、そう強く願った。
そして辿り着いた洞窟の際奥、其処に在った階段を下りると淡い光を放つ宝箱が有り、その蓋を開くと青く光る宝玉が置いてあった。
リュカがその宝玉に触れると宝玉の光はリュカの体に吸い込まれる様にして消えていき、宝玉はひび割れ粉々に砕け散る。
「リュカ、鍵の技法は手に入ったの?」
「うん。何て言うか、呪文みたいな感じだな」
《鍵の技法》
それはいわゆる“解錠呪文”の様なもので自身の魔力を錠に浸透させ、解錠を施すという物だった。
ガイルが伝え聞いたアバカムを独自に再現した為、少しの魔力しか必要としない反面、簡単な構造の鍵しか開けられない。
「これで雪の女王の城に入れるわね。さあ、急ぎましょう」
「え?ガイルのおじいちゃんに挨拶は?」
「そんな暇は無いわよ。一刻も早く春風のフルートを取り戻さなきゃ」
「うん、そうだね。分かったよ、急ごうベラ」
こうして何とか鍵の技法を手に入れたリュカ達は春風のフルートを取り戻す為に雪の女王が居る氷の館へと進むのであった。
=冒険の書に記録します=
《次回予告》
手に入れた鍵の技法、後は雪の女王を倒して春風のフルートを取り戻すだけ。
でも、氷の館に向かってる最中にモンスターが呼んだ敵に囲まれしまった。
そんな時、僕達の前に現われたのは……
次回・第十一話「勇者気取りの小っちゃなヒーロー達」
「リュカ、強い」
「リュカ、優しい」
「リュカ、好き」
「リュカ、友達」
「「「「やーーーーー!」」」」
「何だろう?何なのかな、この気持ち?」
後書き
(`・ω・)ピエールにナイトフラグが完全に立ちました
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