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真田十勇士

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巻ノ二十九 従か戦かその十二

「父上にお知らせする」
「敵の数に将帥も」
「全て見て」
「そしてですな」
「上田に戻るのですな」
「進み道もじゃ」
 つまり徳川の軍勢の全てをというのだ、幸村は家臣達にそうしたものまで見よと言うのだった。戦がはじまる前に。
「よいな」
「全てを見極めよと」
「徳川の軍勢の」
「武具や兵糧の様子もな」
 それもというのだ。
「何もかもじゃ、よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「すぐに取り掛かります」
「上田の南に向かい」
「敵を早いうちから見ていきまする」
「民達には隠れる用意をさせる」
 ここでもだ、幸村は民のことを忘れていなかった。それゆえの言葉だ。
「飯も何もかもを持って行かせてな」
「そして徳川殿の軍勢には何も渡さず」
「そのうえで戦を挑みますか」
「戦に勝つにはな」
 まさにと言うのだった。
「敵を勝てぬ場所に置くことじゃ」
「そして挑む」
「そうするのですな」
「敵も己も知りな」
 そのうえでというのだ。
「そうして戦ってこそじゃ」
「それが大殿のお考えですか」
「武田家においても智勇備えた傑物と言われた方の」
「そうじゃ、だから拙者もそうして戦う」
 昌幸の様にというのだ。
「智と勇な」
「その両方があってこそ」
「そうして満足に戦える」
「勝てる」
「そうなのですな」
「当然飯や武具もじゃ」
 それもというのだ。
「こういったものがないとじゃ」
「ですな、腹が減ってはです」
「そもそも戦になりませぬ」
「だからですな」
「飯は言うまでもないですな」
「武具も」
「そして銭もじゃ」
 これも戦には必要だというのだ。
「兵糧や武具を買うな」
「そうしたものを全て揃え」
「それから智と勇ですか」
「その二つで戦う」
「全てを揃えてから」
「そうなのじゃ、この戦では地の利もある」
 彼等の国である上田で戦う、だからだというのだ。幸村は上田のその山に覆われた場所を見つつ言うのだった。
「ここで徳川家と戦い退けるぞ」
「そして、ですな」
「その前に上田の南に出て」
「徳川家の軍勢を見付ける」
「そうしますか」
「そうしようぞ、拙者も行く」
 幸村自身もというのだ。 
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