お化け屋敷
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1部分:第一章
第一章
お化け屋敷
目覚めると。いきなりだった。
川崎朋子はだ。布団から起きるとだ。
目の前にだ。思わぬものを見た。それは。
「ああ、起きたんだ」
「あんた誰?」
見知らぬ顔だった。目が一つで耳が二つ、鼻が一つで口も一つだった。
頭は丸坊主でお寺の小僧の服を着ている。それは。
朋子の記憶の中ではだ。彼だった。
「ひょっとして一つ目小僧なの?」
「ああ、やっぱりおいらのこと知ってるんだ」
「あんた妖怪よね」
「そうだよ。宜しくね」
明るく笑って答える一つ目小僧だった。
「これからあんたの家に住むからさ」
「私の家になの」
「そうだよ。ちゃんと家賃も払うし」
それはちゃんとするというのである。
「それと御飯は自分達で何とでもできるしね」
「御飯って何食べてるのよ」
「ああ、あんた達と同じだよ」
つまりだ。人間と同じだというのである。
「普通に白い御飯とかお魚とか食べてるよ」
「そうなの」
「そうだよ。好物はお豆腐にお菓子」
そうしたものが好きだというのである。
「宜しくね」
「うん、私も好きだから」
「大家さんにはちゃんとするからね」
何でもないといった風にだ。話す彼等だった。そうして。
朋子はとりあえず布団から出た。それからパジャマから私服に着替えた。そうして一階のリビングに向かう。そこに入るとだ。
そこにはだ。両親の他にだ。色々いた。
一反木綿もいる。雪女に子泣き爺もいる。から傘もだ。他にはがんぎ小僧に河童や垢舐めとだ。彼女が知っている妖怪達ばかりだった。彼等を見てだ。
朋子はだ。こう言うのであった。
「皆いるのね」
「おい、それだけか?」
「この状況でもそうなの」
「だって。いるのは仕方ないじゃない」
妖怪達に囲まれてテーブルに座って憮然となっている両親はだ。怒った様な声で朋子に言うがだ。それでもその朋子はなのだった。
「お金も食べ物も心配いらないっていうし」
「御前はそれでいいのか?」
「たったそれだけ?」
「家賃払ってくれるそうよ」
彼女が言うのはこのことだった。言いながらテーブルの自分の席に座る。
「じゃあいいじゃない」
「大家になれってのか」
「それだけか」
「そう、それだけ」
言いながら自分で食パンを取る。見れば黒髪を肩の長さで揃え大きな唇は紅く薄い。目ははっきりとしていてにこにことした感じだ。
鼻の形もよく眉はやや太めだが量はそれ程でなく長い。小柄でそれが目立つ。声はどうもヘリウムガスを吸った様なものだ。
その彼女がだ。平然と両親に話すのだった。
「じゃあいいじゃない。お金入るわよ」
「妖怪がいてもか?」
「妖怪については何も思わないの?」
「取って食べたりしないからね」
だからいいとだ。また両親に話す。言いながらパンにバターを塗る。
「だったらいいじゃない」
「御前どうかしてるぞ」
「そうよ。前から変なところあったけれど」
「いいのよ。そういうのが面白いんだから」
遂には何処かの脚本家みたいな言葉を出す。
「っていうか。これってチャンスよ」
「チャンス!?」
「どんなチャンスよ」
「だって。こんなに妖怪がお家に来てくれたじゃない」
そのことを話すのであった。両親が憮然となっているその元についてだ。
「これって活かさない手はないわよ」
「おっ、このお嬢ちゃん言うねえ」
「そう来るか?」
「あたし等を使って何か一山」
「そう考えてるね」
「そうよ。その通りよ」
朋子は笑いながら妖怪達にも答える。
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