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戦国異伝

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第二百四十三話 信長の読みその五

「少しの間だけでもな」
「ですな、それを間に合わせますか」 
 次の戦までにとだ、雪斎は主に問うた。
「そうされますか」
「いや、おそらく次の戦はな」
「すぐですか」
「だから間に合わぬやも知れぬ」
 それで、というのだ。
「次の戦ではそれは出来ぬやもな」
「そうなりますじゃ」
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「書くことは書く」
 鉄砲の弾や砲弾にというのだ。
「弓矢にもな」
「そして次の戦には間に合わずとも」
「次の戦で滅ぼせねばな」
「また次の戦がありますので」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「書いておく」
「次の戦で滅ぼすことが出来ればいいですが」
 こう言って来たのは幻庵だった。
「ですが」
「しかしそれはな」
「出来ぬこともです」
「考えられるな」
「ですから」
 それで、というのだ。
「ここはです」
「書いておくべきじゃな」
「是非共」
 幻庵も言うのだった。
「ですから」
「ではな」
「それで宜しいと思います」
「わかった、では皆の者これよりじゃ」
 信長はあらためて諸将に命じた。
「姫路に戻ってじゃ」
「そのうえで、ですな」
「次の戦に備える」
「そうしますな」
「再び」
「すぐに来るぞ」
 魔界衆、彼等はというのだ。
「だからじゃ」
「姫路においてですな」
「備えをし」
「そして」
「次の戦いを行うぞ」
 こう言うのだった。
「ではよいな」
「はい、屋島からすぐに姫路に戻りましょう」
「すぐに」
「ではな」 
 信長は実際に屋島の始末にある程度の兵は置いたが主だった将と兵達を船に乗せてそのまま姫路に戻った、そして姫路で次の戦に備えた。
 その白鷺を思わせる天守閣を見上げてだ、信長は共にいる信忠に言った。
「屋島はほんの一勝負じゃ」
「大きな戦の前の」
「あの様な戦はな」
「この度の戦においては」
「小さい」
 そういったものに過ぎないというのだ。
「所詮はな」
「では大きな戦は」
「次、そしてその次があるならな」
「その二つですか」
「そうじゃ」
 その二つの戦だというのだ。
「だからな」
「ここは、ですか」
「次の戦に備えるのじゃ」
「だから屋島でもでしたか」
「勝鬨はあげた」
 兵達にそれをさせた、しかしというのだ。
「その場で勝ちを祝わずにすぐに戻ったのじゃ」
「この姫路に」
「そうしたのじゃ」
「ですか、では」
 信忠は父に尋ねた。
「次の戦は何処でしょうか」
「うむ、おそらくな」  
 信長は息子にこう答えた。 
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