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シークレットゲーム ~Not Realistic~

作者:じーくw
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全員






「なっ………!」

 その光景を見て、思わず絶句してしまう修平。そして、それは悠奈も同じだった。

「ど、どうですか? どうにかなりそうですか?」
「ああ、大丈夫大丈夫。上手くいきそうな気がしてきた」
「そうなのですか? 外れそうなのですか?」
「大丈夫だ。いい感じいい感じ」

 その場の異様な光景の根源。

 大祐と初音。

 大祐が生返事をしながら、初音の首輪にドライバーを突きたて、その先端が震えるほど力を込めている。

 その手先から察するに、機械系に得意とはどうしても思えない。強引にただ、隙間からこじ開けようとしているだけだ。

 あまりにその軽率な行動を修平が咎めようとした――その時。

「ぎゃっ!! な、なんだ!」

 大祐がドライバーをが、弾き飛んだのだ。
 再度、初音の首輪の隙間に狙いを定める為に、放したその瞬間、側面に衝撃が走りそのまま、ドライバーは弾き飛んだのだ。そして、それに続いて悠奈が大祐の襟首をつかむ。

「ぐえっ!」

 その摑んだ勢いのまま、大祐を引き倒した。
 全く警戒をしてなかった為、大祐はそのまま背中から地面に引き倒された。

「あ、いっつ―――……おい! いきなり何するんだよ!」

 自身の短絡的な思考が招く最悪の出来事を理解できずに、ただ今された事に憤怒を表す大祐。確かに要注意人物だろう。

「それはこっちの台詞よ! アンタの方こそ、一体何をしようとしてるのよ! 頭がどうかしてんじゃないの!!」
「……はぁ? んな事言ったって、ちょっと首輪をバラそうとしただけじゃねーか?」
「……機械の知識があるとは到底思えないが、ドライバー1つで何とかなるとでも思っていたのか?」
「だから、もうちょっとで、出来そうな気がしたんだって」
「あのね。これはただの遊びじゃないのよ! 命がかかっているゲームなのよ!」

 刀真は苦言を呈し、悠奈はぴしゃりと言い放つ。
 それは、大祐だけに留まらず、遠巻きに見ていたまり子にも、鋭い視線を向けた。

「まり子、アンタもよ」
「え……? わ、私はちゃんと止めたわよ? それなのに、伊藤くんが勝手に――」
「……なら、それで初音が死んでも、『私は止めたけど、大祐が勝手にやった、私は悪くない』と言うつもりだった、ということか?」
「っ死!? そ、そんな、そんな事思って……」
「あのね、刀真の言うとおりよ。一歩間違えたら初音は死んでたかもしれないのよ? ………あの死体を見てもまだ解らないの? それに、見ていただけでそれは止めたとは言わないの。こと身は私達を呼びに来たけど、結局アンタは何もしていないじゃない」

 刀真と悠奈の言葉で、唖然とし表情を青くするまり子。
 確かに、首の部分が赤く、黒く染まっている死体を目の当たりにもしていた。直視する事は出来なかったが、首輪が殺傷能力を持つ事を目の当たりにしていた筈だった。つまりは、初音があの死体の山のひとつになろうとしていたことも、理解できたのだ。

「そ、それは……、わ、わたし……」

 まり子は、震えていた。

「悠奈さん……日影さん……」
「2人とも、少し言い過ぎなんじゃないのか?」

 大祐は兎も角、まり子に非があるとは思えなかった修平も琴美に続いて口を挟む。だが、悠奈から帰って来たのは呆れた様な嘆息だった。

「はぁ……、ったく、修平まで何をそんな甘い事、言ってるのよ」
「皆あの死体を見たんだろう……。これがどう言うゲームか理解したと思ったがな」

 その言葉で場が更に一段階静まり返る。
 初音自身も、涙目になってしまっていた。安易に首輪を触る事を許した自分に恐怖したようだった。

「……そう、あの説明会でもあったでしょう? 私達が彼らの仲間入りになってもおかしくないゲームなのよ。それに、これから何が起こるかもわからない。私達は、協力してクリアを目指すって決めたんでしょう? だったら、誰かが危険に晒されているときは助けなきゃ。そうじゃなきゃ、私達が何の為にこうしてチームを組んだのかわからないじゃない」

