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戦国異伝

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第二百四十二話 淡路からその七

「その時に食うぞ」
「ですな、今は敵に見つからぬこと」
「そして急いで屋島に向かい」
「そのうえで一気に夜襲を仕掛ける」
「それが先決故」
「干し飯や干瓢でじゃ」
 そうした戦のおt気に持っていく飯でというのだ。
「すぐに食うぞ」
「そして腹に溜める」
「それが肝心ですな」
「食わねばならん」
 このことは絶対だった、だから今もこうして全ての将兵達に食わしているのだ。誰もが飯を食っている。
 しかしだ、その飯がなのだ。
「じゃがこうした時はな」
「干し飯や干瓢」
「そして干し魚ですな」
「こうしたものを食い」
「そして腹に溜め」
「力を備えておくのじゃ」
 そうせよというのだ。
「よいな。ではな」
「はい、こうして食い」
「そしてです」
「我等も進みます」
「屋島まで」
「ではな。そして屋島じゃが」
 食いながらだ、信長はその地のことも話した。
「あの地のことを知っておる者はおるな」
「はい、ここに」
「我等ならばです」
「自信があります」
 三好三人衆だった、三好家は秀次が主になり家自体が織田家の下に入っているのだ。その三人衆も同じだ。
 その彼等がだ、信長に言って来たのだ。
「あの地は四国なので」
「知っております」
「それもよく」
「そうか、ならば教えてもらおう」
 その四国のことをだ、信長も応えてだった。
 そしてだ、その屋島のことをだ。地だけでなく海のことも詳しく聞いた。そのうえで確かな声でこう言った。
「わかった、ではな」
「はい、では」
「夜に屋島に入り」
「そしてですな」
「一気に攻める」
 そこにいる魔界衆の者達をというのだ。
「東からじゃ」
「しかし、どうしてもです」
「那須与一殿のことはです」
「出来ませぬな」 
 三人衆もこのことは残念そうに述べた。
「あれは風雅ですが」
「戦の場とはいえ」
「実に」
「そうじゃな、平家物語の中でもな」
 信長もまた言う、那須与一のことを。
「あの弓の場面は実によかった。しかしな」
「それは、ですな」
「どうしても」
「この度は」
「普通の戦ならともかく」
 戦のその相手がだ。
「しかしじゃ」
「相手は魔界衆」
「左道の者達ですな」
「ですから」
「あの者達にそうした話が縁がない」 
 それも全く、といった言葉だった。
 
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