 その悠奈の言葉を後ろで腕を組んでいた刀真は静かに頷いた。

 これ以上は、口を挟むのは野暮だと思ったからだ。悠奈が見つめるのは修平。

 この場を〆直すのに期待するのは修平だった。それを受けた修平は、クリア条件が、何かのきっかけで変わってしまう可能性があることを思い出した。遠巻きに悠奈はその危険性を訴えていたようにも見えるからだ。

「……そうだな。確かに2人の、悠奈の言うとおりだ」
「うん。私もその考えに賛同します」

 2人は問題なく頷いた。問題は残りの3人。

「そう。それで? 大祐やまり子は反論ある?」
「……別に無いわ」
「ああ、わかったよ。初音ちゃん、さっきは変なことをして悪かったな?」
「そ、そんな、さっきのは初音も悪かったのです。初音も考えが足りなかったのです」

 互いに謝罪し合っているのは良い事だが、大祐のそれはあてにならない。

 初音を殺しかけたといっても過言じゃないのに――……そう 態度が軽すぎるのだ。

「初音。大祐を甘やかすと、後で痛い目を見る事になるかもしれないわよ?」
「おいおい、だからもうさっきみたいな事、しねーっつーの。」
「そうね……。そうしてくれると助かるわ。さてと……、それじゃあそろそろお腹も空いた事だし、皆で手分けしてキューブ探しを始めよっか?」

 悠奈がそう音頭を取ると、皆が頷いた。

 刀真は思う。


――多少は強引ではあるが、この大人数を仕切るのには悠奈であれば申し分ない。


 そう思っていた。
 一対一の交渉術なら兎も角。凡そ同年代であろう彼女の方が他のメンバーも素直に頷きやすいだろう。所々補佐をすれば、問題ないだろうと。


 修平自身も、刀真と同じ考えに至る。琴美も、刀真と言うよりは悠奈を見て、嬉しそうに笑いながら傍に寄ってくる。

「ねぇ修ちゃん。悠奈さんって、厳しいけど、なんだか頼りになりそうな人、だね? 日影さんも一番の歳上だし……凄く頼りになるって感じるよ」
「……あぁ、そうだな」

 琴美の笑顔を見る限り、どうやら悠奈の事が気に入ったようだ。

 そして、その悠奈が信頼している日影の事も間接的に。

 おそらく修平自身も、このゲーム以外で出会っていたならば、琴美と同じ印象を抱いていたであろうと確信が出来る。だが……、最後の一線はまだ越えられない。

 疑惑、疑問が晴れるまでは……。

「(……自分よりも大切なもの……か。)」

 腕を組んで目を瞑っていた刀真が感じたもの。それは、修平が言っていたそれの正体だった。





 そして、総勢7名で森に入り、その3時間後には入手した2枚のメモリーチップを使い、粗末だが、食事をしっかりととり終えていた。

 そして、その更に2時間後―――。

「………」

 今は悠奈の陣頭指揮の下、メモリーチップの確保を最優先としつつ、他のプレイヤーとの遭遇も視野に入れて山道を進んでいた。

 順番としたら、悠奈を先頭に、まり子、大祐、初音、刀真、そして少し間を開けて修平と琴美が最後尾を歩いている。暫くたった時だった。琴美が修平にそっと話しかけてきた。

「……ねぇ、修ちゃん」
「ん? どうした?」
「大祐君とまり子さんのこと……、何とかならないかな?」

 琴美が心配そうに前方を行く大祐とまり子に目を向けた。
 基本的に物事をラフに捉えようとする大祐と、全てを杓子定規に当てはめようとするまり子は正に、水と油だろう。

 そして、その直ぐ後にもまた始まる。

「はぁ!? マジで言ってる!? それマジで言ってんのか!?」
「そ、そんなの、私の勝手でしょ!」
「……!!」

 大祐とまり子のいい争いがまた、始まり列全体の動きが止まったのだ。

「……ちょっとアンタ達。今度は何事なわけ?」
「ったく信じらんねーよ、オレと初音ちゃんがPDAの情報を交換するのを聞いていた癖に、自分は答えないって言うんだぜ?」
「そ、それは……、だって、聞こえてきたものは仕方ないわ」
「おいおい、なんだよその言い草は!? 協調性がどーたら、って五月蝿かったのは何処のどなた様だったっけ?」
「あ、あぅぅ……、初音は別に構わないのですぅ……」
「駄目だよ。初音ちゃん。言うべきときには、ちゃんと言わなきゃさ。どう考えたってまり子が悪いんだ。そうだろ? みんな」
「っ………」
「……」

 大祐の問いにまり子と琴美は黙った。

 刀真は、少し後ろで話しを聞いていたから、大祐たちの会話には入ってなかったから、その発生を止めることは出来なかったが、今回は、いつもに増して危険だ。彼女が孤立しかねないからだ。

「少し頭を冷やせ。まり子もそうだが、大祐もだ」

 刀真がため息をしつつそう答えた。

「は? まり子が悪いのは明らかだろう!? 何で頭冷やす中にオレがいるんだよ」

 大祐は納得できないようにそう突っかける。
 まだ、理解していないのか?とも思えるが、この手の相手に見下した言い方は逆効果だと言う事はよく解っている。

「……説明会でもあっただろう? このゲームにおいての情報の大切さと、知られる事のリスクの事」
「マジかよ! おい! 刀真、お前まさかまり子の味方をするつもりか?」
「味方、敵は関係無いさ。仮に大祐のPDAの中に、任意で相手に危害が加えられるような特殊能力があったら? 安易に話す事は出来ないだろう。……今回は偶々、危害の無い条件だったようだから、何も起こらないようだが、そう言うことだってありえると言う事だ」
「それを聞いたら、まり子が危険なプレイヤーってことじゃねえか! だから、話さなかったッて事だろう!」

 相手の事を考えて、自分に当てはめて考えて……ということが出来ないらしい。

 あくまで≪たとえ話≫をした筈だが、それを信じきってしまっているようだ。

「……熱くなるな」
「もういいよ! おい、行こうぜ初音ちゃん。ったく、なんでオレ達が悪者扱いされなきゃいけないんだっつーの」
「あ……」

 大祐がいきなり初音の手を取って歩き出した。だが、その前に悠奈が立ちふさがる。

「こらこら、初音を連れて何処に行くつもりよ?」
「このチームには信用できねーヤツが多いからさ、オレ達は別行動を取らせてもらうよ」
「駄目よ。だいたい、アンタに初音は任せられないもの」
「!! それはどういう意味だよ」
「だってアンタは、『自分のやりたいようにしたいだけ。後は別に何も考えていない』でしょ?」
「こ、この………!!」
「なに? 図星?」

 大祐と悠奈がにらみ合う。
 確かに悠奈の感覚は的を得ていると思える。

 自分のやりたいようにしたいだけ……、自己中心的な考え。そう言う思考の人間は倫理感が少ない人間に少なからず多い。

 つまり、そんな性質かもしれない人物と、恐らくはこの中で一番か弱い初音が2人きりになるのは、ゲームと同じ位危険なのだ。

「ゆ、悠奈さん……」

 横で見ていた琴美は心配そうに言っていた。
 そして、ゆっくりと歩いて悠奈の隣に来た刀真は軽く笑うと。

「おい。止めようとする側がケンカ腰でどうするんだよ。場を さらに険悪にするな」
「ッ……と、そうね。言い方が悪かったわ。それについては謝るわ。ごめん大祐」

 いきなり謝られたことに戸惑いを隠せない大祐は少し驚きながら言う。

「えっ? な、なんだよ。変に素直だな」
「別に、ケンカをしたいと言うわけでもないだろう? だが、確かにオレも初音を連れて行くと言うのには賛同できないがな」
「そうよね。私達は仲間、なんだから。争ってプラスになる事なんてはっきり言って1つもないんだからさ」
「確かに仲間内ならそうかもしんねーけど……そもそもオレには、ここにいる全員が≪仲間≫とは思えねーんだよ。信用できないやつと、一緒になんていられないだろ? 寝首かかれるかもしれねーんだぜ?」
「そうね、でもそれを曲げてでも、1つに纏まるべきよ」
「……見たとおり此処は異常空間だしな。それにまだ初日だ。結論を出すのにも早すぎるだろう?」

 悠奈と刀真は静かな口調で言っていた。
 大祐はまり子の事はまだ、許せず、信用も出来ないようだが、2人の言葉で次第に熱も冷めていっているようだった。

「……この際だから、皆に言っておくわ。私はこの先の、参加者全員を仲間にすべきだって思っているの」
「参加者全員を、仲間に……?」
「そ、だってそれさえできれば、全員で協力して、効率的にクリア条件を達成する事が出来るじゃない?」
「まぁ……それが一番の理想的状況だな。その分難易度は遥かに高いが」

 刀真もその考えの難しさは認めているものの、否定はしていないようだった。

「………」

 確かに全員が仲間になれば、クリア達成は早いだろう。
 だが、それは『全員のクリア条件が競合していない』と言う前提に基づいた考え方だ。

「なに、修平。私の言ってる事に同意できない?」
「はぁ……、だから、難しいってオレが言ったばかりだろう? 修平が慎重になるのは仕方ないだろうに」
「それはそうだけど、やっぱ 同意してほしいじゃない」
「……強引過ぎだ。それ」

 呆れたように言う刀真と悠奈。

 険悪な空気の中、2人だけが全くブレない。修平は不思議だった。初めこそは、2人を信用するのはまだよそうと考えていた筈なのに……。何処か信じる事が出来る。と思っている自分が、心のどこかにいる様なんだ。
 まだ、表に出てきていないだけで。

「はっ! 綺麗事だ! 参加者全員が仲間になるなんてよ! そんなの無理に決まってるだろ?大体ここにいるまり子だって、そうだ。刀真の仮設が正しいってんなら、コイツの特殊能力やクリア条件も危険なものかもしれねーじゃねえか! そんなあぶねえヤツの仲間になんざなれねぇよ! それに信用だって無理だっつーの!」

 大祐はその考えは決して曲げなかった。

 彼女に与えられている条件・能力が危険なのは十中八九間違いないと思われる。大祐じゃないが、協調性の重要性を重視し、且つまり子の人間性ならば、それ以外に公表しない理由が無いからだ。

「はぁ……、わかったわ。ねぇまり子。あなたのクリア達成には絶対に協力するって約束するから、クリア条件と特殊能力を皆に話してくれない?」
「それは……、でも……」
「け、ほら見ろよ! やっぱ行こうぜ、初音ちゃん」
「だから、それだけは駄目だって。オレのせいで信用できない・危険だって言うなら、責任もってまり子の事は見ててやる」
「ふ~ん。刀真。アンタ、女の子の事逐一見ているつもりなの? イヤらしい考え持ってるんじゃないの?」

 悠奈は軽くニヤつきながらそう言う。
 そんなつもりは毛頭ない刀真だが、その手の話の展開は好手だと思えた。

「えっ……そ、それは……っ」
「アホ……。何の為にお前がいるんだよ」

 刀真はやれやれとしつつ、そう返していた。こんなときなのに……、そんな風に話している姿を見たら。

「あ、あはは……」

 初音も自然と笑みが毀れていた。

「は、初音は、皆と別れたくないのです。一緒に……一緒にクリアしたいって思ってます。勿論、その中に大祐がいてくれた方が良いのです」

 はっきりと自身の考えを言う事が出来ていた。
 正直、悠奈の言葉を聞いた初音は大祐と共に行く事に躊躇いが生まれていたのだ。流されるままに、なりそうだったそれを、初音の手で止めた。……それが、最悪な結末を防ぐ最良の手立てとなっていたことを、誰も知らない。

「ったく……なーんで、こんな時に漫才できんだっつーの。1人で怒ってるオレが間抜け見てーじゃねーか」
「はは……、ん? 大祐はこう言う空気の方が好きそうな気がしたが……、違ったか?」
「ぅ…。ま、まー、ギクシャクするくれーならこっちが良いが……、でも、それは疑惑を解決したらだろ?」

 会話の話題、方向を上手く変えられたと思えたが、まだのようだった。
 だが、まり子も少しずつ……少しずつだが、表情が変わってきているのが解る。もう少し時間があればと思っていたが。


―――時間は無かった。


「っ!! 皆、伏せろ!!」




 刀真が声を上げた。
 それは突然の事、さっきまで緊迫した空気と仄々した空気がちょこちょこ入れ替わっていた為、いきなりそんな事を言われて直ぐに反応できるものは誰もいなかった。

 その叫び声の直後。

 風を切り裂く音が聞こえてきたのだった。































~プレイヤー・ナンバー~



 No. 氏名  解除条件


□ ??? 上野まり子  ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ 4 藤田修平   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ 7 真島章則   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? 伊藤大祐   ??????????


□ J  藤堂悠奈   ??????????     
 更新:No.4と24時間行動を共にする。

□ ??? 阿刀田初音  ??????????


□ ??? 三ツ林司   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ XIV 日陰刀真  PDAを5台以上所持する。 
 更新:No.J、4と24時間行動を共にする。(離れる場合の制限は2時間以内とする)








 
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